Fly Fishing記事 | ティムコ

小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り(海アメとクロスS -1インプレッション)

2013.04.19

カブちゃんの北の便り(海アメとクロスS -1インプレッション)

函館周辺の山々は未だ深い雪に閉ざされたままですが、街を吹き抜ける風は幾分暖かく、春の訪れが感じられます。そんな春を思わせる季節がやって来た北海道ですが、今は日本海の南西部で海アメの季節真っ盛り。肌寒さの残る外気温とは裏腹に、釣り人の心はグツグツと煮えたぎっているようです。

 

さてさて、今回はLOOP ロッドの紹介を海アメ釣行時の感想を通してお伝えしようと思います。それは、昨年より購入してあったロッド【クロスS -1 #7 10'7"】をようやく使用するシーンに恵まれた日のことです。元々は大・中規模河川の巨大ニジマス対応:ルースニング仕様ロッドとして購入してあったのですが、昨年はタイミングが悪く、訪れた先々で増水などの悪天候により使用するタイミングを失っていました。もちろん海アメなどで海岸線からの使用も視野に入れていたのですから、どのようなシチュエーションが自分に最適なのかをこの日テストするつもりでいたのです。

 

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当日の風は西の風6m、波高は1m強で、海アメを狙うにはソコソコのコンデション。ロッドをセットして浜辺に降り立ち、真新しいロッドを振りだす時はなんとも言えない期待感があるものですね。おもむろにラインを引き出し、海面を見渡すと同時にミドルレンジでフォルスキャストを行ってみると・・・

「お、おぉっ?!」

「・・・・おぉぉぉぉっ?!」 

「ナニコレ?めちゃくちゃ気持ちイイ~!!」

と、最初のフォルスで驚きの声が漏れてしまいました。なにせ、持った感じは#6だけど振ったフィーリングは#8のロッドパワーとでも言いましょうか、なんていうのか、もうとにもかくにも"気持ちよくラインが伸びる"としか言い様がなく、10ftを超える長さのロッドでよく見られるバットセクションからミドルセクションまでの気になる"張りの強さ(ロッドの持ち重りと手首に感じる強い反発力)"などは微塵も感じられず、このロッドのプロデューススタッフが形容した「羽のように軽くしなやか」と言っていたのがピッタリの形容詞だと、納得させられた瞬間でした。

 

もう、ちょっとこの感覚は、現場で使って頂かないことには伝えられないのではないか?そんな気もしてきます。正直、二十数年前にこの釣りを始めた頃には、#8~#7ロッドといえばとにかく硬くてパリッパリのティップとガッチガチのバットを曲げるため、「おっ・・・りゃあぁぁぁぁー!!」と力技でブン回し、最後のシュートでは「どっせいっっっ!!」と、振りかぶった投手のように投げ込んでいました。あの頃はキャスティングフォームもメチャクチャで、ラインで自分の身体をムチ打つことは当たり前、果てはウインドノットでリーダーが数珠のようにボコボコとしていました。 ですが、飛距離も釣りもままならない自分の力量を差し引いても、それほどまでに高番手は「硬い竿」「曲がらない竿」と言うイメージがあったものです。

 

そんな迷走期を経た今、人並みのキャスティングが身に付いてきた現在までで使用していた数本のロッドの中でも、これほどまでに衝撃を受けたロッドはほとんどありません。軽さとしなやかさを前面に出しつつも、しかしラインの重さや空気抵抗でロッドの並行移動がブレることもなく、手元のラインが少ないパワーでスルスルと滑らかに出ていきます。

 

また、ロングレンジのキャスティングを繰り返しても、精一杯腕を伸ばし、渾身の力でシュートするキャストを100%とするならば、おおよそ50%も使えば十分な飛距離が生まれるロッドであるようにも感じました。(トーナメントなどと釣り場とでは投げる距離が違うので、あくまでキャスティングスタイル上での表現です)

 

コンセプトとしては、磯場などで岩礁帯が入り組み複雑な地形の中をそれぞれのスリットごとに、岩礁帯の際→スリットの中央部→スリットの間口と、細かく区切った攻め方にはちょうど良いのでは?と目論んでいました。今まではシングルハンドロッドで各ポイントをトレースしていたのですが、このロッドであれば足元から沖合までの超ショートレンジからロングレンジまでをアンダーハンドキャストとオーバーヘッドキャストを織り交ぜて行うことで、もの凄く楽にそして効率的にアプローチできるようになりました。

 

また、広大な砂浜で振り歩く時も、少ない動作で広範囲を拾えるメリットは見逃せないファクターの一つで、これはフル装備で一日中浜辺を歩き、竿を振り続けることへの疲労の軽減にはスゴク役立つので、とても重要なファクターの一つと言えるでしょう。

 

で、そんなこんなで新たな武器を携え、一ヶ月も過ぎた頃でしょうか、時折、正面からの強風が吹き抜ける浜辺でのことです。
新たに使い始めたロッドでしたが、クセと言えるような局所的に突出した変則的アクションもないことで馴染めたのも早く、波の合間に見え隠れする沈み根へとアプローチを繰り返していました。

 

こういったシチュエーションでは、障害物の周りの水の動き(波や潮流)が重要となっていて、水がぶつかって出来る流れの下流側、例えて言うならば、渓流での瀬の中にある岩と同じ状況ができあがります。そして狙う魚はイワナの降海型なのですから、フライをトレースする場所(アメマスが定位するポイント)も自ずと決まってくると思います。

 

しかしながら、勝手知ったるホームグラウンドであっても上手くはいかないものですね。幾つかのミノー系のフライを試しても全く反応を得られないままシュリンプタイプやサケ稚魚系なども試しましたが、これらもダメ。正直、半ば諦め気分だったのですが、状況をガラリと変えようと禁断の奥の手フライを結んだんです。まぁ、ダメ元ってヤツですよね。

 

の日、自分に今を諦めさせる何かが欲しかった。「これでダメなら・・・・」って言いたかったんだと思います。だって、先日使い始めたばかりのニューロッドですよ?いささか坊主は回避したいじゃないですか?もう破れかぶれ的心情で例の沈み根へと打ち込んだんですよ。この際、チビでも何でもイイから・・・・なんて呟きながら。で、カウントを取って、2~3回のリトリーブをしたとたん・・・・

「ゴゴォォォン!!」

その時、なにか地響きでもしたような衝撃が右腕に走ったんです!同時に竿先20mほど先では、とんでもない太さの生物が「ザッパーン!!」「ダップーン!!」とモノ凄い水柱を上げて暴れている。そんな光景がボクの目に飛び込んできたとたん、「パッシーン!!」と耳元で乾いた炸裂音が鳴り響き、周囲の世界からは光と音が消えました。

 

沖合15メートルラインからは決して近づこうとせず、常に沈み根へと潜り込むグリーンバックのシーライオン。 そうはさせじと、巨漢の水玉に翻弄されまくりのボクは、ヨタヨタと波打ち際を行ったり来たり。ロッドを立てようにも、あまりの重さに背中が反り返るばかりで一向に起き上がってはくれないボクのニューロッド(汗)

 

「ふんぬぅぅぅー!!」と気張ること数分、ようやく浅瀬まで誘導してきたのですが、今度は打ち返す波に魚が持ってかれて波打ち際から抜くこともできなければ、ハンドランディングを試みようにも高波が頭上から襲い掛かり、"ズブ濡れ地獄in真冬の北海道"へといざなわれてしまうのです(笑)

 

それでも何度かの攻防のあと、波とのタイミングを計りなおして無事に魚をホールドする事に成功。ズッシリと重たい魚体を抱え、全身ズブ濡れのボクは無我夢中で岩棚へと駆け上がっていました。目の前に横たわる70cmをほんの少し上回った超大型のアメマスに、クロスS-1がもたらしてくれた出会いが忘れられないものになりました。この日久々の大台超えに、なんとも言えない達成感がいつまでも心地よくボクを包み込んでくれました。

 

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さてさて、海アメや海サクラのシーズンもいよいよ後半戦へと突入しました。今後は海水温の上昇に伴い、さらにコンデションに磨きの掛かった魚体が狙えるシーズンともいえますので、ぜひとも新たな世界とも言える"スイッチロッドで狙う海アメ&サクラマス"を皆さんもトライしてみてください。
 
また面白い出来事がありましたらお便りします。
 
― KABU ―
 

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フライレシピ

ラテックス・ミノー(仔魚タイプ)

フック:TMC5263 #4
ボディー:Senyo's Laser Dub オレンジ
オーバーボディー:ワームカットL(ピンク)
アイ:3Dミラージュアイ

 


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