2月下旬のよく晴れた日の朝、石田理一郎さんと待ち合わせたのは羅臼の町中から半島の先へと16kmほど行ったルサ川の河口。ここは知床の豊かな生態系が凝縮された川なのだという。
「ダムのない自然河川は国内にはほとんどなく、鮭が俎上できる川というのは知床でも実は数えるほどしかありません。知床が世界遺産に登録されたのも、海と山を繋ぐこの自然河川の存在が要因として大きかったんです。知床の生態系の循環の要と言えるのがまさにこのルサだと思います。そしてこれから向かう『ルサのっこし』は、知床の厳しさを体現する場所でもあります」
まるで屏風を立てたように切り立った山が連なる知床半島において、最も低い鞍部になっている場所がルサのっこしなのだ。ここはかつてアイヌの人たちが羅臼と斜里を行き来するために使っていた交易路だったという。そして、山によって遮られた風が集まって一気に吹き出す風の通り道でもある。