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Fly Fishing社員ブログ オービス社のコラム「新しいグラスロッドORVIS Superfine Glassについて」

2014.02.28

オービス社のコラム「新しいグラスロッドORVIS Superfine Glassについて」

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歴史

第二次大戦以前、全ての品質の高いフライロッドはバンブーでした。フライロッドに求められる強さや柔軟性をもったマテリアルは他にはなかったのです。釣竿ということでは他の木材やチューブ状の金属でも作られていましたが、フライロッドを作るには性能が足りませんでした。第二次大戦後、バンブーの代わりにファイバーグラスが登場しました。この素材は強く、柔軟性に優れており、中空構造のためバンブーよりも軽く作ることができました。その後30年間、バンブーとファイバーグラスのフライロッドは市場を席巻することになりました。

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1974年のオービスカタログ。

1980年代、多くのハイエンド・ロッドメーカーはファイバーグラスロッドの生産を中止していきました。新たなグラファイトという素材は高弾性で、ファイバーグラスでは使い物にならなくなってしまうような重量の増加を伴うことなく、長くパワーを持ったロッドを作ることができるようになりました。硬いグラファイトの速いラインスピードはロングキャストを容易にするため、市場はアクションがファストであればあるほど良いものと捉えるようになりました。10番のロッドを一日中振っても疲れは少なくなりました。

しかしそこには常にグラファイトロッドは近距離の繊細なプレゼンテーションには向かないとする抵抗勢力がありました。彼らはファストであることが常に良いことではないと感じ、引き続きバンブーやファイバーグラスロッドを使い続けました。初期のグラファイトロッドは極度の力の掛かりに対しての脆さにも苦しみました。そのため多くのフロリダ・キーズのターポンガイド達は大きく重い12番のファイバーグラスロッドにこだわり続けました。おそらく彼らはキャストに疲れ、グラファイトロッドほどは飛ばすことはできなかったかもしれませんが、確かに150ポンドのターポンとのファイト中にロッドを折ることはなかったでしょう。やがて改良されたマテリアルやレジンシステムの登場によってソルトウォーターにも耐えうる強いグラファイトロッドができるようになっていきました。それでも特に相性の良い短く軽い番手のロッドにおいては常にファイバーグラスのファンが存在していました。

ファイバーグラス・マテリアル

初期のファイバーグラスロッドはEグラスと呼ばれ、第二次大戦中に飛行機のレーダードームに使われた合板の代わりになるものとして開発されました。細いガラスの繊維がレジンによってきちんと配列・保持されています。戦後ファイバーグラスはボートやスポーツカー、釣竿といった多くの製品に使われるようになっていきました。

Eグラスは引張強度が極めて低く、初期のグラスロッドはブランクの壁が厚く、当然重いものでした。その後強い引張強度を持った新しいSグラスが開発されました。引張強度のアップはより軽く、強く、シャキっとしたロッドを可能にしました。しかしながら、グラファイトは登場するや否や市場を席巻していきました。グラファイト素材はファイバーグラスよりも確かに高価ではありましたが、フライロッド生産のコストというものにはローリング、カッティング、サンディングに仕上げといったところにも多く掛かるものであり、結果としてSグラスで作られたフライロッドはグラファイト製のものと同じように高価なものとなりました。グラファイトは優れたマテリアルであるとの認識が進み、ファイバーグラスは競争にさらされる中でシェアを維持することができませんでした。そしてオービスも1985年にファイバーグラス製の「フルフレックス」シリーズの生産を中止しました。大型量販店などのEグラスを利用した安価なロッド、少数の職人のSグラスを使用したロッドを残すのみとなり、ファイバーグラスは次第に陰に隠れていきました。このように残されたロッド達には密かに熱狂的信者が生まれていきました。

 

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なぜオービスはファイバーグラスへ戻ったのか?

近年、ファイバーグラスのムーブメントは、良いファイバーグラスロッドを知らない世代などから広がってきています。好奇心や少しのノスタルジーから使い始めたとも言えますが、ロッドの感覚を気に入って使っているというのもまた事実です。ファイバーグラスをテーマとしたフォーラムもより注目を集めています。また「The Fiberglass Manifesto」のようなブログは、このような愛好家の方々に独特のコミュニティ感を与えています。我々も最初にいくつかのファイバーグラスロッドのプロトタイプをテストした時は好奇心からでした。我々がそれを作るとどうなるのか見たかったということもあります。しかしこれまで何世代にもわたってグラファイトロッドから学んできたテーパーに関する知識と合わさった新しいS2グラス素材は、合理的な選択肢となり得るとすぐに感じました。加えて、ここバーモントのロッド工場での新たなチャレンジとすることができるのです。

以下のビデオではファイバーグラスが工場で生産される様子を見ることができます。

Orvis Superfine Glass from Orvis on Vimeo.

 

「シリアスなグラスファンならこのロッドを一回でもキャストしない理由はないね。最近ウイスコンシンのドリフトレス・エリアでお腹を空かしたブラウントラウト相手に7フィートのスーパーファインに小さいフォームのポッパーで楽しい午後を過ごしたよ。その3番ロッドはホッパーも問題なく扱えたし、40フィートの正確なキャストも全く問題なかった。」
The Fiberglass ManifestoのCameron Mortenson氏はFly Fisherman magazineにそう書いていた。

1970年代のオービスのファイバーグラスロッドとはどう違うのか?

オービスとしての最後のファイバーグラスロッドは当時としては最良のマテリアルであるSグラスを使用した「フルフレックス」シリーズでした。これらのロッドは縦横に編みこまれたファイバーグラス素材で、ユニ(単一)方向のみに配列された繊維ではありませんでした。その後ファイバーとレジンは進化し、より強く軽いS2グラスの誕生へと続いていきました。

「伝統を重んじるクラシックなアングラーはこのロッドを絶対気に入るでしょう」とMossy Creek Fly FishingのColby Trowは言います。しかし大きな進化は構造やテーパーにこそあります。企業秘密でお話できない部分ではあるのですが、確かに言えることは新たなグラファイトロッドを生み出すために開発してきた新しい機械や技術がこのロッドに注ぎ込まれているということです。

回の我々のファイバーグラスロッドでは全ての繊維は一方向に並んでいます。(もちろん潰れに対する強さを出すために少量の横繊維も使ってはいます)。テーパーは1970年代のファイバーグラスロッドのものとは大きく異なります。このところはキャスティングをより簡単により正確に行うための急テーパーの効率性を認めるところとなり、30年前のファイバーグラスロッドよりもむしろ現代のグラファイトのテーパーに近いものとなっています。

グラファイトロッドに慣れていると1970年代のファイバーグラスロッドにアジャストするのは難しく、進化を認めるまでに至らないかもしれません。しかし現代のキャスター達はオービスの新しいスーパーファイングラスには問題なくアジャストすることができるでしょう。以前のファイバーグラス、ひいては現代でも他社のファイバーグラスロッドと比較しても、より軽くよりファストになっています。とはいえスムースさやキャスティング中の心地の良い動きは残っています。

他社の現代のファイバーグラスロッドと比較するとどうなのでしょうか。

ここは我々PRを押し付けるよりも、独立したファイバーグラスロッドの権威の一人に聞いてみましょう。

 「スーパーファイングラスを他社のロッドと比較する場合、それぞれのシリーズは明確な意図と目的をもってデザインされていることを頭に入れておかなければなりません。あるロッドはフルフレックスで柔らかいティップを持ち、ドライフライの釣りに最適だと言うことができるでしょう。またあるロッドは近距離から中距離の釣りに合っているものだったり、ミディアムアクションで守備範囲の広いロッドもあります。スーパーファイングラスを数ヶ月使ってみて、テーパーはミディアムからプログレッシブであり、ドライフライから必要とあらばストリーマーの釣りまで、ファイバーグラスの愛好家が相対するであろうどんな状況にも適応する能力を備えています。」

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この新しいスーパーファイングラスロッドはブランクにマッチしたファイバーグラス製のチューブケースに入ってきます。チューブには1980年代のレトロラベルが付いています。

それではグラスロッドからはグラファイトでは得られない何を得られるのでしょうか。

ファイバーグラスはグラファイトに比べて弾性係数や曲がりに対する抗力が低くなります。つまり素材自体は、同じキャスティングストロークであればより多く曲がります。ファイバーグラスロッドはたとえファストアクションであってもグリップの中まで曲がる感覚が得られます。キャスティングの最中に触覚からの情報が得られるため、この感覚を好まれる方もいます。ファイバーグラスロッドはよりリラックスしたゆっくりとしたキャスティングのテンポを促してくれます。また素材自体はより質量があるため、少し違った感覚をもたらします。ある人はグラファイトよりも"生きている"と表現したり、またある人はよりスムースに感じると言います。

ファイバーグラスはその他の条件が同じであればグラファイトよりも曲がるため(グラファイトロッドと同じように硬くすることもできますが、とても重くなってしまいます)、大きな魚に細いティペットで釣りをするのにも最適です。ロッドがバットまで曲がることにより吸収してくれます。

工場での曲げのデモンストレーションの様子
Tim Romano on a tour of our rod shop

ファイバーグラスロッドのブランクは壁が厚く衝撃に強いため、木に当てたり、岩から落としたりした時により少ないダメージで済むかもしれません。(グラファイトロッドはとても高い張力を持っているため、大きなクラウザーミノーや大枝などに対してはより弱くなります)。ファイバーグラスは木の多いような、小さい川の釣りにも最適です。そして飽きっぽいキッズ達(もしくは不器用な我々大人達!)の最初のロッドとしてグラファイトよりも合っているかもしれません。

しかし多くの人にとってファイバーグラスの魅力というものはもっと主観的なものです。よりスローな素材であり重さがあるため、異なったキャスティングフィールがあります。タイミングはもっとゆったりとしており、リラックスしたキャストでラインスピードも遅くなります。特に40フィート以下のキャストの時は、ゆっくりとしたラインスピードはより正確なデリバリーを可能にするため、小さいフライと細いティペットを使う時にファイバーグラスを好むアングラーが多いのも頷けます。スーパーファイングラスのテスターの一人で、伝説的なガイドのDave Jensenが言ったことがうまく言い表しています。

「このロッドは感覚が全てなんだ。他に比べるロッドなんてないよ」(Dave Jensen, Fly Fish Alberta)

ORVISスーパーファイングラス製品ページ

 


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