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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「スカッディーウィーク2017」

2017.04.12

カブちゃんの北の便り「スカッディーウィーク2017」

恒例行事となったスカッディーウィークへ今年も行ってきましたので、ご報告致します。毎年この時期には、友人から「海アメ・スカッディーウィークの記事、楽しみにしているよ!」と、とても嬉しいお声を頂きますので、今年もお伝えしたいと思います。

 

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いきなりですが、まず初めにお伝えすることは、2017年はとても厳しいシーズンの幕開けとなったということです。なんと、アメマスがいないのです!そして、スカッドさえもがいつまでたっても河川への遡上を始めない・・・。全くもってこんな年は初めての経験でした。通常、例年で言えば3月の2週目ともなればスカッドの遡上は最初のピークを迎え、川岸の水際には帯のようにおびただしいスカッドが見えるのですが、なんと今年は3週目を過ぎても1メートル四方に1~2匹しか居ない・・・。こんな状況ではアメマスが寄るはずもありません。

 

そもそも道南松前方面のアメマスの代表的な行動パターンとしては、朝夕もしくは潮の動くタイミングにエサを求めて岸際を回遊し、小川の流れ込みで起こっているスカッドの集結に付き、そのままその付近の深場や根などに居着きます。そして同様の行動パターンを取った複数のアメマスが次々と同じエリアに居着くのです。しかし、そのアメマスたちを足止めさせる肝心かなめのスカッドが居ないのですから、もはやどうにもなりませんでした。

 

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ここで少し、この釣りのキーポイントとなる部分をお伝えしたいと思います。大まかなポイントの選択方法は以前のお便りで記しましたが、そのような好条件のポイントでも、画像のように深夜から早朝の冷え込みにより砂浜が白く凍ってしまっていては、砂の中を移動するスカッドも動くことができません。

 

凍る砂

 

故に、こうなると朝日が浜全体を温めてくれるまではあまり期待できないかもしれません。また、せっかくの小河川の流れ込み、好条件が揃っていても、画像のように痩せたアメマスが釣れてくるようではそこもあまり良いとは言えないでしょう。それはそこから考察するに、スカッドの流下があればそれらを食べ続けている個体は驚く程の速さでコンデションが整い、そのような第一級のエサ場として成り立っているのであれば、当然他のアメマス達も集いエサを独占的に食べているヤル気のある大型から釣れてくることが多いからです。

 

ですが、最初に痩せた個体が釣れるようでは後が続かない場合が多いのです。また、逆に考えれば、肥っている個体が釣れるという事は連日のスカッドの流下が起こっていることへの裏付けでもありますから、複数の魚を呼び込んでいると関連付けられるのではないでしょうか?そんなことからも、最初に痩せた個体が釣れた場合は長く粘らずに、思い切って他のポイントへ展開された方が吉と出る場合が多いのです。

 

さてさてここで【ポンプマニア】と呼ばれるボクがアメマスから抜いた胃の内容物を、皆さんにご覧になっていただきたいのです。

 

ストマック調査

 

これは道南の日本海にある小河川の河口で、午前7時頃にライズはしないけれども何度もボクの前をクルージングしていたアメマスから抜き取ったスカッドですが、お気づきでしょうか?食べた直後の新鮮な?スカッドが入っていません。また、後ろの小河川を観察しても、1メートル四方に3~5匹程度のスカッドしか見えません。しかしこの後、気温の上昇とともにおびただしい数のスカッドが一斉に動き出し、波打ち際の浮遊も多数確認できました。するとどうでしょう、先程までは1~2匹のクルージングだったアメマスが5匹6匹と、どんどん増えてきました。時間は8時30分を回っていたと記憶しています。

 

このようにスカッドの動きと連動していると思われるこの時期のアメマスは、朝一番に反応が薄くても気温の上昇とともにチャンスが巡ってくることも多々あるようです。もちろんこのような魚の変化をつぶさに観察できるのは優れた偏光グラスが必須アイテムとなってきます。

 

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なので、ボクは夜明け前の薄明るい時間帯から日中の明るくなってからでもカバーできるサイトマスター・イーズグリーンレンズを使用しています。最近のサイトマスターはとてもスタイリッシュなタイプが多く販売されていますので、みなさんも是非機会があればお手に取り、その使い勝手の良さに触れてみて下さい。

 

また、この時期の気圧配置いかんでは真冬の天候へ急変し、マイナス5℃や6℃になることも珍しくありません。それ故、防寒対策も十分にしなくては凍えてしまい、釣りどころではなくなってしまいます。そして時折ヒザ下くらいまで波打ち際に立ち込む事もあるこの釣りでは、とにかく【冷え】は大敵です。しかしネオプレーンのウェーダーですと、蒸れが引き起こすウェーダー内部の僅かな結露が時間の経過と共に急激な冷えを呼び込みます。

 

そこで以前のボクは、Foxのゴアテックスウェーダーの中に超厚手のフリースパンツを履いていましたが、これが下半身の締めつけに繋がり、非常に疲れやすく、ムッチムチのパッツンパツンな下半身が浜を歩く時や屈んだりすることへの妨げになっていました。ですが、近年着用しているFoxfire airistaの【Softshell Pants】【Fast Sweat Dry Jacket】は、着た時の軽くて薄いフィーリングとは裏腹に、裏地の起毛による高い保温性と稼動時の低抵抗感、そして身体に及ぼす疲れの根源でもある圧迫性が全く感じられず、本当に釣りやすく優れたウェアーだと実感させられました。(ボクは寒さが厳しい時期は、丈の長いフリースソックスとジャケットの上にフリースベストと薄手のダウンジャケットを着用しています)。

 

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最後に、先日のエピソードをお伝えしたいと思います。この日も目に止まるスカッドは殆ど見られず、長期戦の様相を呈していました。たまに見られるアメマスのクルージングも、その周期はとても長いものでした。悴む指先を気遣いながら水面を注視して、白い砂底に黒い影が横切るのを探します。時おり現れる30cmほどの小型のサクラマスに翻弄されつつ、朝日が差して気温の上昇が始まる時間帯に期待を寄せているものの、なかなか芳しい状況ではなかった時でした。

「うっわ!!」
「番長キター!!」

思わず叫んだボクの目の前5メートル程のところを、70センチに迫る巨体がユラユラと泳ぎ去って行きました。無言である一定方向にばかりフライを投げ入れる仲間達。恐らくは番長が目の前を泳いでいるのでしょう、聞かずとも前傾姿勢を取るその雰囲気でバレバレです(笑)。もっとも、マッチ・ザ・ハッチ的要素がなにより強いこのスカッドの釣りですから、そう簡単にはフライを咥えてくれません。ほどなくして、番長も姿を見せなくなった頃でした。ボクのほんの3メートル目前、カケアガリで巻き上がる砂煙の中にアウトリガー的にアプローチしているボクのロッドに「カツン・・・・」と、とても小さなアタリの後、ひと呼吸置いて竿を立てると、なんとあんな小さなアタリの主が例の番長だったのです。

 

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恐ろしい大きさ?広さ?の尻尾が水面を叩きまくったすぐ後には、「え?コレ、シーバスなの?」と思うような大きな口を広げてエラ洗いしています。

「ばっ、ばっ、ばんちょ!」
「ちょっ、ちょっ、ばっちょキタ・・・・」

もはや自分でも何を言ってるのかワケが分かりません。ボクの心臓は「ボコッ、ボコッ」っと、何かキケンな心音を発しています。後はオービス・リーコン6番9フィートの強靭なバットパワーに頼るしか他はありません。どのくらいラインが引き出されたのでしょうか?数分のやりとりの後、番長が手前に泳いできた時でした。

「ダバダバダババババ!!」

水面でもんどりうってからのローリングサンダーです。ほぼアザラシの子供みたいな巨体が大量の海水をかき回していた時でした。

「カクッ!」
「ゴン、ゴン、ゴゴゴン!」

ほんの0コンマ数秒だけ緩んだテンションに続いて強烈な重さがロッドを襲いました。そうです、ドロッパーがスレ掛かってしまい、リードフライが外れてしまったのです。魚をいなすロッドの角度が悪かったのでしょう、尻尾の付け根にスレ掛かったドロッパーはガッチリと食い込み、手に負える状態ではなくなってしまいました。それを見越したかのように沖へと真っ直ぐに泳ぎだす巨漢の番長は、勝ち誇ったかのように加速していきます。

 

どうすることもできないボクは、ひたすら竿にしがみついていることしかできませんでした。みるみるとラインが引き出され、すでに120メートルは出されていました。ロッドは常に「つの字」になったまま、どんなに角度を変えようともティップは水面と平行になるだけでした。リールの中心にあるシャフトがはっきりと確認でき、バッキングも残り数メートルとなったところでイチかバチかでリールをハンドロックさせて強制停止を試みるも、結果は解りきっていました。

 

いえ、本当は、ほんのあと数秒後にはラインが足りなくなって切られてしまう前に、自分の意思で切りたかった、せめてものボクの負け惜しみだったのです。ボクは何を釣るにしても100%バーブレスを使用しているので、番長も深手を負うこともなく針が抜けてくれることと思います。

 

さてさて、そんな一発逆転サイズの魚も泳ぐ松前海岸ですが、今後はサクラマスの回遊も増えてくることでしょうから、またなにか面白いエピソードがありましたらお便りしたいと思います。

 


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