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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「北海道秋の風物詩」

2023.11.13

カブちゃんの北の便り「北海道秋の風物詩」

皆さま、大変ご無沙汰をしておりました、北海道の小甲です。こちら北国では、そちこちの山でが初冠雪の時期を迎え、もう間もなく街の辺りにも小雪がチラつく寒さがやってきそうです。

 

そんな季節を目前に控え、我々北海道民はシーズンのファイナルステージを迎えようとしています。晩秋のカメムシを筆頭に大小様々なテレストリアルの流下や、2世代目のヒラタカゲロウを含めた中小のメイフライなどと、時間がいくらあっても足りない程に魅力的なシーンが待っているのです。

 

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しかし、この季節ならではのフラットなスローウォーターで起こるライズに手を焼き、手痛いしっぺ返しを食らうほどシビアな釣りでもありますから、気難しいライズを前に最も情熱を燃やす瞬間でもあるのです。

 

さてさて、そんなシビアな釣りもとても楽しいモノなのですが、そのようなヒリヒリする釣りは大ベテランの先輩方にお任せして、今回ご紹介するのは、ビギナーの方必見“大物一発逆転もあり得る”ボトムロールで攻める秋の釣り。

 

これは、大雑把に言うと、大ぶりなインジケーターと重めのシンカーを使用したルースニングの釣りで、使用するフライは10月初旬から11月いっぱい(北海道の各地域によって期間にズレがあります!)まで続くサケの産卵に伴う渓流魚の大好物、サケの卵=エッグパターンです。

 

実はこの釣り、どうしても管理釣り場での釣り方と混同されてしまいがちで、敬遠されてしまう方もいらっしゃるようなのですが、実際のところは「インジケーター付けてエッグを結んで投げ入れればその内釣れるのだろう・・・」といった単純なモノではありません。詳しいことは後述しますが、タナと流し方、及びトレースするスポットやフライのカラーチョイスなどなど、真面目に考えなければならないところもあるのです。

 

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エッグを用いた釣りとは、基本的には難しい技術はなく、ハードルは低めに設定されていると言えるんだと思いますが、しかし、時に大物が混じる確率が非常に高い釣りでもあります。確かにバカスカ釣れることは稀でしょうし、もしかしたら1日に1匹しか釣れない釣りかもしれないけど、それでも思わぬグッドサイズが混じる確率は非常に高いのです。

 

また、ロングキャストが功を奏する釣りというワケではないのですが、少々大ぶりなシステムを組むので、できることならば4~6番程度の長いロッド、例えばループ Qロッド スイッチ LQRSW 4110-4MFや、 Z1スイッチ LZ1-5116-4MF、またはユーフレックス・Jスイッチ G+ JSWT1096-4G+などの4番~6番で11ft前後のスイッチロッドであれば、キャストからプレゼンテーションまでが楽にスムーズに行えるでしょう。

 

特にニジマスを狙う場合、彼らは流速のある瀬やポイントの流れ込み(上流部分)に入ることを好むので、そこではフライが押し流されないよう必然的に少々重たいシステムでトライしなくてはなりません。そこでシンカーを使う場合、例えば2Bのガン玉を2つ付けた時は、ガン玉とガン玉の間を10cm、20cm、30cm、と長く空ければ空けるほど沈むスピードは遅くなり、逆にガン玉を並べて付けると、沈むスピードは速くなります。

 

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これは、あまり気にされていない方も多いようですが、2つ3つと、状況に応じて着け足すガン玉の間隔が長ければ長いほど沈んでいくスピードはゆっくりになり水の流れに押し流されやすいので、浅く流れのユルいポイントなどでは川底に引っ掛からないので好都合になります。

 

逆に、ひっ付くように並べて着けたガン玉では、そこを起点に直線的に川底へと沈んでいきますので、上記のようなニジマス狙いの流れの早いポイント用になりますから、トライするポイントを前に状況を分析し、その日その時のベストなシンカーのサイズや間隔を見付ければ、きっと釣果は飛躍的に上向くでしょう。

 

一方で、ポイントの中心から下流側のゆるい流れになると、アメマスが掛かってくることが多くなります。このアメマスですが、群れで移動していることが多くみられるので、1匹掛かったら、その周辺に特大サイズも含めて多数のアメマスが潜んでいるかもしれません。

 

そんな時こそ、手前から順に1メートル刻みでフライをトレースするぐらいの気持ちで慎重に攻めて頂きたいと思います。ちなみに、釣行前日やその前に雨が降り増水した直後ならば、新しいサケの群れが入って来ているかもしれないので、それはチャンス倍増の瞬間です!ポイントに新しいサケが入ると、産卵場所を見付けて落ち着くまでに、それまで居たグループも含めてちょっとしたテンションアゲアゲ状態になります。

 

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その時間は、僅か30分だったり丸々1日だったりと一様には決まっていないようなのですが、そうすると、不思議とサケ以外の魚たちにもそんな雰囲気が伝わるのか、ニジマスやアメマスなんかの活性もグンと上がってくるのです。焦らずに、まずはしくじらないよう、最終チェックです。

 

瀬の中でサケの卵を貪っているニジマスやアメマスには、ティペットの太さなど殆んど影響しませんから、ハイパーランナーのギンギンニジマス(瀬にいる銀虹は強い!)や、ゴリゴリのマッチョ&タフネスなアメマスに翻弄された挙げ句切られて捕りこぼしのないよう、ティペットは0x(糸が太ければそれだけ力の伝達が効率的に行えます)をオススメします。

 

また、ただでさえ重くてゴツイシステムなのでキャスティングのし難さを思えば、TIEMCOリーダーの0x9ftか0x7.5ftぐらいの長さのリーダーを使用することも同時にオススメしておきます。

 

そしていよいよキャスト&アプローチと移るのですが、ポイントによってはアップストリームだったりクロスストリームだったりします。上流(真上)を見て12時とすれば、アップクロスストリームで投げ入れる1時~2時だとスムーズに流せますが、2時~4時くらいのクロスストリームですとメンディングという動作でドラッグを回避しなければなりません。

 

また、4時~5時などのダウンクロスストリームでは、水の流れと同じスピードで手元のラインを送り出さなければなりません。ですので、クロスストリームよりも下流に投げ入れた場合、フライが着水したら、多少ポイントからズレても良いので、“メンディング”を、思い切り行ってみて下さい。その際、インジケーターが多少ポイントからズレてもぜんぜん構いません。回数を行えば、どの程度の力加減で行えば良いかは、直ぐに慣れるでしょう。

 

さてさて釣り場でのことですが、上流から下流へと一定の歩調(間隔)で釣り下がってくるウエットフライの釣り方を楽しんでいられる方とバッティングしてしまうことも度々あります。そんな時は、ウェットフライをされている方へご挨拶して、先に釣り下ってもらうようにしましょう。

 

自分からポイントを譲ることでムダなトラブルがなくなりますし、ちょっとオトナになって気持ちの余裕を持ってみるのも、ご自身のフィッシングシーンを豊かにしてくれる大事なエッセンスだと思うのです。また、そもそもウェットフライの動き・釣り方と、このエッグの釣りのフライの動き・釣り方はまったく違いますので、ポイントを少し休ませたら、また再開しても、十分釣れるチャンスはあるのです。

 

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そして、ここだけの話ですが、ポイントを休ませている時でも水中(川底付近)では、絶えずニジマスやアメマスにとってのご馳走である卵がポロポロと流下しているのですから、オートマチックに撒き餌しているのと変わりはないのです(笑)。この状態を言い換えれば、常に魚へ強制的に“ヤル気スイッチ”を入れているようなもので、卵に対して軽くハイになっている魚は警戒心も薄れがちとなり、割と早い段階で元の捕食動作へと戻ります。ですので、焦ることなく、ゆとりをもって釣りを再開できるのではないでしょうか?

 

と、ここで待望のヒット!インジケーターが、勢いよく水中へと引き込まれ…の、その前に、皆様へ強くお伝えしたいことがあります。それは、是非ともバーブレスフックのご使用をお願い致します!大きめのフックや、ダブル、トリプルのフックを使用した場合、針掛かりした場所によっては、蘇生も叶わず魚が死んでしまうこともあります。このアンラッキーを最小限に抑える為にも、ぜひバーブレスフックを使ってみては如何でしょうか?

 

実は魚が高活性の時などは、勢い良くエサを吸い込む為に、フライが口腔内の奥深くに刺さる場合もあります。そのような際に、バーブが付いたままのフックを無理に外すと、デリケートな口腔内の肉や、もしかしたらエラの一部を破損させてしまうかもしれません。魚は、エラ(人間の肺と同じ器官)からの出血はとても致命的で、リリース後の生存率が著しく下がってしまうのです。手のひらからスルリと力強く泳ぎ出した魚であっても、5分後には絶命してしまうのです。

 

そうならない為にも、また翌年もそのまた翌年も、大きく成長したその魚を釣ることができるよう、ここで思い切ってバーブを潰してみて下さい。意外にも、キチンと掛かった魚はバレないものですよ!それに、多くのエキスパートや署名な方々が推奨し仰っているように、バーブレスによるメリットはとても大きくて、慣れてしまえば、バーブの有無など気にならなくなるのです。(全てのティムコフックは、ポイントがとても鋭く尖っているので、少ないフッキングモーションでガッチリ刺さるように設計されています。動作は小さくても、クイックにしっかりと行うこと!)

 

それにこの釣りでは、もともとヘビーなシステムを組んだ釣り方ですから、目一杯プレッシャーを掛けてテンションを掛け続け(ロッドを立てて、ライン及びリールドラグを緩めずにロッドが常に満月状態になってる状態)ていれば、なかなかバレないものです。※ この釣りでは、不意に大物が掛かかり、流れの強い瀬の中で多少強引なやり取りを要求されることも往々にしてありますから、ご使用になられるフックはヘビーワイヤーを用いた2xheavyのTMC2499SP-BLやTMC2457、TMC2488Hなど、強い負荷に負けない太軸の針をご使用になられることをお薦めします!

 

いよいよ魚がフライを咥えガッチリとフッキングしたならば、8月9月と、高水温と低酸素のダブルパンチで喘いでいた魚たちとは違い、これからの低水温下では元気いっぱいでどこまでもラインを引き出してくれます!

 

ここで思わぬ凡ミスを起してしまう方が意外に多いのですが、それは普段はドライフライなどで細いティペットを使い慣れている人が、魚が掛かっても“糸切れ”を警戒するあまり、ロッドにテンションを掛けずに常に真っ直ぐ立てたまま少しずつラインを手繰り寄せているのが見受けられます。これでは常に魚に主導権を渡してしまい、何らプレッシャーが掛かっていない状態ですから、不意に大物が来た場合、どんどんラインを引き出されてバレてしまいます。

 

ですので、魚が掛かったらガツン!と負荷を掛けて好き勝手走られないようロッドパワーでいなすためにも、先にお伝えしたように0Xなどの太糸で釣られることをオススメ致します。そしてこの後は、抜群のコンデションを取り戻した魚たちに惚れ惚れしながら写真に収めて、そっと流れに戻してあげて下さい。きっと、アナタの記憶に残るような一匹との出会いが生まれることでしょう!※ この釣りでは、意図せずサケの魚体にフライが引っ掛ってしまうこともあります。そのような場合には、水から魚体を上げることなく、速やかにリリースして下さい。

 

ところで、本流でニンフの釣りをする場合、数キャストごとに小刻みなステップダウンの釣り方をする場合もあります。そんな時、低水温下でいつまでもバテずに走り回る元気なニジマスとは違い、常にヒザ下ぐらいの冷水に立ちこんでいることで寒さで強張った身体では、キャスティングなどにも支障をきたしてくるので、ぜひウェーダー内部の冷え対策をして下さい。

 

ここで間違えてはいけないのが、“寒さ対策”ではなくて“冷え対策”です。“寒さ対策”とは、身体全体を保温したり冷気から身を守る対策ですから、ダウンジャケットやウールパンツなどを着込み、寒さに備えます。一方、ここでお伝えする“冷え対策”とは、身体の一部(下半身)だけを寒さや冷たさにさらすことで体温を奪われないよう部分的に保温する事です。この保温対策がしっかりしていると、下半身の踏ん張りも効くことから、川を渡ったり重いフライを投げ入れたりする時に非常に楽になります。しっかりと冷え対策を講じて頂きたいと思います。

 

今年は、ボクの仕事環境が変わったこともあり、なかなか釣りへ行けない夏を過ごしてしまいましたが、今後はこの遅れを取り戻すよう、精力的に釣り場へと足を運ぶつもりです。そんな中で、冬を目前にした季節でインディアン・サマーに出会えたなら、以前の北の便りでもお伝えした「サケの死骸から溶け出る肉片は、他の魚にとっては大好物だという、本や友人からの聞いた情報・・・」を検証する釣行にでも出かけたいと思っております。

 

それでは皆様、また何か面白い出来事でもあればお便りしたいと思います。ではお元気で!!

 


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