
ここ数日の間で、北海道内のアチラコチラで初霜の知らせや初冠雪の便りが届いていて、函館近郊の平野部でも朝の気温が0℃ですとか、日中も5℃などといった、とってもお寒いニュースが流れております。
しかし、思わずこんな寒さで体が縮んじゃう天候でも、一部の川ではアツイ釣りが展開されています。
9月以降、禁漁期に入ってしまう本州の方々はなじみが薄いシーズンかもしれませんが、我々道産子(どさんこ:北海道生まれの子)にとっては待ちに待ったシーズン到来ともいえるのです。
それは初夏以降、プールの流れ込みの一番深い場所に陣取り、なかなか浮いてきてはくれないタイプの大型ニジマスなんかが、初秋のこれからは雪が降り積もるまでの間に水深30cmにも満たないプールエンドへと移動してきては静かなディンプルライズを繰り返す、そんな場面を見せ付けてくれるからでもあり、また、ようやく2世代目のメイフライのハッチも本番を向かえ、代表的なシロハラ、シロタニ、エルモン、などのスピナーがことごとく舞い降りては我々フライフィッシャーを翻弄させてくれるのです。
ボクとしてはこの時期がブラインドフィッシィングに終始しないで常にライズと対峙できる、最もドライフライフィッシィングらしい釣りに終始できるような気がしています。
「・・・・・・ しかぁ~し!!」
そんな魅力溢れたシーズンでありながらも、実は最も危険度が増すことを気を付けなければならない側面があるのです。
それはヒグマの問題です。
今迄の一般的な通説では春の親子連れが最も危険だとされてきましたが、実際のところ春は冬眠明けのヒグマの体力が万全ではないことから、アクティブに野山を駆け巡ることもなく、また人里への徘徊も殆ど見られません(親子連れは季節を問わず危険です)。
ですが秋のヒグマは少し様子が違うのです。
ご存知の通り、秋には冬眠による越冬を前に大量のエサを摂取しなければならないことが最大の要因として、行動範囲が大幅に広がります。
そして、なぜか毎年テレビのニュースでは「今年は山のエサが乏しく・・・・・」と毎度同じコメントをアナウンスしていますが、実はこれは大間違い。
本来、標高が高い山の山頂付近から気温が下がり、秋の訪れが始まります。
そしてそれは単純に時間の経過と共に平野部へと移行してくる・・・・
函館近郊の山を例に挙げれば、山頂付近の山林では9月の終わりにドングリなどが見られるようになり、10月の初旬には山の中腹まで季節は降りてきます。
そして10月下旬から11月に掛けて、人々が暮らす平野部のミズナラでもドングリが見られるようになるのです。
この季節の移動に併せてヒグマたちも山頂付近からエサを求めて移動を始め、10月の下旬には人里付近の雑木林で給餌行動を取るようになるのです。
また、殆どの平野部ではミズナラなどの雑木林と隣接した場所には畑作などが行われており、馬や牛なども放牧されていたりするのです。
これでは湖をクルージングするニジマスの前にカメムシがポトリと落ちているようなもの。
ですからこの時期はヒグマにより、最も家畜や作物に被害が及ぶ時期でもあり、過去の人身事故を覗いてみても、最も多発している時期でもあります。
そして今年は夏の猛暑が影響したのか、山の幸が驚くほど多いので、一度でもドングリや山ブドウ等が豊富な餌場(その範囲は僅か数十メートル四方から時には半径1キロ以上にも及ぶ)を見つけたヒグマであれば、長くその場に定着してしまうのです。
そんなヒグマがライズしやすい?山間部からほど近い平野部の中を流れる川が、秋以降、低水温や低気温などの影響も低く、ニジマスが盛んにライズを繰り返す流れだったりするのですから、ボクら釣り人は常にヒグマの危険と隣り合わせ。
ですので、どんなに車の近くでも、たとえ民家が見えるような場所であっても、必ず熊よけの鈴やヒグマ撃退スプレーなどの携帯は忘れてはいけないのです。
これは、ボクが先月体験したお話です。
朝も遅く9時くらいに釣り場に着いて、畑の脇をテクテク歩いていました。
スグ隣には5~6人の農作業中の方々が居て、トラクターがブンブン唸りを上げて走り回っています。
そこを抜けてもうすぐ川ってところ、水音が聞こえて数メートル先の雑木林の間からは川面が見え隠れしているって場所。

風景
トラクターのエンジン音に掻き消されるように、僅かながら藪が揺れる音がしました。
不意にそちらを眺めると、笹薮の中のほんの一部分だけが揺れていたのです。
それがあまりに民家や農作業場と近いために、鳥か何かだろうと思いながらなんとなく足元を確認してみると・・・・・。
なんとそこには、あたり一面に小熊とおぼしきハガキほどの大きさの足跡が残されているではないですか!!

足跡
こんなサイズの足跡では親離れをするには到底早過ぎるので、間違いなく付近には親熊(母親)が小熊をかばうようにボクを睨みつけているはず。
こんな時に慌てて走り出そうものなら、後ろから襲われるのがオチ。
また、子連れの母グマは何より先に子供を危険から守ろうとすばやく臨戦態勢を取ろうとするのが常ですから、刺激を与えないよう静かに後ずさりするボク。
その場から50メートルも離れたでしょうか?
もう一安心かな?と思った矢先、15メートルほど先の笹薮の中からボクとはある一定の距離を保ったままにストーキングしてきて、こちらの様子を伺っていらっしゃる茶褐色の塊が・・・・(汗)

熊
もう生きた心地がしませんでしたね。
トラクターの音と人々の会話が聞こえるくらいのところまで来て、初めて親子熊が遠のいたことを知り、その場でヘタリこんでいまいました。
最後に、ボクの知り合いの古いマタギ(古老のハンター)が生前こう言ってました。
「クマっこてなぁー、膝まで笹ッパラがあれば、オメらまずわがんねーもんだんだ」
「秋の葉っぱにしたって同じよ」
「ヤヅラ地面さ突っ伏しているんだっけ、葉っぱが土がもわがんねーもんだがら、みんな目の前さ寄ってしまって、はぁガブリだのさ」
「賢い大グマこさぁー滅多に人目さ晒すこどねーんだけど、わげくってきがねーヤヅが一番危ねー」
「犬っこみてーに泡食って走って来て、バックリ噛み付くがらなぁ」
「なずもクマっこ見だらオラさ言え」
「ややと行って、はぁズドンでクマの肉の一番うめぇーどご食わしてやっがらよぉー(笑)」
注訳
「ヒグマって言うのは、膝丈までの笹薮があれば、一般人にはほとんど見付けられないものなんだよ」
「秋の枯葉にしても同じだ」
「地面にうつ伏せになってしまえば、枯葉か土のようにカモフラージュされてしまうから、知らずに近づいてしまう人がいて、それで襲われてしまうのさ」
「賢くなった大きなヒグマほど滅多に自分の方から人前に姿を現すことはないのだけれど、若いヒグマほどやんちゃで人に対しても攻撃的になりやすい」
「犬のように素早く走ることも出来るし、すぐに噛み付いてくるからね」
「オマエもヒグマを見つけたならオレに教えろ」
「すぐに駆けつけて、撃ち殺してヒグマの肉の一番美味しい所をお裾分けしてあげるから(笑)」
秋本番を迎えた北海道。
道内各地で大型のニジマスの情報が飛び交っています。
また、アメマスの方も釣れ出したとのことですから、どうか来道される方々は、ヒグマに対する注意を怠ることなく楽しまれてください。