写真が呼び起こすもの 佐藤 大史 │ Photrek Down Jacket / Foxfire

FIELD IMPRESSION #005

写真が
呼び起こすもの

佐藤 大史

写真家・フォトグラファー

佐藤 大史

1985年生まれ。東京都町田市出身。長野県安曇野市在住。日芸写真学科卒業後、白川義員の助手を務め、2013年独立。「我々の属しているもの」を写真で伝えるべく、アラスカなど手つかずの大自然とそこに生きる生き物を撮影している。国内では西表島を舞台にした「シマのサマ」、信州の森をテーマにした「ずっと森じゃない」を発表予定。写真集「Belong 」信濃毎日新聞社刊。

フォトレックダウンジャケット

INTERVIEW

佐藤大史

アラスカに10年かけて通い、野生生物とその生きるフィールドを写真に収めてきた写真家の佐藤大史さん。撮影のテーマとして掲げている「生きること」と「暮らすこと」、その真意について話を訊いた。

佐藤大史
 

INTERVIEW THEME.01

一頭の野生生物のように

忘れられない光景は?と聞かれると、僕の場合はやっぱりアラスカが多いですね。深夜2時過ぎの白夜の空に虹を見たことや、地平線の彼方まで続く巨大なオーロラも忘れられないです。撮影に出かけるのは夏の白夜の時期が一番多く、時期としては6月。その次が8月から9月の紅葉の時期です。その間は毎日日記をつけているんですけど、最初に必ず天気をつけます。それが複数の天気になるのも面白い記憶です。「雨→晴れ→曇り→雨」のように、1日の中で天気は常に変わっていくので。僕はこのめまぐるしく変わる天気が好きです。それに白夜の時期は太陽が沈まないので、日記をつけてないと今日が何日なのか自分ではわからなくなってくるんですよ。

アラスカでの撮影では、自分自身が一頭の野生生物になったつもりで撮ることを心掛けています。動物写真は現地の情報をもとに考えて撮るのが鉄則かもしれませんが、僕はできるだけ感覚に任せて、自然に出会ったものを撮りたい。

初めてアラスカに行った時に撮ったお気に入りの1枚があります。北米最高峰デナリの麓を歩く1頭のグリズリーの写真です。デナリの標高が6190mで、グリズリーが歩いているところが標高1500mくらい、そして僕はクマよりやや高いところにいます。150mmの中望遠レンズで撮ったんですが、僕はこの距離感が好きですね。壮大なスケールの中で生きるグリズリーの姿を収められた、思い入れ深い1枚です。

   
佐藤大史

INTERVIEW THEME.02

何のために撮るのか

高校の頃から写真を始めて、日芸の写真学科に入ったのですが、最初から写真家になろうとは考えていませんでした。もともと自分は会社員には向いていないと思っていたので、北海道で牧場をやるのもいいなって考えていたんです。朝日とともに起きて、働いて、夜になったらお酒を飲んで眠る、そんな暮らしに漠然と憧れていました。

当時うちではムギという名前の白い秋田犬を飼っていたのですが、僕が20歳の頃にムギが亡くなりました。その最期を看取りながら、ふと思ったんです。「こいつは今命を全うしようとしているけど、はたして僕は本当に生きてるのだろうか。大学に行って単位を取って、バイトして、それだけの日々を過ごす今の僕は本当に生きてるのかな?」って。そこからですね、“生きることは体験すること”だって思うようになったのは。もっといろんなところに行って、見聞きしたことをいつか写真で伝えられるようになりたいと思うようになりました。ムギから教わったものは大きいですね。

写真を人に見てもらい、伝えることを何より大事にしているので、毎年1回は写真展を開催するようにしています。そして来場者のリアクションを見ながら自分の写真を客観視することも心がけています。「こういう写真って独りよがりだったんだな」とか「こういう写真の方が感情移入しやすいのかな」って考えたり……。自分はアラスカの現場にいるから感動してシャッターを切っているけど、その写真を日本で見る人に同じように伝わるとは限りません。だから写真展は自分の役割や表現方法を再確認する大事な機会だと思っています。

 
佐藤大史

INTERVIEW THEME.03

その土地に暮らし、生きていくということ

10年かけてアラスカに通う中で少しずつ撮るモチーフが変わってきました。これまでは自然の深部へと分け入って撮影することが多かったのですが、最近ではその地に生きる人たちを撮ることにシフトしていっています。

アラスカに行くたびに毎回立ち寄る村があるのですが、そこで僕と同世代くらいのアラスカに暮らすネイティブの人たちと話をしています。彼らは英語しか喋りません。なので、自分たちの世代で親たちが使ってきた言語が失われていくことをどう思っているのか、村の今の暮らしから未来をどう見据えているのか、といったことを尋ねては、彼らの写真とともに伝えようとしています。

奥田 祐也

僕は今、「生きることと暮らすこと」をテーマに撮影しています。アラスカに我々現代人が忘れがちな“生きる”を見出し、一方で人間の経済活動も含めた“暮らす”ことを西表島を撮ることでひもとこうとしています。その土地で獲れるものに頼って生きていくには最適な人口を維持する必要があるし、経済社会に依存した暮らしを選ぶならお金が必要になってきます。

以前環境省の方から聞いたことがあるのですが、日本の平地面積に対して食料自給率100%で暮らすためには人口3000万人くらいが限界なんだそうです。日本でその均衡が保たれていたのは、江戸時代後期くらいまでだったと推定されています。この土地はどれだけの人を養ってくれるのか、それをオーバーした場合は全員の胃袋をどうやって支えていくのか。外からの資源に依存すれば、様々な外的要因で絶たれてしまうリスクもあります。

こういったことを一人一人が真面目に考えなければならないフェーズにきていると思うんです。これまでと同じ暮らしが、この先もあたりまえのように続いていくとは限りませんから。

僕も今は安曇野で自分の暮らし方を見つめ直しています。必要なものはなるべく自分の手でつくったり、ソーラーエネルギーを生活に取り入れたり、自分にできる範囲で地道に取り組んでいます。地球とか命をテーマに写真を撮る写真家は、未来志向を持っている人が多いと思うんです。自分たちの私利私欲のために資源を使ってきたことのミステイクを、他の人よりも多く見て、感じてきたはずですから。

   

WSフォトレックダウンジャケットの使用感

Impression

>WSフォトレックダウンジャケットの使用感

物理的に大きいレンズの存在は、フィールドワークの足枷になってしまうこともあります。僕が山でも森でも川でも持ち歩くのは150-400mm。長さは約35センチ程度あります。(レンズフード別)。カメラザックに入れると、急いで付け替えたいときにザックから取り出すアクションが増えてしまうので、このジャケットの胸ポケットに収まってくれるのはとても助かります。OMシステムであればカメラをつけたまま収納することもできます。レンズを街の中で持ち歩かなくてはいけない時や、山小屋のような鍵のかからないところで過ごす際の盗難対策として役立ってくれたこともありました。

それに、軽くて動きやすいことも気に入っていて、フィールドでも街でも重宝しています。ふとした時に肘が突っ張ったりすると撮影の妨げになるんですよね。

PRODUCTS

フォトレックダウンジャケット着用
フォトレックダウンジャケット カーキ

WS Photrek Down Jacket

Khaki

フォトレックダウンジャケット ブラック

WS Photrek Down Jacket

Black

「5 Nature Photographers」

「目を奪われるような美しい風景」や「極地が生む厳しい自然環境」、「動植物の織り成す生命の躍動感」などをカメラに収める写真家たち。彼らが魅了された世界や、撮影のバックストーリーなどを「WSフォトレックダウンジャケット」の使用感と共にお伝えする全5回の特集。

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