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Fly Fishing社員ブログ アトランティックサーモンショートシングルハンド開発秘話

2019.04.16

アトランティックサーモンショートシングルハンド開発秘話

2016年にアトランティックサーモンショート・スイッチ(SWT)を、翌2017年にはアトランティックサーモンショート・ダブルハンド(DH)発売し、これで日本のツーハンドおよびスイッチロッドユーザーのスカンジヘッドのニーズの多くを網羅したかと感じていたが、2018年初め、「これからはもっとライトなスカンジヘッドのニーズがあるはず」という考えのもと開発を開始したのがアトランティックサーモンショート・シングルハンド(SH)だ。

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ちょうどJスイッチをリニューアルし、3番や4番をリリースしたところで、これらのロッドにもマッチする各種シンクレートの揃ったスカンジヘッドが欲しいタイミングでもあった。ウェイトとしてはスイッチの最軽量であるSWT 5/6(250グレイン)の16gより軽い14g、12g、そして10gを想定したが、そうなるとスイッチはもとよりシングルハンドで十分に投げられるウェイトとなる。そこで軸足をシングルハンドロッドに移し、ラインの全長を最も一般的な9フィートのシングルハンドにあわせてその2.5倍である22.5フィート(6.9m)をベースに設定した(上の番手は23.5’)。なおこの『ロッドレングスの2.5倍=ライン(ヘッド)レングス』という方程式はアトランティックサーモンショート全番手に共通している。

 

SA(サイエンティフィックアングラーズ)に依頼したファーストサンプルはフローティングとS1/S2の2種類で、2018年の3月に手元に届いた。早速ホームグラウンドである芦ノ湖で使ってみると風の弱い時や樹木が覆いかぶさっているポイント、さらに魚との距離が近いポイントやマズメ時には非常に使いやすい印象だ。特にS1/S2は文句のつけようがない出来栄えだった。同時に開発したシューティングライン『フローティングモノコア.019』もすこぶる調子が良い。このサンプルはテスト釣行だけでなくプライベート釣行でも手放せないラインとなっていった。フローティングはS1/S2に比べるとターンオーバー時にわずかにティップが暴れる感があるがその時点では許容範囲と判断した。

 

使い込んでくるともう少し上の番手のロッドにマッチした重さが欲しくなってきた。そこで残りのシンクレートであるスローインター(SI)とS2/S3の試作は8番ロッドを想定した18gを含めて行った。これらのサンプルも非常に出来が良く、特にS2/S3は他のシンクレートに比べて細身のためスパーンと飛び気持ち良い。またサンプル全体に通して言えるのがDHやSWTの高番手と比較するとライン径が細いため沈むスピードは相対的に遅く、例えばS1/S2はDHのS1/S2とスローインターの中間的な沈下スピードとなっているようだ。これはより精密にタナを探ることができることを意味している。そうなるとS2/S3の出番はDHやSWTと比べても増えてくるだろうということが考えられるのである。

 

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季節は進み、さまざまな場所で使い込んでテストも終盤と言うところに至って前述のフローティングの『ややティップが暴れる』という点が気になってきた。完成度がS1/S2等と比べるとやや見劣りするのだ。そこで下澤孝司氏に相談しフローティングのテーパーを見直すこととなった。季節はもう盛夏を迎えていた。

 

ティップの暴れの原因はベリー径とティップ径の差が大きすぎることにあった。短くて重量のあるラインを作る上で最も困難な部分である。全長を見直し、テーパーをなだらかにしたセカンドサンプルは非常に滑らかなターン性能を見せ、下澤氏のお気に入りとなったが、やや高度なキャスティングスキルが要求されるテクニカルなラインになっていた。これでGOサインを出すか、それとも…。悩んだ末もう一度だけテーパーに工夫を凝らした試作を行うこととなった。それがサードサンプルで、試作が届いた時にはすでに季節は秋、9月になっていた。本州ではまもなく川も湖も禁漁になってしまう。両者がアクセスしやすく、そしてこの時期でも実釣出来るフィードとして栃木県の湯ノ湖を選び、合流して最終テストを行った。

 

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ラインに関しては一切妥協をしない下澤氏を納得させるラインが果たして出来ているのか?サードサンプルは結果として誰でも容易に投げられるオートマチックなラインとなっていた。これには下澤氏も納得で晴れて開発完了となった。ぎりぎり予定に間に合いホッと胸を撫で下ろした瞬間だった。試作が完成すると今度を動画撮影である。シングルハンドのスペイキャスティングは今まであまりフィーチャーされてこなかったためキャスティングのイメージがし難いだろうという事でテストを行った同じ湯ノ湖で動画撮影を行うこととなった。難しいキャスティング理論は述べず、まずは軽快なキャスティングと実釣を楽しんでいただこうというコンセプトの動画だ。

 

 

そして2018年12月に発売。試作品だけでなく量産タイプ、すなわち製品も実際に使ってみようということで冬の間は管釣り通いが始まった。特にバックスペースの限られている管理釣り場ではその威力を発揮するのだ。ロッド一本だけ持ち、池の周りを歩きながらバックスペースの有無に関係なく空いているスペースで釣りが出来るのだ。特にバックスペースのないポイントでは今までフライで攻められていないせいか好釣果となった。

 

 

さて発売からすでに4ヶ月がたち多くの方が本商品アトランティックサーモンショート・シングルハンドをお使いになっていると思う。「手軽に、軽快に」投げられるアトランティックサーモンショート・シングルハンドだが、そのキャスティングは容易である反面、実はとても奥深い、ということも事実だ。そこでもう少しキャスティングに踏み込んだ動画を作成した。これを見さえすれば誰でもエキスパートになれる、とはならないかもしれないが皆様が釣りを楽しむ上での一助になれば幸いである。

 

 

アトランティックサーモンショート・シングルハンド
タイプ(シンクレート):フローティング(F)、スローインター(SI)、シンク1/シンク2(S1/S2)、シンク2/シンク3(S2/S3)の4種類
番手(ウェイト):SH5/6(190グレイン、12g)、SH6/7(220グレイン、14g)、SH7/8(250グレイン、16g)、SH8/9(280グレイン、18g) の4種類
推奨シューティングライン:SAフローティングモノコア.019ペールイエロー、ティムコエアロシューター24lb.
 

 

中峰

 

 


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