戦友。ランカースティックPLC55
クレイジーケイ(下村 慶)
1967年生まれ。兵庫県神戸市出身、在住。オールドタックルを愛するジャパンフィッシングルアーコレクターズクラブ(JFLCC)の局長補佐として各地のイベントを運営。クレイジークローラーの世界的コレクター。HEDDON SPOOK最狂軍団の総帥。トップウォーターを関西各地のダム湖や琵琶湖で楽しむほか、東京湾ボートシーバス、日光中禅寺湖や北海道のトラウトを求めて遠征する。小中学生時代は野球をしていた熱き阪神タイガーズファン。身長187cmでモヒカンを立てれば2mに達する。着用のジャンパーはアメリカの古着屋で発掘したもの。
三種の神器

小学生のとき『釣りキチ三平』を読んでフナやコイ釣りをしていた少年は、1980年、中学1年でバス釣りを始めて電車で東播の野池に通っていた。雑誌で鷲のマークのロッドを見た少年は釣具店に走り現物に触れる。

「これがフェンウィックか〜!かっこええなぁ〜!」

買うことはできないが、そのロッドは少年のなかで憧れの存在として生き続けた。

10代後半はバイク、車、バンドにのめり込んで釣りから離れていたが、1990年、23歳のときにバス釣りを再開。90年代後半に入るとトップウォーターオンリーになり、憧れのオールドフェンウィックを海外オークションなどで買い集めてバスを釣りまくった。1997年ごろにはテキサスやフロリダに行き、リサイクルショップを巡って、ロッド、リール、ルアーを目利きするまでになっていたという。

下村「そのころeBayで入手したのがグラスのランカースティックPLC55です。振った瞬間の衝撃は今でも覚えてます。ベロベロでもガチガチでもない、自分にとって最高のアクションやったんですよ。今でも現役で使っている戦友です。僕には『三種の神器』というものがあって、ロッドはフェンウィック、リールはアブ、ルアーはヘドンです。なぜかというとかっこええから。グラスロッドに金属グリップとでかいリールつけたら重いけど、この道具たちとは死ぬまで一緒ですよ(笑)」。

「grizzly fenwick」のロゴが入ったFL721。1954年、フェンウィック創業時に使用されていたグリズリー社のブランクによるグラスのフライロッド。70年ほど昔に作られたロッドを北海道のトラウト釣りに使っている。
ランカースティックFC38。6ftのグラスロッド。
ランカースティックFC38のシリアルナンバー「H93600」。「H」は1967年8月~1968年7月に製造されたことを示す。クレイジーケイさんが誕生した1967年11月と同時期に製造された、自分と同年齢のロッド。
ランカースティックFC60のシリアルナンバー「C4860」。「C」は1962年8月~1963年7月に製造されたことを示す。「僕が所有するフェンウィックで一番古いロッドで、バット部の飾り巻きが細いのが古いモデルの特徴です。シリアルナンバーが4ケタなので製造数が少なかったと思います」。
ランカースティックPLC55。2ピース、5ft6inのグラスロッド。ルアー重量1/2~1oz、ライン8~15Lb。シリアルナンバーがKで始まる1970年8月~1971年7月製造モデル。97年ごろ入手した最愛のロッドにして現役の戦友。予備としてもう1本所有している。このロッドで釣った魚は以下のとおり。ラージマウスバス、スモールマウスバス、ライギョ、ナマズ、ストライパー、ブルーギル、ブラウントラウト、レインボートラウト、アメマス、サクラマス、エゾイワナ、ヤマトイワナ、ニッコウイワナ、ヤマメ、アマゴ、シーバス、ハマチ、サワラ、サバ、ミシシッピー水系のパイク。北海道のイトウはトップに出たけどキャッチ。
ピラミッド状に積み上げられたボックス。下に積まれたボックスや、ロッドを収納した奥のクローゼットにはアクセス不可能。2019年6月から4年以上この状態が続いている。クレイジーケイさんの部屋は、布団1枚敷くスペース以外はすべて釣り道具。
両開きのボックスに収納されたクレイジークローラー。「プラスチックのオールドと呼ばれる1984年までのヘドン期のものは、たぶん僕が世界一持ってます。300本くらいあるんちゃうかな」。
2023年秋、東京湾のボートシーバス。トップウォーターでシーバスを掛けて曲がるPLC-55。「2ピースのグラスロッドが、ええベンド出してミシミシッと鳴いてました。ドラグを調節してるのでサオが折れることはないけどガイドが跳ぶんちゃうかなと思いました。でかい魚掛けてグラスが粘るときのドキドキハラハラがたまらんのですよ(笑)」。
PLC55のガイド。過酷に使いつつ、オリジナルの状態を大切にしたいのでパーツは交換せずにガイドの取付け部分だけをコーティングで補強している。
PLC55でボートシーバスをするときに組み合わせたアイテム。セミダブルハンドのチャンピオングリップ。アンバサダー5600C赤ベロ。ラインはPEライン5号、リーダーはナイロン50Lbを1.5m。ルアーは上から、コハダペンシル/18cm、95g、発泡(ハウリンウルフ)、マグナムザラスプーク/18cm、72g、木製(ヘドン)、ビッグチャグ/11cm、45g(ヘドン)。ルアーを背負ってから「よいしょー!」とゆっくり前に押し出すキャストをすればPLC55は重いルアーも投げられる。
eBayで入手した70~80年代のワッペン。鷲の描き方に違いがあり、古いタイプは劇画チックで羽の先が広がっている(中段の右と中央)。時を経て鷲がデフォルメされて洗練されたデザインになっていく