カンボジア出張ついでにタイで怪魚フィッシング -アラパイマ・バラムンディ-

Written by @Shake-PMA

カンボジアのプロジェクトに関わることが決まってから、実に30年ぶりに釣りを再開した。
カンボジアに行けば、簡単にネイティブの怪魚を釣ることができるだろうと思っていたが、実際は出張ついでにそんなに簡単に釣れるものではないという現実を痛感させられた。

日本からカンボジアへの直行便がないため、タイのスワンナプーム国際空港でトランジットすることになる。
2度目の渡航を経て、タイには釣り堀や養殖池での怪魚フィッシングが盛んであることを知った。
昨年は思いがけずバラマンディの大爆釣を味わってしまったため、今回は念願のアラパイマにチャレンジすることに決めた。
しかし、アラパイマは釣れないこともあると聞いていたので、初日はアラパイマ、翌日はバラマンディというプランで釣行を組んでみた。

昨年のバラマンディ



アラパイマ編

カンボジアでのプロジェクト期間中は、現地カウンターパートや大学教授と常に行動を共にしていた。
いわば大名旅行。
私の仕事以外は、ただニコニコしているだけで物事が進んでいったが、タイでは完全に一人旅になる。

7月13日、夜便でプノンペンからバンコク・スワンナプーム国際空港へ。
前回は空港からエアポートレールリンクとBTSスクンビット線を乗り継いでホテルに行ったが、今回は荷物が多く、カンボジア出張の疲れもあって、23時近い時間帯だったこともありタクシーを選択。

深夜のスワンナブーム



海外旅行の革命、それが配車アプリ。目的地を入力するだけで、近くのタクシーがやって来て、アプリ上にルートと料金が表示される。
海外旅行の最大の不安だった“乗車トラブル”が、ほぼ消えたと言ってもいい。
英語も現地語も話せない54歳のオジサンでも、気兼ねなく旅ができる時代になった。

ホテルまでは約400バーツ(日本円で2,000円ほど)。
日本より安い。
チェックインもだいぶ慣れてきた。
フロントで「チェックイン」とだけ言ってパスポートを出す。
何か話しかけられても、ニッコリ笑って翻訳アプリを立ち上げれば事足りる。
スマートではないが、これで何とかなっている。

チェックインを済ませたら、まずはビール。
翻訳アプリで「荷物を預けて、買い物してくる」と伝え、近くのコンビニへ。
ところが、ビールのショーケースにはシャッターが下りている。

タイではアルコールの販売時間が決まっていて、11:00~14:00、17:00~24:00のみ。
現在、24時06分。…完全にアウト。タイミング悪すぎ。

しょんぼりして戻り、フロントで「ビール買えなかった」と伝えると、「ラウンジで飲めるよ」とのこと。
先に言ってほしかったけど、ありがたい。SINGHAの500ml缶を2本飲んで、ようやく正気に戻る。

部屋に戻ると、今度は歯ブラシがない。
フロントに電話して「ノー・トゥースブラシ。ルームナンバー306」と伝えると、すぐに持ってきてくれた。
歯を磨きながらトイレに座ろうとすると、足元がビチャビチャ。
もう深夜なので、クレームは明日に回してそのまま寝た。疲れていたのだろう、すぐ寝落ちした。

翌7月14日は一日オフ。カンボジアでは7月3日から13日まで、ほぼ休みなしだったので、今日はゆっくり釣りの準備でもしてホテルで過ごすつもり。

朝食後、朝ビールを買いに昨日のコンビニへ行くと、またもやショーケースにシャッター。
時刻は朝7時。当然、販売時間外。
仕方ないので早めに釣具の整理を済ませて、ホテルのプールへ。

思いのほか綺麗で、しかも貸切状態。
30mほどある本格的なプールで、南国の朝日を浴びながら泳ぐのは最高だった。


プールから上がり、ひと汗かいたのでビールでも飲みながらランチにしようとルームサービスのメニューを見ると、なぜかタイカレーがない!
泳ぎながら「昼はタイカレーだな」と決めていたのに。近くに良さげなレストランがないかグーグルマップで探すが、徒歩圏内には見当たらない。
BTSで行くと40分ほどかかる。そこまで我慢できない。

すると「ガパオライスがおすすめ」という食堂がヒットしたので、急遽そちらに決定。
配車アプリでバイクタクシーを初体験。
旅慣れたような気分にちょっとだけ浸るが、現実にはバイクがかなり飛ばす。渋滞をすり抜けるスリルに、しばらくは手に汗。

たどり着いたのは、路地裏の小さな食堂。メニューにはガパオしかないが、これが大当たり。
ビールを頼むと「店にはないけど買ってくるよ」と、兄ちゃんがバイクでSINGHAを調達してくれた。こういうのが旅の醍醐味だ。

ガパオは、自分にドハマり。旨い。
居心地もよく、日本人のオジサンが一人でいても全く浮かない。


帰り道、今度は別の交通手段を試そうと、グーグルマップを見ながら最寄り駅を探す。
歩いていくと、道中にマーケットが。
地元の雰囲気を味わいながら抜けていくと、目的地に到着――と思いきや、駅ではなくバス停。
Googleが“駅”と表示していたのはバス停だった。

ここまで来たので、路線バスにもチャレンジしてみる。
バス停にいたご婦人に翻訳アプリと地図を見せて、「この場所に行きたい」と伝えると、185番のバスを指差してくれた。来たバスの添乗員に地図を見せると「行ける」とのことなので乗車。

しばらくして、添乗員が険しい顔で「※〇▽✕★ポリス!※〇▽✕★」と怒鳴る。
どうやら自分が座っていた席が警察専用なのかと思い、慌てて後方に移動。
……が、それでもダメだったらしく、次のバス停で「降りろ!」と。
「WHY?」と聞き返したが、バスは私を置いて去っていった。ちょっとしたトラブルだけど、これも旅の一部。


次に来たバスに無事乗車し、ホテルへ戻る。
冷や汗をかいたのでコンビニに寄ると、またもやアルコール販売時間を6分オーバー…。
しょんぼりしながらプールへ直行。泳ぎ直して、サウナでひと汗かく。

そう、ビールを旨く飲むために。

夕食もまたガパオ。ガパオはホテル近くの店でありつけた。
ビールは店に置いてなかったけれど、隣のコンビニで買ってきていいよとのこと。
今度は時間内、無事にSINGHAを確保。
ガパオとビールがあれば、もう何もいらない。


釣り本番。ついにアラパイマが来た
7月15日、アラパイマ釣行当日。朝6時半にホテルを出発し、チャーターしたタクシーで釣り堀へ向かう。

7時半頃、釣り堀から「まだ来ないのか」とメッセージが届く。どうやら朝イチが一番のチャンスタイムらしい。
昨年のバラマンディ釣行では午後に活性が上がったので、今回ものんびり構えていたが、完全に裏目。
オープン同時に来ればよかった…12時間チャーターの料金をケチったことを後悔。

釣り堀に到着すると、「今日はボス一人だからラッキーだよ」と言われ、なんだかいい予感。
持参したルアーを見せると「これでやれ」とおすすめされ、釣り開始。

10投目あたり。ボトムを取って、ワンアクション入れたその瞬間――


ガツン!


強烈なアタリ。

ドラグが鳴って、水面が炸裂。

ラインは出されるが、今回の「ビスタ」はその引きにも余裕を見せる。
重さはかつて西表で釣ったGT(ロウニンアジ)27kgには及ばないだろうが、全長は間違いなく人生最大。推定150cm・15kgのアラパイマ!

念願だった“入水写真”も撮れて大満足。こんな出張をこれからも作って行きたい。


その後も粘ったが、さらに大きなアラパイマは途中でフックアウト。

それでも、自分の足で異国を移動し、初めての釣り場で怪魚と出会えたことに、何とも言えぬ充実感があった。

旅は慣れれば慣れるほど、ちょっとしたトラブルも「味」になる。
そして、釣りもまた、旅と同じくらい自由で、深い。

次はまた、どこの国でどんな魚に出会えるだろうか。
その時もまた、「ビスタ」を持って行こう。

次回は、バラマンディ編です。