前回は拙いボクのヒゲナガアダルトをお届けしましたが、今回はそのバリエーションでもあるウルマーシマトビケラやニンギョウトビケラなどの中型~小型のスペントカディスをお届けしたいと思います。
ヒゲナガのハッチが終わりを告げた頃にピークを迎え、夏を代表するカディスの中でも最重要種になり得る可能性を十分に秘めていて、またハッチの期間も初夏から晩秋まで長い期間見ることができるこの類のカディスは、ピューパはもちろんのこと、スペントの流下にも注意を払わなければならない種でもあります。
特に晩夏から初秋にかけての早朝、盛期のポジションよりもやや下流に定位していて、泡の流れの中心でゆっくりと鼻先だけを出してライズを繰り返すようなニジマスには、この手のスペント系が効果を発揮する場面が多々あります。
もちろんスペントカディスのイミテーションとしてだけではなく、蛾やテレストリアルのスペントとしても相乗効果を期待できる、汎用性の高いフライであると思います。
それ故、秋の北海道ではボックスに常備していても損はないフライだと思います。
― スペントカディスパターン(ウルマーシマトビケラ)編 ―
使用例
秋の気配が感じられる頃、早朝や日中にプールの流れ込みからやや後方に定位し、スローウォーターの中で静かに鼻先だけを出して特定の物をついばむようなニジマスに出会ったとき、ヒゲナガの時と同様にインジケーターとウイングにだけフロータントを塗りこんだら、何度か水に馴染ませてウイングの表面張力だけでギリギリ浮いているような状態を演出してからライズへと投げ込みます。
材料
フック:TMC2302#16~#14
スレッド:ユニ8/0(ブラウン)
ボディー:ワイルドターキーバイオット(ナチュラル)
オーバーウイング:メッツハンガリアンパートリッジ
ハックル:CDCナチュラル
オーバーハックル:メッツハンガリアンパートリッジ
アブドメン:ヘアーズマスクダブ(ブラウン)
インジケーターポスト:フライパッチ(ムートン)
タイイング手順
1.フックの中心からやや後方でタイーキーバイオットを留めた後、ドライフライダビング材などで凹凸のないように下地を作り、緩みがでないようしっかりとボディーを作ります。
2. ターキーバイオットを巻き留めた部分に、小さくダビング材でコブを作っておきます。
3.ヒゲナガパターンの時と同様に、ハックルプライヤーでつまんだあたりのパートリッジを使い、ウェッブを取り除いた根元部分にTMCソフトセメントを専用シンナーで約3倍程度に薄めたものを両面に一滴ずつ滴下します。
そして指でパートリッジ全体を指でしごくようにセメントを広げていきます。
2~3回しごくことでパートリッジがまとまり、同時にファイバーが補強されます。
4.イノプスヤマトビケラなどの黒っぽいウイングのカディスをイミテイトする場合などは、両サイドの部分を使用したり、ヘンハックルのお好みのカラーを使用したりすることをお勧めします。
5.成形したウイングを、ボディー先端のコブで左右に分かれるように巻き留めます。
前回のヒゲナガアダルト編も参考にしてみてください。
6.ウイングの巻き留め部分にCDCを2~3回程度ハックリングします。
7.CDCの巻き留め部分にパートリッジをハックリングします。
8.CDCとパートリッジのファイバーを左右に振り分けながら、フックの中心にフライパッチを巻き留め、さらに折り返して巻き留めます。
9.フライパッチの巻き留め部分を覆い隠すように、ヘアーズマスクダブを巻き留め、ファイバーを掻き出すのですが、この時TMCタイイングブラシIIでアイからベンドにかけて優しく撫でるように掻き出すと、CDCやパートリッジと程よく絡まり絶妙の雰囲気が醸し出せます。
上から見るとこんな感じ・・・・・
アレンジ:ウイングをグリズリーヘンハックルのティップを使用して、ハックルも変えたタイプ。
ダックの羽を使って巻いたタイプは、大型(画像は#6)にするとマイマイ蛾などのイミテーションになりますが、#16で巻くとニンギョウトビケラなどのカディスイミテーションにも使用できます。
また、#18~#6までのサイズで、ボディーをピーコックに変え、ウイングを黒のヘンハックルを使用した場合、とても優れたテレストリアルパターンにもなりますから、どうかそちらの方もお試しください。
激しいスプラッシュを繰り返す夕刻間際のライズ対策というよりも、何もハッチがない状況で何かを静かについばむようなライズを見つけた時など、一度はそっと水面へ落としてみる価値があるフライではないでしょうか?
ボク自身も、晩秋の北海道で幾度となくこのフライに助けられた経験がありますので、どうか、皆さんがそのようなシーンに出会った時のお役に立てられれば幸いです。