Fly Fishing記事 | ティムコ

小甲 芳信

Fly Fishing  プロスタッフ  小甲 芳信   カブちゃんの北の便り「秋ニジ攻略特別編」

2018.12.19

カブちゃんの北の便り「秋ニジ攻略特別編」

前略、皆様ご無沙汰しています、寒さが大のニガテで毎日凍え震えている北海道の小甲です。さて、いよいよ師走も押し迫り、真冬の到来となった北海道ですが、皆さんはいかがお過ごしだったでしょうか?もしかしたら来シーズンには北の地への釣行をご予定されていて、今からフライを巻き始めている方もいらっしゃるのではないでしょうか?SNSやその他のツールで、北海道の多くの情報が遠い街でもリアルタイムで見ることができる昨今、ご自宅のデスクに座ったままで道内のいろいろな川へと目移りしてしまうこともあるのではないでしょうか。

 

ゴージャスニジ

 

とはいえ東西南北に広い北海道、北と南では少しばかり魚の性格も変わってくる部分があります。簡単に説明しますと、季節進行の差が約一ヶ月近くある北と南ですから、春の訪れと冬の到来がもたらす気温と水温の変化の時間差が大きくなってしまうので、例えば南部の河川では、5月の中旬にはガガンボやヒラタがハッチの佳境を向かえ、自ずと渓流魚も活性化してくるのですが、北部の河川では未だに雪代が轟々と流れている時期でもあります。もちろん、各河川が源とする山々の標高や広さにも関連していることなので、一概には言えないことですが、それでもこれほどの差が生まれているのです。

 

そこに垣間見えるのは、一年の間に渓流魚が活発に動ける適正水温と水生昆虫が活発に動けるトータル期間が単純に短い北側の魚は【食べられる物を、食べられる時に、食べる】といった、本来の野生生物が持ち合わせる貪欲さがより強く見られる場合が多くあるということです。広く知られるその良い例として、北部・東部では長い冬を前に秋本番に入ると、カメムシやテントウムシなどの単一の種が多く流下している時などは「コレ!」と決めた【食べられる物】だけを選んで一日中【食べられる時】に貪り続けることがあります。

 

この時、同時に流下する他の虫を【食べられない物】として認識しているのかどうかは定かではありませんが、少なくともその瞬間に食べ続けている物が【危険ではない】と判断していると感じられます。ここら辺がマッチ・ザ・ハッチ/マッチ・ザ・ベイト的要素を強いられる要因の一つなのかもしれませんね。魚類に限らず、陸生・水棲の両昆虫類にも地域差が生まれる場合があります。

 

しかし、一方の南側の魚はというと、同時期ではまだまだ適正水温がその後も続く状態に置かれていることと、川を取り巻く全ての生き物の活動も続くことから、それなりの流下昆虫があっても魚が動かない場合があるのです。北部や東部でのライズハントゲームが佳境を迎えている最中にも関わらず、南部では水面まではなかなか浮いてこない、そんな日も多いのです。

 

このように、北と南ではエサを食べられる時間(期間)の違いが生まれることにより、それは自ずと魚の成長度合いにも関連してきます。局所的なエリアでは明らかに南部は成長が早いと実感できる場面も多々あるのです。しかし、南部が持っている最も致命的な宿命が、一般的に河川規模が小さい場合が多く、砂礫の体積や夏場の高水温などの環境プレッシャーによるダメージが顕著に現れ、加えてハード面・ソフト面、両人為的なプレッシャーによる魚の減耗も著しいのです。

 

また、南北で渓流魚の食性の変化が顕著に現れる要因の一つに、北海道を代表する地域産業による違いも挙げられます。北海道の北・東側の平野部では広大な酪農地帯が多く、それらが川と隣接していることで牛糞を好む甲虫類が群を抜いて多く生息し、当然河川へ落下し魚に食われる率も高いことが覗えます。それ故、ピーコックを用いたテレストリアルパターンなどに反応が良いシーズンが長く、日中でも常に水面付近を意識するマスが多いように思います。また、そこには、北海道東部に連なる日高山系に見られるような、広域に広がる山林(森)があることで、越冬する昆虫類(カメムシやてんとう虫等)の流下量は森の面積と比例するように思います。

 

一方、南部でも酪農業は多く営まれていますが、どちらかというと川と隣接した地域には水田や畑が広がる地域が多く、それ故、盛夏以降はグリーンやイエローカラーのフォームを用いたホッパーパターンに反応が良いタイミングが多いように感じます。また、多くのマスたちにとって川と隣接する水田がもたらす重要なエサの1つにドジョウやヒルが挙げられます。温暖な南部の畦を覗いたことがある方ならばご存知かと思いますが、無数に蠢くヒルの塊をそこかしこで観察することができるほど生息しています。

 

しかし、しかしです。

 

おおよその傾向はあるものの、そんな考察をよそに掟破りとも言うべく、ここで皆さんへ、南部に於けるボクのとっておきの釣りをご紹介したいと思います。今までは一部の友人と楽しんできた釣り方で、函館近郊の川では、これまでも幾度となく大型のニジマスと出会うことができたとっておきの釣り方です。

 

この釣りに関しては、凡そ15年近くにまでさかのぼります。当時ボクは函館近郊にある小さな集落に暮らしていました。そしてその街の傍を流れる川で、夏の間中アユ釣りに没頭していたのです。やがて友釣りで忙しかった夏も終わり、秋ともなると、多くの鮎が産卵を終えて命を次の世代へと繋ぎ“落ち鮎”となり、ひと塊となった群れの中から一匹、また一匹と、真っ黒に変色した個体が、次々と押し流されていくいのでした。

 

死に際の落ち鮎

 

そんなご馳走が目の前を通過していくのを、大型ニジマスが黙って見過ごすハズはありませんよね?ただ、落ち鮎と聞いても、北海道南部の河川にしか生息していない鮎に関しては、本州ほど鮎釣り文化が広がっていない北海道の釣り人にとっては少し馴染みが薄く、魚体のイメージがピンと来ないかもしれません。鮎を思い浮かべる時、おおよそ、「オリーブグリーンの背中に白いお腹で、黄色い斑点が横にある・・・」ぐらいのイメージではないでしょうか?

 

ですが、秋の落ち鮎は驚くほど婚姻色が浮き上がり、まるでホッチャレの鮭を思わせるほどの色合いへと変貌を遂げています。画像の掌の中の鮎は、まだ僅かに動いていたのですが、彼らの生涯を閉じる間際では、ここまで黒くなってしまうのです。地元の老師がよく仰っていた「秋の釣りじゃ、海でも川でも死んだアユっこが一番いいエサなんだ」を思い出し、当時は仲間が上流部でカメムシドライに興じていたちょうどそのタイミングで、ボク一人、下流へと車を走らせていました。もちろん狙うは“落ち鮎で狙う大型ニジマス”です。

 

果敢に鮎パターンをひったくったニジマス

 

とは言っても、コレといった特別なシステムやフライパターンで行うものではなくて、5番~7番ぐらいのロッドを使い、やや長めの大ぶりに巻いたダブルバニー・ゾンカー(カラーは断然ダークオリーブ&ブラック!)やシンプルなスードヘアーストリーマーをアウトリガーやルースニングで流すというもの。(道南の落ち鮎は個体差が大きくて、尺鮎などは殆ど居ませんが15センチ~25センチぐらいがアベレージです)。

 

ブラック&オリーブ・ストリーマー

 

釣り始めた当初は色々と考えてみたものの、エサとしてイミテートする対象が“死んだ魚”である以上、スイングやリトリーブの釣りが不向きだと思ったからです。スペントスピナーよろしくほぼ動きが無くなってしまった鮎は、水中をデッドドリフトしながら流下していきますから、やはりルースニングが理に叶っていると言えるのではないでしょうか?

 

そしてこの時、水分を多く含んだラビットスキン(ゾンカー)と重めのガン玉、更にはやや大きめのインジケーターをテンポよくポイントへ打ち込むのには、LOOP社のクロスS1の10ft7inやEVOTEC CASTの11ftなんかの軽い動作で力強いバットパワーがシステム全体を運んでくれるようなロッドが最適で、フライのスムーズな打ち返しに役立ってくれます。

 

シンキングラインでドリフトさせた時のニジマス

 

そしてただ一つ、この釣りのコツといえば、敢えてナチュラルドリフトさせるよりも、僅かに川の流れよりも遅く流すこと。技術的には、上流側へラインを置いて水流に引っ掛かりながら流すという感じです。そうすることにより、シンカーを起点にゾンカーはそのシルエットを崩すことなく泳ぎ続けてくれます。このような動作を行う上では、やはり上記の10ftを少し超えるぐらいの長さのロッドがとても重宝するのです。

 

そんな感じでポイントの流れ込み、流芯がやや弱まるあたりや沈んだ倒木、コンクリートブロックなどの脇を通すと「待ってました!」とばかりに銀色の丸太ん棒が襲いかかってくるのです。それまでも多くの落ち鮎を飽食してきた魚ですから、派手なジャンプなどできなくなるほどに肥え太り、まるで極太のブラウンを相手にしているかのような重厚でトルクフルなパワーに圧倒されてしまいます。

 

そんな釣りを満喫していた頃に出会った地元の若い友人へこっそり教えたところ、やはり良い釣りを展開できたようでした。もちろんこんな釣り方は道内では鮎の生息圏である道南でしか展開できない手法ですし、そのシーンも1年の中のほんの僅かなタイミング(10月)でしかありません。ですが、先にも述べたように、北海道南西部の一部のニジマスは落ち鮎を飽食することによって明らかに早い成長率を見せるのです。

 

以上、各地域の特性を駆け足で説明してみましたが、これまで書いたことを鑑みると、やはりシーズンが短いとはいえ広大なエリアを有する北海道のそれぞれの地域の河川には、地域性が織り成すロマンが広がっていると言えるのではないでしょうか?

 

かなりスリム化して書きましたが、実はまだまだ補足したいことも多くあり、それはいつかのお便りであらためてお伝えしたいと思います。また、これはあくまでボクの個人的な体験をもとにお伝えしていることなので、南部の山上湖であったり、北部の平野部の湧水であったりなど、環境と状況が変われば、そこに住む魚の状態も大きく変わるということとご了承下さい。

 

北海道に生まれ育ち、東西南北様々な土地へ釣りに出向きましたが、それでもボクにはまだまだ知らないことばかりのフロンティアである北海道。そのロコでコアな釣りを探求する旅は、これからもずっと続いていきたいと思っています。そしてそこから何かの新しい発見がありましたら、また皆さんへお便りしたいと思います。

 

それでは。

 

 


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