「クリンクハマーって釣れるよね!」
と備前貢さんから聞かれたときに初めて知ったパターンです。一見するとなんの変哲もないぶら下がりのパラシュートパターンで当時はヒメヒラタカゲロウのハッチマッチャーとして使用していました。元々はカディスのイマージャーパターンとしてオランダで生まれたようですが、ボディーをスリムにしてメイフライにも対応したり昨今では色々と使われており、今回紹介したフライもそのバリエーションの一つです。
エピソード①
備前さんが静岡にいらっしゃった頃、私は別宅となるほど春先は備前さんのところに入り浸っていました。釣れる釣れないは関係なく夢を求めて本流支流とさまよっていた頃です。ライズを待って川で昼寝したりの無駄も楽しい時期でした。そんな状況でも日によってはライズに恵まれ良型のアマゴが釣れ、楽しいフライフィッシングライフを満喫していました。本流でのライズの釣りは一期一会的な事が多く千載一遇のチャンスをモノにできるかどうかが重要です。そんな釣りだからこそ信頼できるフライで挑まなければいけません。
ダニーマ、スペント、クリップルと色々ありますがクリンクハマーは流れの種類に捕らわれず信頼でき出番の多いフライでした。本流はひたすら歩いてライズを待って・・・無ければまた歩いてライズを待っての繰り返し。あるかないか分からないライズを期待して歩き続けたある日の出来事。ポイントについてしばらく眺めているとヒメヒラタのハッチがはじまり目の前で40クラスがライズしました。
何もしてないのに胸の鼓動は激しくなり手が震えながら当時一番信頼していたスペントを結びプレゼンテーション。フライめがけて浮いてきましたが見切られてスプークされ終了・・・。翌日も同じタイミングで入りましたがドリフトボートが通過して終了・・・。三日目はクリンクハマーを結び一発でフッキング!下流に一気に下られバッキングが出たあたりでジャンプして外されて終了・・・。4日目以降はありませんでした。獲れなかった悔しさは残りますが一生心に残る思い出となりました。
エピソード②
北関東の本流での事。モドリヤマメを狙っていい時期になると足しげく通っていました。年によりモドリヤマメの遡上の多さや時期が変わりますがその年の遡上は凄く、思い出に残る年でした。毎日のようにいい魚が釣り上げられ釣友たちのテンションも上がりまくっていました。サイズ的には45~50センチくらいでやわなタックルでは太刀打ち出来ない相手です。
そんな魚だから最低でも4Xティペットで対峙しないと掛けてもキャッチ出来ないことが多くライズの釣りで挑むならば大型の虫のハッチで挑むのが常套手段となります。したがってエルモンヒラタカゲロウにモンカゲロウ、夕方のヒゲナガカワトビケラのハッチに期待して挑んでいました。その日も夕方近くから始まるエルモンヒラタカゲロウのハッチを期待して13時くらいから川に入りました。
春先とは思えないほど暑い日で太陽の日差しが痛いほどに差し込んでいました。いくつかのポイントを見て回り本命ポイントに14時くらいに着くと目の前のフラットで50クラスが悠々とフタバコカゲロウにライズしていました・・・。サイズにして18番以下の小さな水生昆虫です。かんかんと照り付ける無風の真昼間。水面近くに定位して流れてくるフタバコカゲロウをついばむ様にパクパクと静かに捕食していたのです。
夕方のエルモンまで待てば良かったのですが我慢できずに4Xにフタバコカゲロウを模したCDCダンを投げてしまいました。プレゼンテーションもうまくいきドリフトも完璧。フライめがけて静かに近寄ってきましたが鼻先で突かれ捕食しません。パターンが合っていない見切られ方に見えたので伝家の宝刀スペントを結び再度キャストしましたがまた見切られました。
こうして5パターンくらい投げたと思いますが全て見切られ最後に19番のクリンクハマーを投入すると疑いもなくフッと吸い込んだのです。掛けたはいいもののそいつは走らずに同じ場所で定位しています。掛かっていることが分かっていないようですがなんとなく違和感も感じているようでした。
どうしたものかと張らず緩めずの状態でしばらく考えていましたが動かないことには何もできないので少しずつテンションをかけて走らせようとしましたが魚の重さに耐えられずにまさかのフックアウト・・・。針が外れた後にその魚はなんか変なことが起こったみたいだなといった感じでゆら~っとどこかに消えてしまいました。やっぱり夕方まで待てば良かったと後悔しましたが後の祭りでした。
この二つのエピソードはどちらもキャッチできなかった悔しい思い出ですが一生心に残るでしょう。釣れた思い出よりも深く心に刻み込まれ今ではいい思い出となっています。そんなクリンクハマーはいいフライなのかどうなのか…私にとっては微妙ですが今でも何本か忍ばせている必殺フライです。
下の動画でタイイングをご紹介していますので、ぜひお試しください!
嶋崎了