駆け出しの頃は、既製品に手を伸ばすのは卒業していつかはきっと自分で巻いたフライで釣りたい、と誰もが夢を抱いていたことでしょう。
そして憧れのタイイングツールを一通り揃えた際、最初に巻くべき入門フライとして「エルクヘアカディス」と「パラシュート」の2つのお題をショップのオーナーから言い渡されるケースは多いものです。
エルクヘアカディスは、スレッドを除けば3つのマテリアルで作れる極めてシンプルなフライです。しかし、シンプル故にタイイングの誤魔化しが効かない、裏を返して言えばちょっとしたコツを掴むとその仕上がりはグッと綺麗になるパターンの1つでもあります。
また、目標とする仕上がりはタイヤ―によって千差万別。詰まる話、「エルクヘア」を使って「カディス」を模倣すればそれ即ち「エルクヘアカディス」となる訳です。
目一杯に下巻きしたシャンクのエンドに、ファイバーを2~3mm毟ったハックルを固定します。ハックルサイズの目安は、使用するフックのゲイプ幅+α程度のものを。
次に、スレッドにダビング材を撚り付けます。この際、ダビング材は少量ずつ使うこと。タイイングは料理と同じです。まずは薄味で様子を見なければ、ボテッとしたしつこい仕上がりになってしまうことは明白。ダビング材のボリュームが少ない場合、シャンクを1,2往復して調節しても構わないのです。アイ1つ分程度の余裕を残し、ダビング材によるボディの形成は終了。先程留めたハックルをグルグルとアイ側に巻き起こします。ハックリングの間隔は狭くても広くてもダメ。というよりも、自分できれいに仕上がるなと思う具合に巻き付けましょう。
最後にエルクヘア。これがきれいに巻き留められないとこのパターンの名折れとなること間違いなし。しかし必要以上に恐れるなかれ。まずはバスっと切り出してからアンダーファー(産毛)を丁寧に除去します。勿体ないとは思いますが、あまりにも細いものもここで除去すると、フライの完成度がより一層アップします。そして次に毛先を揃える作業。スタッカーの縁に擦り付けつつ回しながら入れるとスムーズです。小気味良くトントンと叩いて先端を揃えるのですが、ここで1つポイントが。エルクヘアをよく観察すると、ストレートではなく多少カーブを描いたアーチ状の構造をしています。スタッカーを垂直に叩いて毛先を揃えただけの状態で巻き留めると、ボサボサなフライになりがちなのです。
そのため、スタッカーを45度傾け、さらにトントン叩きます。すると1本1本のまとまりが良くなり、仕上がりがより一層美しくなります。スタッカーから取り出し、先端が崩れないようにしっかりホールドしつつシャンクに巻き留めます。長さの目安は、フックの全長程度。実際に魚が捕食している虫を観察しても、腹(ボディ)より羽(ウィング)が長い種類が大半です。
ここでさらにポイントが。フックに巻き付ける前に、エルクヘアのみをスレッドで1回転してバラけないようにまとめてからシャンクに乗せ、5回転ほど緩く巻いた後に真下へ強く、かつゆっくり引っ張って巻き留めます。エルクヘアがグラつくようであれば、スレッドの巻き留め幅を広げつつさらに数回転。そして最後にフィニッシュ。スレッドは、シザーズの2枚のブレードの開閉によって切るのではなく、切っ先を1mmだけ開き、これで「押し切る」のがポイント。他のマテリアルを不意に切ってしまうアクシデントを解消します。