2025年10月03日
皆様、大変ご無沙汰してます。函館のコカブです。
今年の夏、こちら北海道も各地で“記録的”といえる猛暑となりました。また北海道南部では、6月以降、お盆を過ぎるまでまとまった降雨がなく、川は酷い渇水となり、近隣のダムや湖では過去に類を見ないほどの低水位となったのです。
そんな状況でしたから、川へ向かえばアブ&ブユ・トルネードに囲まれるだけで目立った釣果にも恵まれませんでした。毎週そんなでしたから、ヤル気が溶けてダダ堕ちとなったボクは、クーラーの前で冷えたコーラをグビグビ飲むだけの毎日を過ごしていました。
そんな夏も過ぎ去り、今ではようやく朝晩の気温がTシャツだけでは寒く感じるほど秋めいてきました。釣り人の皆さんが、待ちに待った季節の到来ですね。
『ビギナー必見、落ちアユで一発逆転!』
さて、ここでビギナーの方必見!いつも立派な魚体のニジマスなんかを釣ってらっしゃるエキスパートな諸先輩らと肩を並べられるよう、次のステップへ登ろうではありませんか!!今回は、そんなステップアップをお手伝いするお便りです。
以前もこのティムコ・ホームページの『カブちゃんの北の便り』シリーズで書いたのですが、北海道の南部では、秋に入ると産卵を終えたアユが生命を全うし、力尽きて川の流れに押し流されていきます。
それらを心待ちにしているニジマスたちは、もう泳ぐ力もなくなり死に体となったアユを次々と飽食し、あっという間に少し暴力的とも言えるようなプロポーションをまとい始めるのです。
この落ちアユを模した釣り、以前は少し大ぶりに巻いたダークオリーブ&ホワイトを組み合わせたゾンカーやバニーリーチで十分釣りになっていました。他にも、スードヘアーを使ったストリーマーも使ったけれどナチュラルに流すとシルエットが崩れるので最後はやはりタイイングの手軽さも手伝って、重くて投げ難いけれどゾンカーに落ち着きました。
ですが、やはりゾンカーだけでは万能とはいかず、魚は見えているのに度々食ってこないシーンもありました。言うなれば、ヒゲナガのスーパーハッチの中で6番のスティミレイターで拾えるライズだけを狙うような感じでした。とは言え、そんな単純な攻め方であっても1日に大型がポンポンと面白いように釣れるとなれば、反応の良い魚だけを拾い釣るようなスタイルになっても仕方ありませんよね?(苦笑)
『北海道のアユ』
ところで北海道南西部、各河川の地着きのアユですが、大まかなところで言えば、秋の体長は約12cmぐらいから最大で28cmを超えて尺アユに迫るモノさえいます(河川毎に違いがあります)。平均的なサイズだと15cmから25cmぐらいでしょうか。
アユは、成魚であっても体長にバラ付きがあるおかげで、落ちアユをイミテーションする時にはフライのサイズにさほど神経質にならなくても済むようです。
最近はすっかりご無沙汰なのですが、以前アユ釣りで名を馳せた川の畔に住んでいた頃、数シーズンだけ『鮎の友釣り』を楽しんでいました。その際、地元“アユ釣りフリーク”の老師やメンバーの方々から本当に多くのことを学ばせて頂きました。そこには、フライフィッシングに通じる事象も数多くあり、特にフライのドリフトとアユの生態に関することではとても勉強させて頂きました。
そんな時分、宴会の席で程好く酔った老師が仰っていたことに下記のような興味深いモノなどもありました。
「秋が濃ぐなったら浜さ行ってアユば投げれば、なまらヒラメ食ってくるんだど」(晩秋になったら河口付近の海岸へ行って鮎をエサにして釣りをすれば、驚くほどヒラメが釣れるんだぞ)
「昔はスズキもいだったんだで、こごらでよぐ食ってきたもんだ。」(昔はスズキもいたんだよ。ここでもよく釣れてきたもんなんだ)
なんてお話も聞かせて頂き、つい釣欲が熱くなったものでした。
『落ちアユの釣りっていつから?』
ところで、落ちアユの釣りが成立し始めるのは、9月の中旬からと思って頂いて良いと思います。そして、肌寒さが際立つ10月の初め頃、アユの産卵と流下は佳境を迎えます。ファーストスポーニング(初期産卵)は9月中旬には始まるようですが、河川毎の個性があるのかそれともその年の気温によるものなのか、9月の産卵と流下は極小規模がダラダラと続くように感じています。
この時、特に気を付けて頂きたいのは、プールエンドから続くチャラ瀬などにサギやカモメなどの水辺の鳥類が集まっていることです。それはいよいよ落ちアユの流下が始まったサインのようなものなのです。これは大物ニジマスを釣る大チャンスの到来を告げているのです。そしてこのシーズン初期の“小規模の流下”ってのが最初にして最大のボーナスチャンスになるのです。
一度落ちアユにスイッチを押されたニジマスは、とにかく“ソレっぽければ”ゾンカーでも釣れるぐらいフライを選ばず『荒喰い』となる瞬間があるのです。今まで目の前をスイスイと泳いでいた美味しそうなあのアユが、今まさに溺れた状態で口元まで運ばれてくるのですから。これまで必死に食べ続けたメイフライ数百匹のカロリーを軽々と凌ぐほどのご馳走が容易く食べられる状態になるのです。
『シーズン後期は少しハードルが上がり気味?』
今年北海道では、全体的にアユの遡上量が多く、そんな年はチャンスが長く続くのですが、シーズンの後期になるにつれて常にはち切れんばかりのお腹を抱え満腹状態が続いているニジマスらは、食い渋り状態に入ります。
こうなると、虫と違い消化に要する時間も長くなるおかげで、よっぽど眼鏡に叶ったアユだけをごく稀に補食するだけとなり、なかなか釣れるタイミングが遠退いてしまうのです。それ故、早期のアユが落ち始めた時が最大のチャンスなのです。
このようにアユの流下が多くなると、常に満腹状態なのと労せずご馳走にありつけることから、シーズンが進むにつれてオーソドックスなウェットフライスタイルのフライをスイングさせる釣りでは殆ど食わなくなります。なぜなら多くのニジマスらは、まだ逃げられる体力のあるアユには早々に見切りを付けて見向きもしなくなり、通常の流下(ナチュラルドリフト状態)となったアユだけを食いつまむのです。
この時のニジマスらのフィーディングレーンは極狭いものとなり、最終的にはタナを合わせる(こうなるとほぼベタ底)までに至ります。それ故、ボクが落ちアユパターンで釣る時のスタイルはガン玉を幾つか付けたルースニングなのです。
『エピソード2025』
初秋の陽気の中、できたばかりのNEWアユパターンを携えて川縁に立っていました。と言うのも、普段釣りをしていても時折“死に体”となったアユが流れ下るのを見付けていて、それらがニジマスの重要なエサになっていることは想像に難しくなく、アユの産卵が始まっているのかを確かめるのも兼ねて、やって来ていました。
フライが大ぶりなことと、LLサイズのインジケータに2Bのガン玉が2つ~3つなので、投げやすさ(殆どがピックアップ&シュート)を考慮してLOOPのクロスS1の7番10'5"をチョイス。もはや年季の入ったロッドとなりましたが、これまで幾つもの大物を仕留めさせてくれた大のお気に入りロッドです。
周りを見渡せば、ポイントへ向かうまでの水深10cmにも満たないチャラチャラのところで、20cm前後の魚の群れが逃げ惑っています。
いくつかの苦汁を舐めさせられた因縁のプールの流れ込み、流芯の流れに沿うようにNEW落ちアユパターンをドボンと・・・・すると、流れるインジケータが「スパッ!」っと引き込まれ、間髪入れずにロッドを立てると「ズンッ!」と、小気味良い重量感が伝わってきます。やはりシーズン初期の落ちアユを意識したニジマスは、反応が抜群です。
『タイイング』
基本的には、何のルールもない落ちアユパターンですから、各々が「コレだ!」とインスピレーションが湧いたマテリアルなどで自由に楽しく巻くのがいちばんだと思います。ただし、ボリューミーに仕上げれば、存在感はますものの沈下の妨げになりますし、多量の水を吸ったフライではプレゼンテーションもキツイものになります。
そして、フックは必ずワイドゲイブで強いのものをご使用下さい。殆どのニジマスが、その重たくなった腹が邪魔をするのか、水面を割って飛び出すシャープなジャンプなどは望むべくもなく、ひたすら超トルクフルな引きをみせます。そんな重たい魚とのファイティングであっても、そもそもが『ソルトウォーター対応』として剛性が高いTMC8089Nフックを使われると、多少強引であっても安心して寄せることができます。
ボクのパターンでは『スカルピン フラッシュヘアー』を重ねて柔軟性エポキシでシルエットを整え、油性マジックで着色したモノを使っています。(フライの長さがあるので、トレーラーフックにしています)
ぜひこの落ちアユのシーズンに特化した“大物一発”のチャンスがあるタイミングを逃さずトライしてみて下さい。もしかしたらアユの棲息地域までは距離がある方も多いと思いますが、ぜひチャレンジしてみて下さい!垂涎の的だった50cmオーバー、いえ60cmオーバーさえも狙えるチャンスがあるのですから。
ボクのこの夏、ようやく夢にまでみたマグロを掛けたのですが、ライン処理が間に合わず跳ね上がったラインがクリート(船上のロープを留める金具)に絡まり、潜り続けるマグロに「プン・・・・」っていってあっさりとフックを伸ばされました。せっかく大チャンスを与えてくれたいつもお世話になってるボートキャプテンには申し訳なかったのですが、本当に牛歩の如く日進月歩の歩みが続いています。
さて、そんな日々を過ごしているボクですが、これから厳しい冬を迎えるまで、まだまだ釣りへと走り回りますので、また何か面白いお話しができたらお便りさせて頂きます。
では~。