Fly Fishing記事 | ティムコ

小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 スカッディーウィーク2015

2015.03.16

スカッディーウィーク2015

ご無沙汰しておりました、北海道の小甲です。本州では各河川で解禁を迎え、皆さんもお気に入りの釣り場へと足を運ばれていることと思いますが、ここ北海道でも厳寒の冬が過ぎ去ろうとしています。また今年の道南は降雪量が少なく、暖冬のお陰でほとんどの河川では結氷することがなかったようです。ですが、この時期のメインとなる海アメに於いては、冬場の日本海が相変わらずのシケ模様が続き1月2月ともに海岸線に立てる日はほとんどなく、毎週末は漁港でアメマスを狙うという釣りに終始しました。

 

そんな折、あまりにも芳しくない漁港のアメマスに見切りをつけて近郊の川へと足を向けて見ました。その川は昔からアメマスに関しては海からの遡上グループと河川残留(越冬)グループを併せ、その魚影の濃さに釣り人からは「ハズレがない」と言われていました。事実、ボクも十数年前には橋の下に帯を流すように多くのアメマスが遡上している姿を幾度か見ることがあり、ブラックノーズデイス1本で至福の釣りを堪能したものでした。

 

しかしながら、近年では各プールも砂で埋まり、めっきりと魚が減ってしまっいボウズで帰ることもさほど珍しくなくなっていました。ただ最近になり、この時期に1~2匹の大型ニジマスが釣れる話を耳にする機会があり、しかもその大型ニジマスというのは海から遡上しているタイプではないか?と実しやかに囁かれていたのです。もちろん何度かはそのニジマスを本気で狙ってみたものの、あまりに低い確率であるために最も報われない釣りの部類に入る気がして滅入ってしまっていました。ところが、まさかあの日に限りあのような事件が起ころうとは……

 

その川は橋の上下ごとにポイントが分かれていて、残念ながら実績のある人気ポイントは先行者で埋まっていました。唯一残っていた最下流の橋のたもとに車を入れ、漁港海アメのままのタックルで川へと入って行きました。まぁアレです。この日ボクは正直、タックルとウェアーの塩抜き程度にしか考えていませんでした。しょせん塩抜きですから、深く立ちこんで「ものの小一時間で終了!」と、深く考えずにそれっぽいフライを結んで、ようやく使い慣れ馴染み始めたクロスS1 #7スイッチ10'7"を振り始めました。フライを流して40分も経ったでしょうか、「ここぞ核心部!!」ってポイントでは何事もなくフライが足元まで帰ってきます。駐車スペースにあった無数の足跡から見ても、恐らくは朝から3番目か4番目に入ったのであろうとも思える時間ですしたし、期待感も何もない状態で釣り出していましたから、「もう塩も抜けたべさ?」くらいにしか考えていませんでした。何よりも寒さに負けて心が折れ掛かっていて、どこの温泉に行くか?しか頭にありませんでした。

 

核心部でアメマスが何も反応してこない事であきらめながらも、その先にある流れの止まりそうなくらい緩い辺りがなぜか急にものスゴク気になってきたのです。決して水深は深くはないのですが、なんと言うか、水面下にいる生物を全て緊張させているような気配というか、川の中が張り詰めた雰囲気にあるとでもいいましょうか・・・・。「根がかりしてもイイから、あそこまで流してから・・・・」そんな風に自分に言い聞かせて、寒さと指先の痺れを我慢しつつダウンクロスで投げ入れたフライを更に3~4メートルほど送り込んで静かにジワリジワリとスイングさせてみたのです。

 

しかし・・・・・何も起こりません。ボトムを引きずるようにスイングするフライは、最深部とおぼしき箇所を虚しく通過し、自分の真下側へと来る頃合を見計らって「グイグイ」と乱雑にラインの回収を始めました。「もうこれで思い残すこともなく温泉に行ける」と開き直りながら・・・

 

で次の瞬間・・・・ズゴゴッ・・・・・やってしまいました。根掛りです。「最後の最後にフライのロストとはツイてないなぁ・・・・」などと思った刹那、突然竿が暴れだし、根掛りしているはずのラインの先で恐ろしくデカイ銀色の塊がグルングルンと暴れているではないですかっ!!もう大慌てでした。いきなりブーメラン状に曲がったラインを引きずりながら目の前3メートル先を疾走していったのは、アメマスではなく紛れもない野太いニジマスだったのです。あの強靭なクロスS1のブランクをもってしても、「これ、リールシートから曲がってないか?」ってくらいにひん曲げられて、リールは「ジャージャー」いいっぱなしで止まる気配は一切なしっ!!ボクの方はというと、塩抜きどころか魚を追いかけるので必死となり、全身がズブ濡れとなりながらも川の中を走り回りました。

 

散々ラインを引き出した挙句に「ダップ~ン!!」と、ど派手なジャンプを2度3度と繰り返すこの特大ニジマスは、竿やリールドラグのプレッシャーなど意に返さず、もう好き放題に走り回りました。なによりもアメマスを想定していてのタックルだっただけに、ちゃんとキャッチ出来るのか不安が頭をよぎったのですが、サイドプレッシャーを掛けつつティップを水面スレスレで維持し、なんとか進行方向を変え始めると、推進力の塊と言いたくなるようなニジマスが明らかにクロスS1のバットに屈して「グリン!」とターンしてくれるようになりました。ギャンギャンラインを出されていながらそんなことを4度も5度も繰り返していると「アレ?これイケるかも?」と、微かな自信がわいてきました。この自信を持たせてくれたのは、このロッドであったからに他ならないでしょう。ようやく近くに寄せられたと思うたび、40~50メートルくらい走り去る。正直、ニジマスを釣っててこれほどまでの体力勝負を強いられたのは生まれて初めてでした。それでもなんとか魚を岸際まで誘導できたのは、海アメで使っていたティペットが1xだったことも幸いでした。しかし、あまりの重さに竿で岸にズリ上げることが不可能なので、ランディングはもう魚めがけて頭から飛び込んでいましたね。(笑)

 

68cmニジマス+(3)

 

で、恐る恐るスケールをあてがうと・・・・・何度も何度も確認しながら、尾ひれの真ん中にある数字が68cmを示していた時には「よっしゃー!!!!」と絶叫してしまいました。果たしてこの魚が海から来たものなのか川で育ったものなのかは知る由もありませんが、背びれから尾ひれにかけて一切の欠損や湾曲している部分がないことからも、生まれ持っての野生魚であることは間違いなさそうでした。イカツイ顔つきをしたこのニジマスですが、こんな魚のDNAを受け継いだニジマスがこの川にもっと増えてくれることを祈りつつ、静かにリリースし泳ぎ去る姿を眺めていました。

 

 

最後に、この日あのニジマスとの出会いを繋ぎ合わせてくれたフライをご紹介いたします。本文冒頭で「それっぽいフライ」と言っていたのがこちらです。ナチュラルで流してもリトリーブであってもソコソコの働きを見せてくれるフライです。

 

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基本的には海アメマス&海サクラマスが好む甲殻類に似せたカラーで、また海藻帯の中ではカジカのような小型の根魚をもカバーしてくれるような気がします。また、ヘッドの部分のペレットダブを掻き出さずに少し太目にダビングすると、河川湖沼ではスカルピンなどのイミテーションにも使えると思います。巻き方は簡単で、テールにチカブーを巻留めたら、お好みのペレットダブでボディーを作ります。

 

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ソラックス部分の直前に、コックデレオンヘンをハックリングします。

 

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再びペレットダブでソラックスを作ります。この時、ヘッド部分をやや広めに残しておきます。

 

画像4

 

 

そしてまたコックデレオンヘンをハックリングします。

 

画像5-(1)

 

 

最後に厚めにヘッドを作ってから、まんべんなくファーを掻き出して出来上がりです。

 

 

フック:TMC9395や5263 #10~#4
テール:チカブー
ボディー:ペレットダブ(02グリーン)
ハックル:コックデレオン・ヘンサドル
リブ:ゴールドワイヤー(M)

 

 


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