昔から漠然と遠くの世界に憧れていて、学生の頃からバックパッカーで東南アジアを旅し、次第にノルウェーのロフォーテン諸島やカナダ、ニュージーランドといった圧倒的な自然を求めて旅をするようになりました。
旅行記・紀行文を読むのも好きで、荻田泰永さんの『北極男』という本を読んで北極への思いを募らせていた時に、ちょうど荻田さんが若者たちを連れて北極圏を歩く冒険旅を企画されているのを知って。それが2019年のことで、当時僕は26歳。名古屋の物流会社に勤め、種子島にロケットを運ぶという仕事をしていたのですが、会社も辞めて迷わず参加しました。そのおかげで写真の師匠である柏倉陽介さんと出会え、今があります。
カナダ最北端のバフィン島を、ソリを引きながら600キロ歩くという旅で、19歳から28歳までの若者12人が参加していました。荻田さんを筆頭にカルガモの親子のようにみんな一列になって歩く中、帯同カメラマンの柏倉さんだけは時折離れたところから僕らのことを撮影する為自由に動いていて、その姿が僕の目にはカッコよく映ったんです。
こんなところに仕事で来れらるなんて、写真家って何て魅力的な仕事なんだろうって、素直に思ったことを柏倉さんに伝えたら、「じゃあ写真家になればいいよ」って言われて(笑)。それから弟子入りして、旅中は毎日歩きながら撮った写真を見ていただくようになりました。
ある日師匠からこんな課題を出されたことがあります。それは、「そこの岩をそこにあるように撮ってごらん」というものでした。簡単そうでこれがうまく撮れないんです。シャッターを押せば確かに岩は写ります。でも自分が感じているようにその岩を撮るというのは、まったく違うことだと思い知らされました。
写真のおもしろさを知ったのはその時ですね。今では撮りたいと感じた瞬間に、なぜそれを撮りたいのかを考える癖をつけるようにしています。ただ闇雲にシャッターを切るのではなく一度自分の中で言語化してみることで、撮りたいものがより明確になりますし、後から写真を見返した時にも、どういう意図でその写真を撮ったのかを人に伝えられますから。