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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「2019海アメ」

2019.05.23

カブちゃんの北の便り「2019海アメ」

こちら北海道函館ではGWの真最中に桜前線が通過した頃から、ようやく暖かい春の日差しに包まれてきました。昨年12月より大変ご無沙汰しておりました、北海道の小甲です。

 

今年のボクは、敢えて毎年の冬の海アメマス釣り場であるホーム松前半島を離れ、新たなポイント開拓へと走っていました。しかし、幾多の有名無名ポイントであっても、自分の理想とするような釣りが展開出来る場所とはなかなか無いものですね。例えば、スカッドが多数見られても水深が浅過ぎて魚が入ってこられないような沢の流れ込みであったり、サケ稚魚が確認できてもキツイ岩礁帯によってアプローチがままならなかったりと、思うような結果を出せずにいました。

 

そんななか横浜の友人が初春の北海道へと遊びに来てくれ、4月の島牧海岸でのアメマスを堪能してきたのでその様子をご報告させていただきます。当日は正午を前に強い西の風が吹き抜けていて、決して良い状況ではなかったのですが、それでもそれぞれが何とか魚の顔を見ることができました。当初はサクラマスが頻繁に回遊してくると言われている有名ポイントを巡る予定でしたが、行き交う地元の方々がサクラマスからの反応が殆ど見られないとのことで、急遽アメマスにシフトチェンジし、入り組んだ磯場へと足を運んだのです。

 

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なぜなら、もちろん殆どの磯場の周りでもサクラマスの回遊が見られることや、足元から急深になっていることなどから、フライでの射程圏内にサクラマスが入ってくることも十分に考えられたからです。そんな理由から移動した先で、横浜の友人が幸先よく良型の海アメ65cmを上げてくれました。この魚を釣った際に、実は『カブちゃんのとっておき!』とも言えるお得なフライの効果があったのですが、それは、次のお便りで詳しくお伝えしたいと思っています。

 

それから昼食をはさみ次のポイントへ向かったところ、どうも怪しい雰囲気がムンムンの沢の流れ込みがあるではないですか!遠浅の岩盤が遠くまで広がる浜辺のサイドエッジになり、深い外海との接続部分であり、またヒザ上から腰ぐらいの水深で広く海藻が生い茂るなど、アメマスが潜むには好都合な立地条件が揃っていて、ほどよく点在する大小の岩が打ち寄せる波による不規則な潮流を作り上げているポイントです。このようなポイントにアメマス達が長く居着かないワケがありません。もはや見た感じだけでも『リーチ・一発・ツモ・メン・タン・ピン・ドラ1』の跳満コースです。

 

もうポイントの傍に立っただけで魚の匂いがしてくるような光景に、誰もフライやルアーを打っていないことが不思議なくらい、ボクにとっては超ゴージャスなスィートスポットに見えていました。いえ、一見して見渡す限りの広大で極以上のポイントが広がる島牧海岸ですから、このようなある種のセコ場所的なポイントなど、誰の目にも止まらないのかもしれません。

 

この時、足元には近隣にある河川から旅立ってきたであろう鮭の稚魚達が、無数に泳ぎ回っていました。もっともサケ稚魚を意識した釣りでは、何も河口付近だけがサケ稚魚パターンが有効というわけではなくて、海へ入ったサケ稚魚達はしばらくの間河口に隣接する海岸線に留まり、外洋へと旅立つための魚体を作り上げていくのです。そして、シケや海流によって河口から大きく離れた浜辺にも流れてくることがままあるのです。

 

そんな状況でしたから、もう迷うことなど何もなくフライボックスからリードとドロッパー共に鮭チーフライに結び変えます。ここで敢えてタンカラーの鮭チーとダークオリーブカラーの両極端なカラーの鮭チーを結ぶことで魚の反応を探ってみます。この手のフライを巻くのが苦手な方は、『ティムコ・海アメドリフター』などでも十分な釣果を望めると思いますし、ボク自身、過去には手持ちの鮭チーフライが無くなって、シルバーマーチブラウンとブラックノーズディスで対応した経験もあるくらいです。(北海道立サケマス孵化場で飼育された大型の稚魚ではなくて、自然再生産した野性のサケ稚魚サイズです)。

 

・・・ここで、ちょっぴりゲストの事が気になり出していて、間違いなく魚が入っているであろうポイントを前に、先にガイドがとっとと釣っちゃマズイような気がしてきたんですが、幸か不幸か呼び戻すにはあまりに遠い所までズンズンと進んで行ってしまっていたのでした。まぁ、ここに必ず魚が居るとは限ったワケではありませんから「釣れたら呼ぼうか?」ぐらいの気持ちでいたんです。

 

で、いそいそとラインを引き出し、手前5メートル程の距離から探っていくと「待ってました!」とばかりに左右から魚雷のように2匹のアメマスがフライ目掛けて突進してきます。どちらも膝上ほどの水深に居るには似つかわしくないような魚体は、50cmを超えていました。こんな手前の脇役的なポイントの魚が50cmを超えているのだから、果たして一番の核心ポイントではどれくらいの魚が潜んでいるのか・・・自分でフライを打ち込みたい衝動をグッと抑え、急いで友人へ電話を入れます。

 

この日、友人が使っていたタックルとシステムは:

ロッド:クロスS1 8132-6MF  8番ダブルハンド
ライン:OH&DダブルハンドチェンジャブルS1S2
ランニングライン:フローティング.031

 

足元から拾い釣るのであれば、本来はクロスS1のスイッチでインターミディエイトラインでも十分なポイントの広さでしたが、この日の強い西風や核心部から後方の深場へと続く奥まったエリアにフライを届ける場合、このシステムであればブレることなくピンスポットを攻められるのでかえって好都合でした。

 

足早にたどり着いた友人が、息も絶え絶えに緊張しながらも覗き込んだポイントを前に「えっ!?こんな所に???」といった戸惑いの表情を隠しきれない様子が見て取れます。事実、竿先でボクが掛けた2匹の魚の居場所を示すと驚きとも戸惑いともつかない声で「ホントですか?・・・」と。急かすようにフライの落とす場所、フライが見切られないよう着水と同時にリトリーブしなければならないこと、ポイントを荒らさないように掛けたらガチ止めゴリ巻きで半ば強引に魚を寄せなければならないことなどを伝え、傍らで見守ります。

 

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彼が織り成すアンダーハンドキャストの見事なターンオーバーと、魚を怯えさせないように敢えて低いポジションでループを作るその技に、今度はこちら側が驚きと戸惑いにも似た声が漏れてしまいます。強風の中でも静かなラインの着水インパクト(←コレ、スゴク大事!!)のお陰で、思い描いていた場所から次々と50cm前後のアメマスがフライへと襲い掛かります。

 

そしていよいよ核心部。すでに4~5匹も釣ったことで友人もコツを掴んだのでしょう、自信を持ってキャスティング動作へと入ります。こんな時には、やはりムダが無く、少ない動作でフライをポイントへ届けるにはアンダーハンドキャスティングは最大の武器になるのだと思い知らされます。そしてフライが着水してリトリーブ・・・

 

「ドーン!!」

 

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来ました、来ました! やはりいたんですね、番長クラスが! トルクフルなアメマスのパワーがいつまでもロッドを曲げています。見事な65cmもあるアメマス。昨年の北海道釣行では、まともな魚に恵まれなかった友人の顔が自然とほころんでいます。そんな1日を終え、温泉に浸かりながら、いつまでもアメマス達の話題は尽きませんでした。しかし、いつの世も楽しい釣行はあっという間に過ぎ去ってしまうもの。後ろ髪を引かれる思いで泣く泣く皆へ別れを告げ、一路函館へと車を走らせたのでした。

 

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さて、次のお便りでは、冒頭で記した『カブちゃんのとっておき!』を詳しく説明してみたいと思います。それでは取り急ぎ、今回はご報告まで。

 

 


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