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Bass Fishing社員ブログ JBトップ50第1戦「七色ダム」 この地で生まれ育った山岡計文の戦いPart1

2014.04.21

JBトップ50第1戦「七色ダム」 この地で生まれ育った山岡計文の戦いPart1

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JBトップ50第1戦の舞台となった七色ダム。奈良県、三重県、和歌山県の3県に接する水域を持つ、山間部のリザーバーです。上流に位置する池原ダムとともに、バスフィッシングの聖地として、昔から多くのアングラーを魅了してきました。

ティムコプロスタッフである山岡計文選手は、七色ダムのほとりにある下北山村出身です。下北山村の人口はかつて4,000人を超えていましたが、今は1,000人余(平成22年国勢調査による)。非常に小さな、静かな山村です。自宅周辺には野生の鹿や猿、猪が頻繁に顔を覗かせます。眼前に流れる清流にはアユ、アマゴが多く泳ぎ、1965年に完成した七色ダムによって、自宅から数分の位置に湖水を湛えたリザーバーが存在する環境で、山岡計文選手は生まれ育ったのです。

父親が山へ狩猟に入るとき、湖面を船で移動したそうです。子供のころの山岡少年は、父親の狩猟にしばしば同行しました。その船に同船し、父親が山へ入っている間、船で待ちながら釣りをしていたといいます。減水時に湖岸でした根掛かりしたルアーを見つけて拾い集め、それをキャストしてバスを釣る、そんな日々を送っていました。そんな山岡少年がバスフィッシングの世界で生きていく決心をしたのはごく自然のことでした。

トップ50昇格は2009年。ルーキーイヤーは散々な結果でトップカテゴリーの洗礼を受けた形となりましたが、2010年の早明浦ダム戦で準優勝、2011年北浦戦で3位と徐々に結果を残し始めると、2012年の開幕試合となった早明浦ダム戦ではトップ50初優勝を飾りました。他の選手が「あの釣りは真似できない」と唸る、完全中層の釣りにビッグベイトを織り交ぜた「らしい」勝ち方で、リザーバーマスターの地位を確固たるものにしました。

トップ50では苦戦した時期もありましたが、地元の七色ダムを筆頭に紀伊半島のリザーバーでは圧巻の成績を残しづけていました。JB/NBCのローカルプロ戦、チャプターでは2003年以降で、七色ダムで8勝、池原ダムで3勝、津風呂湖で3勝、三瀬谷ダムで1勝を挙げており、お立ち台に乗った回数は数知れず。年間タイトルも何度も獲得しています。これにショップやマリーナ主催の大会を加えると、果たして何回勝っているのかわからないほどです。いつしか彼は「七色ダムの生ける伝説(Living Legend)」と称されるようになりました。

2014年の開幕戦が七色ダムに決定した時、山岡選手は当然優勝を強く意識しました。開催時期は山岡選手にとって簡単な時期ではありませんでしたが、それは他の選手にとっても同じ。プリプラクティス中は周囲の選手に動向を悟られないようにしつつも、湖の状態、特に春の進み具合を中心に確認作業を続けたようです。

「今さら魚探掛けは必要ないですから(笑)」

と語る山岡選手でしたが、試合に向けて思わぬことが彼の前に立ちはだかっていました。

地元でトップ50が開催されるとなると、山岡選手には様々な仕事、つまり大会開催に向けて下北山村自治体、消防、警察などとの折衝、各ボート店、宿泊施設への挨拶と協力の依頼、そしてルールづくりなど多くの仕事が待っていました。JBプロ戦が開催される場合、その多くは地元チャプターを中心に開催に向けた地ならし、下準備が行われています。今回もチャプターの面々に加え、参加選手の一人である山岡選手が果たさなければならない役割も少なくありませんでした。

そして開催決定と共に高まる地元の期待。全国にバスプロの肩書を持つ選手は多くいますが、大会の結果が住んでいる自治体のホームページに掲載される選手はそうはいないでしょう。過去にトップ50で好成績を収めれば、村の広報誌に速報が載る、そんな環境が山岡選手を後押するのです。山岡選手には主催者側の立場と、選手としての顔の両方が必要な七色ダム戦が始まろうとしていました。

直前プラクティスに同船した時は「西の川、北山川ともにプリプラより良化していないですね。見えバスのみを狙って優勝は無理。」と言っていました。今回大人気スポットとなったティーズオン桟橋前では「ここは魚溜まっています。」というや否やいきなりキーパーをキャッチするなど、順調にプラを進めているかと思いきや、「正直、ピンチです。オオハズシもあり得ますよ。」とのこと。例え地元であっても変化の激しい時期の七色ダムは一筋縄ではいかないようでした。

「湖の状況は分かったけど、釣れるかどうかはやってみないと分からない。バッティングもあるし。釣る場所のネタ数は選手の中では一番多いはずだから、出たとこ勝負ですね。」

「苦戦の初日」

初日スタート前、準備を終えた山岡選手は挨拶のために来場した村役場の方を迎えたり、駐車スペースの確認をしたりと、裏方としての仕事もこなしていました。ミーティングでは禁止エリアなどルールの説明を行うなど、選手と裏方の両面が必要な状況になっていました。筆者自身、何度もトップ50の現場を訪れていますが、この日の山岡選手の表情は明らかに硬く、緊張と同時に集中しきれていない印象を受けました。

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「スタート前。緊張の面持ち。」

フライト後半でスタートした山岡選手は、西の川などの見えバス攻略をあきらめ、会場周辺から釣りを開始しました。結果として最終日に北大祐選手がリミットメイクを果たすなど、今大会で最も魚が濃かったストレッチです。観察していると、まず表層をPDLリビングフィッシュのミドストで湧いてくるバスがいないかチェック。その次にPDLレジェンドリーチのダウンショットでレンジを下げながらミドスト。ボトムは超ショートリーダーのダウンショットでネガカリを回避しながら探っていきます。

会場からプレスやギャラリーが見守るなか、7時52分にミドストで1匹目のキーパーをキャッチ。早々に魚を手にしたことで精神的にはずいぶん楽になったはずです。本来の自分を取り戻すことができる、そんな価値のある1匹になるはずでした。

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 「会場前で早々にキーパーをキャッチ。」

午後に入り、取材艇からの情報では複数匹キャッチしているはずの山岡選手が再び会場周辺に姿を見せます。基本的な釣り方のローテーションは朝とほぼ同じ。13時29分、キーパーサイズをキャッチ。入れ替え作業は行わず、ライブウェルにバスを入れるとすかさずキャストを再開したところから、リミットメイクに至っていないと思われました。しかし、同船しているBasser誌の記者と談笑するなど、リラックスしている様子。本来のリズムを取り戻したのかもしれません。

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「4匹目をキャッチ。初日は苦戦した。」

結局山岡選手はリミットメイクに失敗し、1806g/4匹。15位スタートとなりました。優勝を狙う山岡選手にとって初日15位は厳しい結果と言えるでしょう。ローウェイト戦は予想通りだったとはいえ、戦前予想よりは釣れている事実。リミットメイクを果たした選手の数名が同じ場所であったことを考えると、2日目以降は厳しくなることが予想されますが、それでも出遅れた感は否めませんでした。

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「初日は15位。2日目以降、勝負しなくてはいけない順位となった。」

試合後に山岡選手に話を聞くと、

「やり直すとしたら、初日ですね。この大会の準備に携わってきた立場があったから、試合がスタートした時点で気が抜けたというか、これでトップ50七色ダム戦は成立すると思うと、それで緊張の糸が切れてしまった。結局出遅れが最後まで響いた形となったのは残念。」

と語ってくれました。

2日目「地元の意地」

2日目は強い冷え込みの中スタートしました。この日の山岡選手はジャンプアップを狙って勝負しなくてはならないポジションでした。しかし初日15位というのは2日目に大ハズシをしてしまうと、一気に上位進出の目がなくなるばかりか、予選落ちの危険すらあります。地元開催の七色ダム戦において、予選落ちなど考えたくもない悪夢でしたが、その一方で中途半端な成績では仕方がない、見せ場を作らなければ、という思いも山岡選手にはありました。

トップ50において地元やホームといった立場の選手は今までもありました。河口湖における沢村選手も湖畔至近に住んでおり、そういう意味では地元でしょう。しかし、開催地そばで生まれ育ち、今なおその地でバスプロとして選手となると、山岡選手以外には皆無でしょう。そして山あいの小さな村であるがゆえに、多くの声援と期待を受ける事実。山岡選手はどうしてもこの2日目に大きな勝負に出なくてはなりませんでした。

そんな意気込みとは裏腹にこの日の山岡選手は大苦戦。12時を過ぎても未だノーフィッシュという状態でした。この日は朝の冷え込み、日が昇ってからは晴天無風状態が続き、若干の増水という状況。初日に比べ多くの選手が苦戦を強いられました。会場周辺に姿を現した山岡選手は、いままで意識していなかった、しかし七色ダムのなかでは個人的に好きなスポットという岩盤が露出したブレイクに入ります。そこは初日からほぼノーマークでしたが、そこから怒涛のラッシュが始まります。

PDLレジェンドリーチのダウンショットでバイトを連発させると、30分かからずにリミットメイクに成功。決勝へ向けてこのスポットを温存するべく、移動して西の川の天才バスで入れ替えを狙います。勢いづいた山岡選手はそこでも1発仕留めてウェイトを3000gジャスト。北選手のビッグフィッシュ1発にトップは譲ったものの、単日2位となり、予選通過順位を一気に3位まで上げてきました。この日は25名がノーフィッシュ、21名が1匹という厳しさ。そんな中でのリミットメイクは「さすがLiving Legend。」と周囲を唸らせる結果でした。

「あそこまであのスポットが機能するとはね。でもあの場所は地元でもほとんどやる人がいないけど、好きなんですよ。ちょっとトップとは差があるけど、勝ちが狙えるところまで挽回できた。明日はきっちり釣りきります。」

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「2日目は貫録のリミットメイク。単日2位のウェイトを持ち込み、予選3位にポジションを押し上げた。」

余談ですが、この日の夜、筆者は北選手を含む数名の選手とスロープ関係者とともに山を下って夕食に出かけました。その場に偶然居合わせた方から「カズ(山岡選手のこと)が3位だって!明日は優勝するかもしれんな~。楽しみだな~。」と声を掛けられました。山岡選手がいかに地元から応援されているかがわかります。

 

Part2へ続く

【タックル1】
ロッド:フェンウィック TPMX62SULJ
リール:ヴァンキッシュ2500S
ルアー:PDLレジェンドリーチ ダウンショットリグ(1.8g)
ライン:スーパーハードフィネス3ポンド

タックル2】
ロッド:フェンウィック TAV-GP64SXULJ 
リール:ヴァンキッシュ2500S
ルアー:PDLスーパーリビングフィッシュ3インチ ジグヘッドリグ(0.9g)
ライン:スーパーハードフィネス3ポンド

タックル3】
ロッド:フェンウィック TPMX66SLJ (60周年記念モデル)
リール:ヴァンキッシュ2500S
ルアー:PDLスーパーリビングフィッシュ4インチ ジグヘッドリグ(1.4g)
ライン:スーパーハードフィネス3.5ポンド

偏光グラス:サイトマスター インテグラル(スーパーライトブラウン)

 


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