Fly Fishing記事 | ティムコ

小甲 芳信

Fly Fishing  プロスタッフ  小甲 芳信   カブちゃんの北の便り「海サクラのドンプチ?」

2018.06.08

カブちゃんの北の便り「海サクラのドンプチ?」

皆様大変ご無沙汰しておりました、函館の小甲です。いきなりですが、北海道のシーズン真っ盛りとなる前に冬から春を振りかえってみたのですが、もう今年の冬は本当に参りました。例年になく、一ヶ月以上も早い根雪(それ以降、春まで溶けない雪)の始まりと、テレビから流れる連日の降雪量記録更新のニュース。続く気象予報では、翌日以降も吹雪に見舞われるという聞きたくもない予報ばかり。挙句は南岸低気圧が断続的に津軽海峡を通過していった事で、漁業者が内陸部へ短期雇用の場を求めに行くほど海は荒れ続けたのです。

 

ドンプチのメッカ

 

もちろんそんな天候でしたから釣りの方もさっぱり立ち行かず、あれほど楽しみにしていた『スカッディーウィーク』も、そのほとんどがフイになり、これまでの人生で経験したことのないくらい暇な冬を過ごすこととなりました。

 

さてさてそんな折り、今年の海サクラシーズンでは久しぶりに見事なサクラマスにブチ切られました。どうも今年は、全体的にサクラマスの魚体が大きかったようで、ルアーで釣られている方などは4kg(60cmを軽く超えている)オーバーを仕留めた方もいたそうです。そして、ボクのフライへアタックしてきたヤツも相当大きいサクラマスでした。1Xをアッサリとブチ切っていくようなヤツだったのです。もう食った瞬間にはロッドがのされ、ほぼ1秒ないし2秒後にはロッドのテンションが抜かれているような感じでした。「ドスン!」と当たった時には既に「パッツン・・・」と切れているような感じです。これを僕らの仲間内では“ドンプチ”と呼び、海サクラの釣りではままあることなのです。

 

ドンプチ2分前

 

さてこの“ドンプチ”ですが、一体何が原因なのでしょうか?釣り人側の落ち度?それともタイミングが悪かった? 運・不運?イエ、考察を重ねると色々と原因が浮かび上がってきます。そこで、まずこの“ドンプチ”が起こる原因を紐解いてみたいと思います。

 

そもそもサクラマスという魚の性質は大変悪食で、スカッドやオキアミなどの甲殻類は元より、サケ稚魚などの小魚からホッケの幼魚やスケソウダラの幼魚などサクラマスの接岸時期と遊泳深度が被るタイミングで遭遇する、おおよそ口に入るサイズの生物ならば殆どを襲って食べてしまうとても荒い性質を持った魚なのです。そして潮が効いていてヤル気満々のスイッチが入っている時などは、捕食対象を見定めるや否やもの凄いスピードで突進し食らい付くのですが、その時の瞬発力は、本当に驚く程の速さと迫力があります。

 

今年はホッケに泣かされた

 

そしてそんな反応が時折、僕らのフライに対してもあるのですが、ここで一番のネックになるのがサクラマスがフライに突進してくる方向と銜えてから泳ぎ去る方向です。釣り人側のアドバンテージ内でのテイクならば問題はないのですが、ヤル気満々の時ほどそのリミットを超えてしまいます。

 

例えばリトリーブしてくるフライの真後ろ付近(進入角度が0℃~10℃)からフライに襲いかかり、Uターンするような場合はどれほどのトップスピードでフライに突進しても、バイトし戻る際に急減速してから方向転換となります。ここでロッドへ衝撃が伝わり、ロッドを立ててラインを引っ張り、スムーズなフッキング動作へと移行していけるので、釣人側が対応しやすくなります。

 

竿を横にするドンプチ回避例

 

問題は、サクラマスが向かってくる角度とフライをくわえてから泳ぎ去る方向が直線に近い状態になる場合です。逃げ惑うベイト(この場合は自身が操るフライ)に対してトップスピードになったサクラマスは、その速度を落とすことなくフライを咥え、スピードを落とすことなく襲いかかったまま泳ぎ去ります。すると、ラインと一直線上にホールドしてあるロッドがカーブを描く余裕もなく、対応する間もなく、フライラインやリーダー・ティペットの伸びしろ程度ではなんの足しにもならないくらい瞬時に引っ張られ、切れてしまうのです。

 

例えば、水深の浅い砂浜からのアプローチですと、薄暗い朝夕では餌を求めたサクラマスが浅瀬を岸と平行に移動してくる場合も多く、とかくそんな個体には、岸へと向かうフライに対して逃げられまいと慌てて食らいつき、そのまま深場(沖)へ逃げ去ろうとする場合が多く見られ、ドンプチされやすい状況が整ってしまうのです。もうこの僅かな時間内に起こるドラマチックな悲劇は、経験した者でなければ解らないほど衝撃的です。どうすることもできないケースがままあります。やはり国内サーモン、サケ科魚類の一角を担う魚種だけあって、驚く程強靭なパワーを見せ付けてくれるのです。

 

ドンプチのメッカ2

 

高速遊泳で有名なセイルフィッシュで時速120km、クロマグロで時速80km、シイラで時速37km、ボーンフィッシュで時速64kmだそうです。(これらは、エサに襲いかかる場合や危険を察知して緊急回避行動を取った場合などの瞬間的な遊泳速度である【瞬発遊泳速度】を表しています)。もちろんサクラマス(サケ科)はそれほどのスピードはないまでも、フライをひったくる際の瞬発遊泳速度は25km前後とされています。これを解りやすく距離に換算してみると、1秒間に約7メートルも移動するほどのスピードなのです。ちなみにボクの大好きな回転寿司のターンテーブルでは時速0.3kmです。1秒間に4センチほど進みます。

 

・・・・話が逸れました(汗)。で、これほどまでラインブレイクの危険性が浮き彫りになっているのであれば、単純明快、太糸を使えば問題クリア!といきたいところですが、そうなると『食い』が落ちている状態のサクラマスや、同時に狙っているアメマスなどの釣果にも影響が出てきてしまいます・・・・。以前、スカッディーウィーク編でもお伝えしましたが、基本的に魚釣りでは細糸の方が圧倒的に『食い』が良いのは誰しも知るところです。ですから、その日その時に合わせた切れないギリギリの強度を持ったより細い糸をセレクトしなければなりません。

 

遠浅で掛かるアメマス

 

そんな時に、水中での光の屈折率(最も魚に不信感を与えると言われている要因)が非常に低く、魚へ違和感を与えない フロロステルスティペットが役立つのです。元来魚釣りに於いて、古の時代から全く変わらない大原則とは「竿を使い、糸を通し、鉤を付ける」ということが挙げられますが、この3つの内、糸と鉤だけは魚の目に触れる距離にあるのですから、最大限注意を払わなければならないパーツといえます。であるならば、存在感を消しつつも高い強度を有する糸ほど心強いアイテムはないでしょう。

 

fluorotippet

 

結局のところ、魚がどの方向から食って来るのかなんてことは誰にも解らないことですし、釣り人の思うままに都合よくことが運ばないから楽しさもあるというもの。しかし、しかしです、目の前でブリブリに太った体高のあるロクマルの銀ピカサクラマスが自分のラインをブチ切ってしまうと、非常に悔しい思いをすることも確かで、フライを食わせたことだけは喜んでみても、あとあと後悔の念が尾を引きます。もし望める事ならば、あまりやる気のない、ソコソコ食いっ気が残っているダラダラしたサクラマスであってくれれば、確実にドンプチは回避できるのですが・・・。

 

さてさて、ことしもボクに大きな宿題を残し、サクラマスの群れは次の命を紡ぐべく川の上流へと泳ぎ去って行きました。しかし、ボンヤリとしている暇はありません。今年は遅れがちな回遊性の魚類達ですが、もう間もなくブリの季節がやってきます。たくさんの敗北と挫折を噛み締めながらまた新たな1ページを開いてみたいと思っています。夏の北海道でのソルトシーン、また、何かドラマがありましたらお便りします。

 

 


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