Fly Fishing記事 | ティムコ

小甲 芳信

Fly Fishing  プロスタッフ  小甲 芳信   カブちゃんの北の便り「アキレス腱のドンプチ!」

2018.10.09

カブちゃんの北の便り「アキレス腱のドンプチ!」

前略、やらかし番長の小甲です。実は今年のボクは前回のお便り以降、辛くてとても長い時間を過ごしていました。あれほど待ち焦がれていたハズのサマーシーズンを丸々と棒に振ってしまったのです。

 

平成最後の夏は初っ端からブリやシイラ、マグロを追いかけているハズが、6月の中旬というベストシーズンを目前に控えたある日、なんと右足首のアキレス腱を断裂してしまい全治3ヶ月、完全復帰するまでにはリハビリも含め約1年近い時間を要するとお医者様に告げられてしまいました。

 

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昨年秋には、毎年訪れていた『戻りブリ』の来遊が全く見られずに「今夏こそは!」と、意気込んでいたにも関わらず、また、それぞれのシーンに備えて様々なタイプのフライパターンも巻いていたにもかかわらず、大きなブリをキャッチしたとき撮る写真のポーズまで考えていたにも関わらず…、シーズンを目前にしたある日の夕方でした、仲間と楽しんでいたバスケットのプレイ中に右足首から「バツン!・・・」と、おぞましくも鈍いノイズが身体中に響き渡ったのです。

 

体育館の床に崩れ落ち、激痛と引き換えに“ヒザから下の感覚がなくなった”まではボクにとってはよくある捻挫なのですが、今回は明らかに何かが違う。慌ててアキレス腱を触った時の感触はポニョポニョとなっており、額に脂汗を流しながら翌日からの仕事やら釣りやら犬の世話までも様々なことが頭の中を駆け巡りました。もう前回の記事で述べた「サクラマスのドンプチ」を語る前に「自分のアキレス腱のドンプチ」を考えれっ!ちゅー話しですね(涙)

 

翌朝、院長を含めフライフィッシャーマンが揃う病院で受診したところ、アキレス腱の数パーセントは残っていたのですが半分近くがモップの先のように裂けていて、手術ができない(腱の縫合が難しい)ような状態であることが判明。いわゆる『半切れ』と言う、回復まで最も時間の掛かる最悪のパターンでした。前回のお便りで綴った「今年の夏は、ブリ釣りでたくさんの敗北と挫折を味わう」と言ったその前に、のっけから完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。

 

まぁ、お約束と言えばそれまでなんですが、松葉杖で自宅療養中のそんな時に限って「今年のブリはデカイ!」ですとか、「目の前でガバガバ!」なんてニュースが地元では飛び交い、果ては「追いかけているベイトは5cmくらいだからフライで狙うのにうってつけ!」などの嬉しくも悲しいお話まで聞こえてくる始末。もはや「トホホ・・・」の極みで御座いました。

 

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それもこれも全ては自分の蒔いた種ですから、若くもない身体に深く反省し、蒸し風呂のような部屋の中から叫びたくなる衝動を抑えつつ、1秒でも早く1mmでも太くアキレス腱が再生してくるよう祈り続けているうちに、函館の夏はいつの間にか過ぎ去っていきました。

 

さて、以前のお便りでお伝えした「シラス・ナブラ」ではフライサイズがキモとなり、それなりに巻いたスタンダードパターンなどでは太刀打ち出来なかったとお伝えしたことを憶えていらっしゃるでしょうか?今回はそれらにリンクしてくる『ブリのフライに対する意外な選択眼』を書いてみたいと思います。と言いますのも、ボクが頻繁に出かける北海道南西部の海域においては小サバや小アジ、イワシやオオナゴ、サンマやスルメイカなど様々なベイトがいるものの、初夏以降の主だった捕食対象物の中では体長3cm程のカタクチイワシの仔魚でもあるシラスの他に、そこから僅かに成長したカタクチイワシの幼魚が挙げられます。

 

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仮に15cm以上の成魚となったカタクチイワシがブリに追われ、大きな群れとなって作るベイトボールや帯を流すような集合体の個体数であれば釣り人側にも勝機が生まれるのかもしれませんが、ここ最近(今年の状況は分かりません)では幼魚がメインのまとまらないごく少数の群れがまばらにポツポツと泳いでいるくらい。実はこれがなかなかにクセ者で、幼魚は体長が5cmほどの個体が平均的なサイズとなっているのですが、まぁ~コレが難しいのです。

 

昨年などは7cm~8cmのサイズに抑えたフライであっても、ブリの群れの中の何匹かがチェイスはするものの多くの個体がスルーすることが日常茶飯事で、友人らがたまに食わせられたとしても、ボイルしている鼻っ先に落として、言わば「どさくさ紛れに咥えさせた」と言ってもイイぐいらいの状態。それくらい驚くほどブリの選択眼はシビアな時もあるのです。

 

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函館近郊のブリに関してはとりあえず何らかのソルトパターンを引っ張っていれば「その場のノリで食ってくるでしょ?」とはならない気がしています。もちろんフライパターンそのものの善し悪しにも関係しているのでしょうし、こんな状況でもルアーの方々が釣られているのを見ると、リトリーブに関する原因も少なからずあるのだと思わされます。また、潮流に対するラインの置く角度や魚との間合いと食わせるタイミングなども含め、結局は総合的な“食わせられる要素”が自分の中にまだまだ整ってはいないということになるのでしょう。

 

ところでこれまでのお便りでは、ブリを掛けるまでの象徴的な事例やそのアプローチ方法などをお伝えしてきましたが、ここで一つ忘れてはいけない大切な注意点をお伝えしておきます。それは、リールのドラグシステムのことです。もし、6kgや8kgといった大型のブリが掛かった場合、足元に転がるラインはまるで意思を持った生き物のように跳ね上がり、文字通り『つ』の字を描いたロッドに沿って吹っ飛んでいきます。

 

そしてここからが問題。現在市販されている高性能なソルト対応リールのドラグを、キンキンのMAXガチ止めにセッティングしていた場合、ラインのたるみが終わり、魚のパワーに合わせてテンションが掛かった瞬間、たとえ強靭なソルトウォーター用のフックであってもサイズが小さい場合は、20lbくらいのティペットであれば負荷に耐え切れずにフックが折れてしまう場合があります。また、魚の引きに対して強すぎるドラグテンションでも針の伸びや同様のことが起こります。

 

もちろんユルユルの状態では魚を弱らせることができませんから、できることならば釣りを始められる前に、空針を使ってご使用になっているラインとフックとリールドラグのバランスを探る強度テストを行ってみることを強くお勧め致します。よくあることですが、川でトラウトを釣っていた時と比べると笑っちゃうくらい太いティペット故に、ついついドラグを締め過ぎていても「これくらいで大丈夫だろう」と、自身の感覚的な部分で判断してしまいがちです。

 

細かいところは多少ハショりますが、ボク自身色々とテストしてみて納得のいく強度だと確信できたお気に入りのフックの中で【TMC784】シリーズがあります。主に使っているのが#2/0から#10までで、フックサイズに合わせ様々なパターンを巻いています。

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この【TMC784】シリーズでは、バレに対する懸念材料の多くを占める針の剛性(伸び・ヨレ・折れ)に関して言うならばその強度は言うまでもなく、一方では驚く程鋭いポイントが青物の硬い顎を貫くことにも長けています。また僅かに内側に向かうポイントが掛かった魚へのホールディング性能とバレへの軽減に素晴らしい効果を発揮してくれるのです。

 

ブリの中には水から上げる間際に、強烈にローリングする個体もいて、この時にバレることがままあります。ですが、ホールディング性能の高いフックを使用していることで、自ずとコチラ側のアドバンテージは高くなります。難しい状況の中でようやく掛かった大物に対して、コチラ側の落ち度でみすみす逃してしまった時ほど「たら・れば」の深い後悔がいつまでも尾を引くものですよね?(笑)そんなロストフィッシュを無くすためにも、今一度チャレンジ前のチェックをおすすめします。

 

ベッドの上で何もできずにいるうちに過ぎ去ってしまった夏を見つめ、釣りに行けないやるせなさの中で精神的にも憔悴しきっていたボクでしたが、そんな折、仲間がブリの群れへめがけて出船していき、これがまた追い打ちをかけるのでした。世間の全てから取り残されてしまったような療養期間でもありましたが、そんな生活もようやく終りを告げようとしています。日常へと戻りながらのリハビリも順調に進んでいて、初雪が降りだす頃には不安定な川辺でも歩くことが可能になることでしょう。

 

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今回ボクは体育館という恵まれた?場所での怪我だったため、チームメイトらの迅速な対応により夕張メロンほどにまで腫れ上がった足首の応急処置やその後の移動・帰宅などがスムーズに行えました。しかし、これが人里離れた奥深い幽谷であったり、長い急勾配の谷を下った先の川縁であったなら…、更にはそれがソロ釣行だったとしたならば・・・過剰なまでにデリケートになっていては釣りにはいけませんし、多少の冒険心があるからこそ釣りの面白さがあることは十分に理解しているつもりです。しかし、ボク自身、過去には30メートルくらいの崖から滑落した経験があり、その時は擦り傷と竿先の骨折だけという本当に奇跡的にラッキーだったのだと今は強く思えてくるのです。ですので、どうか皆さんも釣行の際には常に「万が一」の場合を想定した装備や行動を行ってくださいますよう、強くお願いいたします。

 

最後になりますが、自宅療養中に深く沈んだボクを事あるごとに顔を見せ、ドライシェイクよろしく、シャカシャカと浮かせ励ましてくれた友人たち、常に電話やメッセージでボクを気遣ってくれた友人たち、ボクを抱え病院に連れて行ってくれた友人たち、今回のことで常に心配してくれていた病院の先生方、この場を借りて深く深くお礼を申し上げます! が、たぶんまた釣りしてる最中に怪我します(笑)。ごめんなさい先に謝っておきます。

 

残暑厳しい季節もとうに過ぎ、これからどの街も冬支度を始める頃ですが、また何か面白いエピソードなどがありましたらお便り致します。それまでは皆様も事故とアキレス腱の断裂には十分気を付けてお過ごし下さい。

 

 


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