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Fly Fishing社員ブログ 嶋崎了の開発後記 「Jストリームとインファンテの二つの761-4」

2014.02.19

嶋崎了の開発後記 「Jストリームとインファンテの二つの761-4」

昨今では定番化したと言っても過言ではない#0、#1のライトラインの世界。一昔前はギミック的な番手であったが、今では普通と呼べるほどになってもきている。海外ブランド、国産ブランドともにメインにはならないものの、確実にその世界は広がりを見せ、特に日本においてはフィールドの質からかその優位性が際立ち、愛用者も増えている。

軽く細いラインはドラグがかかりにくい。懸念されるキャスティングにおいても渓流などでのディスタンスでは充分。ラインの進化にも助けられ、#3と同じ様な釣りが出来る様になっているのが理由の一つと思われる。しかし、今販売されているライト番手は8フィート以上がほとんどだ。少しでも軽いウエイトが投げられる様にそのレングスなのだと思うが、日本の渓流ではその長さを持て余す河川も多い。ライトラインユーザーからは短いものも欲しいとの声も少なくなく、今回7.6フィートを開発する事になった。それでは実際にテストした状況をお話していきたいと思う。

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ロッド工場から2本のファーストサンプルが届いた。インファンテ761-4とJストリーム761-4。どちらからテストしようかと河原の駐車場でラインを通して投げてみる。まずはJストリームを投げてみると・・・「あれっ?ロッドにラインの負荷がかからない・・・バットコンタクトがない・・・上半分しか仕事しない・・・ダメだな多分・・・」といった感じがファーストインプレッションだった。

7.6フィートと短いからなのか?高弾性のJストリームだからなのか?不安はよぎるが、キャストが良くてフィールドではダメなロッドもあれば、キャストが悪くてもフィールドでは良いロッドなども今まで色々あったのでこれだけでは解らない。気を取り直して次はインファンテ761-4を投げてみる。不安は一瞬で取り除かれた。投げやすい・・・バットからティップへの移りもいい・・・取り敢えず悪いところが見つからず、Jストリームで落ち込んでた気持ちが払拭されたのだった。

さて、次は実釣テストに移る。まずはJストリームから。ラインはJストリームDWF-1F、リーダーシステムは同時にテストしているフィネス11フィートの5Xに6Xティペットを5フィート足し、フライは#14のパラシュートフライで釣り上がる。フィールドは川幅10m~15mほどの典型的な日本の里川。狭いポイント広いポイントと1キロほど釣り上がったが、ひとことで言ってまったくダメであった。テスト中に考えることは、「どこをどうしたら土俵に上がれるのだろうか」等の改善点の把握だった。

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さて、気を取り直してインファンテのテストに移る。システムは先程の物を使用し同じ区間に入渓した。同じ区間なので当然同じポイントを攻める事になるのだが今度は先ほどとは違い、全てがスムーズに行える。先程までの苦痛が嘘のようだ。キャスト、ドリフト、プレゼンテーション、メンディングなど全てがスムーズなのだ。先ほどとは違い今度はダメ出しのテストになった。「どこをいじればもっと良くなるのだろうか」。「バットはこれでいいのか?ティップはこれでいいのか?フライサイズは?」などとあれこれ考えながら釣り上がった。

リーダーシステムやフライパターンも変更したりしながらテストした結果、問題点がどこにも見つからなかった。懸念していた7.6フィートというレングスの問題もどこにも感じられずコンセプトでもある3番の様に扱えた。むしろ短い分、小渓流でも対応出来るため日本のフィールドでは活躍する場面が多いと思った。ファーストサンプルで決定する事は非常に珍しいのだが、そういったロッドはほとんどの場合自分の中では良いロッドだったと記憶している。まだライトラインの世界を知らない方に使って頂きたいロッドとしてぜひお勧めしたい。

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インファンテのファーストサンプルの出来栄えがあまりにも良くて、一時はJストリームの761-4をあきらめようかと考えたほどだった。では同じ様に作られたロッドで何故そこまで差がついたのか。一番初めに考えるのはプリプレグの違いになる。一般的に良く耳にする24トンや30トンなどのロッドが作られているカーボンシートの種類になる。簡単に言えばトンの数値が高いほど高弾性になるが、シートの厚さや樹脂量など他にも要因は多くある。また、軽くシャープなロッドを作りたい時はトンの数値が高い物を使用し、逆であればトン数の低い物を使用する。と簡単に書いてみるが、要は通常Jストリームで使用している高弾性のものを普通に作った場合、7.6フィートだとロッドにならなかったのだ。ファーストサンプルはバット部が硬くティップ部が弱いというものだった。1キロほど里川を釣り上がりながらあれこれ考えて行くと、このロッドをいくらいじってもダメなんじゃないか?という感じもあったが、取り敢えず考えられるすべての事をまとめ、セカンドサンプルを待つ事にした。それでだめなら仕切り直しかな?という思いも含めてであった。

セカンドサンプルは3パターン依頼した。4ピースで構成されているので入れ替えをしながらキャストをすると頭がグチャグチャになってくる。それでも何パターンか方向性を見出して実釣テストを行った。インファンテで1つの答えが出ていたので、Jストリームはそれを軽快にする方向で追及していると、ある1つのパターンでとても良い感じの物があった。

インファンテの融通性はないものの軽快に釣り上がるにはJストリームに軍配が上がる。高弾性の特徴である反発力の良さが堅調に感じられ、ホッとした瞬間だった。インファンテが乗用車だとすれば、Jストリームはレーシングカーとも言え、どちらが好きかは人それぞれ。これまでの試投会や展示会などでも見解の別れるところだ。

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ロッド作りは面白い。だめだと思っていた物が多少のアレンジで良くなったりする。料理で言えば塩加減の様なものだろうか。次はもっと短いものも作りたい気持ちになっているが、果たして実現できるのだろうか。

 

嶋崎了

 


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