「100本ほど使って今も残しているベストメンバー」
大野龍美(おおの・たつみ)
1970年生まれ。東京都足立区出身、在住。トップウォーターを愛するフローターフィッシャーマン。茨城と千葉のフィールドに通い、年に2回八郎潟や琵琶湖に遠征する。2014年に釣具店「Fishing Fool grand Pa!」を開業。最愛の「フェンウィック・ボロンX-953」のアクションを強靭なオールソリッドカーボンで再現したオリジナルベイトロッド「ロバストRSC-53ML」を製作販売。

●フィッシングフール・グランパ
(Fishing Fool grand Pa!)
営業:13時~21時(日祝20時まで。水曜休)
住所:東京都足立区大谷田5-22-11
☎:03-6802-6176
フェンウィックへの憧れ

フェンウィックと出会ったのは70年代の後半、小学3年か4年のとき。当時、大野少年はルアーフィッシングに強烈な魅力を感じ、 自転車で都内から茨城県の牛久沼まで片道40kmを遠征するほどバスという魚を求めていた。そのころ父が買ってきたのが『ブラックバス釣りの楽しみ方』という本だった。

フェンウィックを知ったのは小学生のときに父親が買ってくれた1冊の本だった。昭和53年(1978年)7月初版発行。当時の本は読みすぎてボロボロになってしまった。写真は1998年発行の改訂版。

『ブラックバス釣りの楽しみ方』
著者:則弘祐・山田周治
発行:スポーツザウルス

大野「白黒写真なので色がわからないまま、シルエットや佇まいに憧れたのがフェンウィックのロッドだったんですよ。釣具店で実物を見て質感や色にさらに憧れたけれど、子どもが買えるものではなかったですよ」

白黒写真のフェンウィック。その佇まいに憧れた。

国産のロッドとリールでハードルアーの釣りに励むなか、中学生のときに相模湖で米軍キャンプの関係者らしき外国人アングラーに遭遇する。

大野「オカッパリでホッテントットを沖に遠投してたら『それじゃ釣れないぞ』と英語で話しかけてきたんですよ。その人は自分のボックスから出したルアーを僕のラインに結ぶと岸寄りに投げて水面でアクションさせました。それにガバッと出たんですよ(ミスバイト)。『お前もやってみろ』とタックルを返されたので、同じように投げて動かすとガバッと出た。初めてトップウォーターで釣ったバスは35cmくらいだったけど、でかく感じました。ルアーはヘルレイザー(当時ティムコが販売)で、プレゼントしてもらいました。トップで釣ったし記念のルアーをもらえたしラッキーと思って家に帰ってから、日本限定カラーのホッテントットが外人のボックスに入ったままだったと気づいたわけです。とにかくトップウォーターの釣りは衝撃でした」。

ヘルレイザー14g。色はティムコ・ジャパンカラーの69T。1983年、中学1年の大野少年は相模湖に行き、外人が結んだこのルアーを投げて初めてトップウォーターで釣った。
最愛のボロンX953

大野さんがフェンウィックを手に入れたのは二十歳を過ぎて社会人として働き始めてからのことだ(90年ごろ)。

大野「初めて買ったのは当時すでにオールドタックルだったランカースティック2054だったと思います。それを手にしたとたんガ キのころからの憧れがドバドバッと吹き出して……、フェンウィック、アンバサダー、ヘドンを買って釣りに行き続けて今に至ってます。気づいたらオールドフェンウィックは触ったことのない品番はないというくらいほぼ全機種を入手して100本ほど使ってきました。僕はコレクターではないので、実際に使って自分の釣り、フローターでのトップウォーターに合うロッドだけ残しています」。

大野さんが所有するベストメンバー
①フェンウィック・ボロンX960
②フェンウィック・モデルCA573(3パワーのグラスロッド。70年代のイエローブランクで組んだロッド)
③フェンウィック・ブラックホークBS-53M(5ft3inのカーボンロッド)
④フェンウィック・ランカースティック2053(6ガイドのグラスロッド。とてつもない数のバスを釣らせてもらったロッド)
⑤フェンウィック・FAVプロトタイプ(アラミドヴェール使用の試作モデル)
⑥フェンウィック・ボロンX953MJ(5ft3in。スピニングをベイトロッドに改造)
⑦ロバストRSC-53ML(愛するボロンX953MJのパワーとアクションをイメージして大野さんが製作した5ft3inのオールソリッドカーボンロッド。グリップはフェンウィックのブラックストレートを装着)

大野さんが今も所有しているのは、自分の手の延長になる相棒といえるベストメンバーたち。そのなかでも最愛の1本がボロンX953だ。長さ5ft3in、硬めで張りのあるスピニングロッドだった。

ボロンX953MJ/バッシングスピン
1984年モデルを90年代に購入(ボロンXシリーズは1981年に登場)。スピニングロッドのガイドとグリップを付け替えてベイトロッド化した最愛の1本。1984年のカタログに掲載されたボロンXに合わせてジャパングリップを装着。スペック表記は長さ5ft3in、ルアー重量3.5~14g、ライン6~15Lb。「ルアー重量は14gまでと表示されてますが1oz(28g)級のルアーが快適に使えます。いいロッドは表示の3倍くらいの重さまで使えます」。
ガイドはチタンフレームでSiCリングのオーシャンガイドに交換。大野さんはPE40Lbにリーダーとしてナイロン40Lbをロッド1本分の長さ結んで、トップウォータープラグを使っている。結び目がごついので屈強なガイドにしているのだ。

大野「ブランクスを触った瞬間、スピニングにしておくのはもったいないと直感して自分でベイトロッド化しました。それが僕のフェンウィックのなかでナンバーワンになりました。ショートレングスでパツンと張りがありつつキャスト時はしっかり曲がる。オーバーハング奥のピンスポットに低弾道キャストがビシビシ決まる攻撃的なロッドです。キャストフィールもルアーの操作感も僕には最高です。少年時代の憧れから始まり、使ったときの充実感とモチベーションをかき立ててくれる……自分のなかではロッドといえばフェンウィックですね」。