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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「とっておきの必殺リトリーブ」

2023.05.30

カブちゃんの北の便り「とっておきの必殺リトリーブ」

皆様、毎度様です、北海道のコカブです。北海道も各地の山々で緑が濃さを増す季節になりました。そこで、今季の冬~春の釣りを報告させて頂きます。

 

平磯

 

実は、前回のお便りでは、「今季は、針に掛かるのが全て楽々60センチを越える特大ばかりなんてことも珍しくないよ!」と、ダブルハンドを携えたフライフィッシャーの方が仰っていました!、などとお伝えしました。そしてそれを聞いたボク自信も期待に胸と鼻の穴を膨らませ、ポイントを前に「フンガ、フンガ」していたのですが、こんな時に限って掛かるのは何故か小物ばかり。ついぞ大物には恵まれず「野太といロクマルはどこじゃ~!!」と、叫びながら釣りをしていました。

 

中型アメマス

 

ソルト系の釣りにおいて、ボクはもともと大ぶりなフライを「ズバーン!」と投げ入れて「ガツーン!」と釣る、そんな漢らしいストロングスタイルが何よりも好きでした。もちろん、当日の状況いかんでは、14番のスカッドであったり10番のブラックノーズディスなどの細身のサケ稚魚パターンを使わなければならない日もあり、はたまた昆布ランナーのようなシュリンプ系で極力静かに繊細に探っていかなければならない時もあります。

 

ですが大海原を前に、気持ち良くぶん投げた大ぶりのフライに遠目でドーン!と気前良く魚が出てくれたときは理屈抜きで解放感に上乗せされるとびきりの達成感がボクの心を躍らせるのです。

 

さて、前回のお便りでもお伝えしたように、今年の日本海では厳冬季の前半戦からイワシが大量に接岸し、理由は定かではないですが多くのイワシが岸に打ち上げられるほど押し寄せていたようです。このような、通常の遊泳力を失った状態のベイトに対してスナイパーさながらのプレデターが連動するのは、容易に想像が付きます。

 

打ち上げられたイワシ

 

それ故、釣りの組み立て方としても、若干の変更を必要とされるシーズンでした。例えば、リトリーブ。オールマイティーなサーフキャンディーや、オーソドックスなサケ稚魚パターンのようなミノー系を、通常のピッチでリトリーブしてきても、多くの魚が瞬間的にフライを見切り、Uターンしていくのです。魚がフライに近づいたことは、リトリーブ最中のフライを注意深く見ていなければ気が付かず、視線が低いサーフからなどではなかなか分からなかった事象でした。

 

具体的には、場所によって数キャストした中で大小合わせて4~5匹からの反応があったにも関わらずフライを咥えたのは僅か1匹で、残りは物凄い勢いでフライに近づいたのにチェイスすることもなく、瞬間的にフライを見切りあっさりと帰っていきました。これは明らかに魚が待ち受けているエサとは大きく乖離していることであり、「何でも食べる」状態ではなく、特定のエサを探していることに他なりません。まるでなんだか、ハッチの最中のライズハントのようですよね!

 

もちろんそんな時でも、潮流や波など自然現象により、魚の反応がガラリと変わり、好戦的になることもあるのですが、そこは釣り人側からは仕掛けられない状況の変化や自然界の事象ですから、“食いが立つ”ことを待っていては時間だけを浪費してしまいます。ですので、なんとしてもこちら側の引き出しの中からあの手この手を探し、魚のヤル気を引き出したいものです。

 

イワシは銀色の塊

 

ボクがまだまだ鼻たれのガキの頃に、バァちゃんの家の前の浜で泳いだ時に見たイワシやイカの群れのことは、未だに忘れられない思い出の一つです。

 

その浜辺は、ゴロタ石の浜がずっと続く透明度がバツグンの海で、多くの小魚の他にも時折イルカや海亀なども顔を見せてくれる海でした。そんな浜辺では、当時秋風が吹き始めるお彼岸直前の頃に決まってイワシの大群がやってきて、寒さに震えながら泳いでいるボクラを驚かせたものです。

 

そして、水中メガネを通して見ていたイワシの大群は、まるで水中に宝石を散りばめたようでした。よく目にするスーパーで売られているイワシは、まるで新品のルアーのようにブルーとシルバーのキレイなツートンカラーですけれど、それはウロコがない“食品”としての状態なのです。

 

本来の大海原を泳ぐイワシとは、ウロコによる光の反射作用によって銀色に輝いた光の塊のようで、我々が水面上から見下ろす目線ではなく、水中で同じ深度から水平に見れば、それはもうアイアンメタリックともシルバーメタリックとも形容しがたいなんとも言えない銀白色のとてもキレイな光の塊なのです。

 

ですのでシンプルな銀色だけのフライなんかでも、良く反応してくれました。ただし、イワシがメインベイトの時のリトリーブは、極早めのリトリーブが必要とされる場合が多いですから、マテリアルが絡まないよう、ウイングの中心にはスーパーヘアーなどでフレームを作り、ヘッドのマイラーチューブもフックベンドに掛かるぐらいにしておかなければなりません。そして、コーティングしているエポキシはフライの重さを増し投げ難くしてしまうので、極力薄くするようにして下さい。

 

キャンディ-みたいなフライ2

フック:TMC800S#6または#4
スレッド:モノスレッド(ファイン)
アンダーウイング:スーパーヘアー(クリアーまたはグレー)
オーバーウイング:エンジェルヘアーまたはEPスパークル(ホログラムシルバー)
ボディー:マイラーチューブM
アイ:3Dアイ5ミリ

※イワシの大きさはすごくバラつきあるので、必ずしもタイトにサイズを合わせなくとも良いような気がしています。

 

ここでのキモは、兎に角ファーストリトリーブが必要なことです。一見、魚が食い付けないのではないのか?と思えるほどの高速リトリーブだったとしても、アメマスやサクラマスらからしたら追い付けないことなどなく、それどころか余裕綽々とフライを追い越せるスピードをもっています。

 

ですので、前記したオーソドックスなパターンで通常のリトリーブでは見切られていましたが、このシンプルなシルバーホログラムカラーのフライで高速リトリーブに変えたとたん、釣果が伸びるようになってきました。

 

 

実は海岸線も危ない北海道

 

さて、ようやく浜辺の日差しも初夏を思わせる北海道ですが、暖かな天気とは裏腹にこんな時は注意が必要です!それは、海岸線にはイワシや他の魚のまとまった死骸、またはシカやイルカなんかの野生動物の死骸が度々流れ着くことがあります。それが特に民家や市街地から大きく離れた海岸線で見付けた時などは、周囲の林やヤブなどを絶えず注意しなければなりません。

 

エゾシカの骨

 

北海道の場合ヒグマが近くにいる可能性を疑わなければならないからです。テレビなどで知床の番屋付近に出没するヒグマが、漂着したクジラの死骸に群がる映像を見た方も多いと思いますが、あの状態がリアルに目の前で起こるかもしれないからです。何よりも、エサに居着いてしまったヒグマほど危険なものはなく、特に春先のヒグマは冬眠明けで空腹だったり、もしくは子連れで非常に攻撃的になり危険極まりない状態だったりもしますので、万が一を考えて海獣などの死骸を見付けたならば十分注意を払って、速やかにその場を離れることをオススメ致します。

 

カマイルカの死骸

 

極々稀に、人の気配を察知して、雑木林の中で木に登って頭上に隠れている場合もありますので、目の前にヒグマの姿がないからと安心せずに、十分にご注意下さい。ところで、ボクが好んで釣りに入るポイントでは、画像のような平たい地磯が多いのですが、このようなポイントはシューズなどの消耗と破損を早めてしまう場合もありますので、極力気を使いながら歩くようにしていました。

 

そこで、皆さんにも近年の物価高騰の波で高価になってきたシューズへの気遣いをお伝えしたいと思います。ほんの些細なことですが、シューズの寿命を伸ばすことに繋がれば幸いです。これは本当に些細なことなのですが、ウェーディングシューズを履いたとき、つい何気に爪先をトントンやって足の位置やシューズのズレを直そうとしませんか?実はそれは、何度も硬い地面を蹴りつけているようなものですから、たとえ小さな負荷であっても、連続した負荷はシューズにとってすごくダメージが大きいのです。それ故、シューズの寿命も縮めてしまうことに繋がります。具体的には、爪先のフェールトソウルの剥離やシューズ本体側のひび割れに繋がる場合もあります。

 

また、今度はかかとで地面を強く蹴りつける動作をしたことはないでしょうか?シューズの中の足やソックスを安定させようとする目的で、かかとで地面を擦るように蹴りつける動作です。これは最も損傷を招き入れる動作で、ウェーダーソックスのヒールの部分を擦り切らせて、シューズの他にもウェーダーの寿命を縮めることに繋がります。

 

クイックジップ内側

 

実はそんな問題点をクリアーさせるべく、履きやすさを追求したカタチがクイックジップ6ウェーディングシューズなのです。ジッパーを開けて広域に広げられるインサイドが、先ほど説明した「つま先トントン」や「カカトでガンガン」をする必要なくさせ、ご自身の足がシューズ内部でルーズな状態からジッパーを閉めることで一気にジャストフィットへと持って行ってくれるのです。ですから、シューズとウェーダー共に痛めることが少なくなり、要するに、シューズのはきやすさはそれイコールシューズやウェーダーの寿命に繋がるのです。

 

クイックジップ外側

 

さてさて話を戻しますと、常に呪文を唱えつつも大型に恵まれなかったボクは、シーズン中は半ば意地になって件のフライを巻き揃え、現場へと走っていました。しかし、やはり釣れるのは中型まで。いつも現場に付き合ってくれる友人などは「イヤ~、ホントに掛かればロクジューだねぇ~?」と顔をほころばせています。まったくもってイケズです。たぶん、ボクは彼からの呪いに掛かってしまったのでしょう。相も変わらず、掛けても掛けても中型ばかり・・・・(涙)

 

中型のアメマス

 

ここで、そんなまったくツイてないボクの、とっておきの必殺リトリーブをお伝えいたします。というのも、中型しか掛けられなかったこのリトリーブは、今季限りで“必殺”という冠を捨てて、“ちょっといつもと違うだけのリトリーブ”に降格することにしました。それ故、実践してみたものの「ぜんぜん釣れない!」といった、皆さんからのお叱りの声は受け付けませんのでご了承下さい!(笑)

 

さて、通常のリトリーブに対して、ほんの少しだけ生命感を与えてくれるこのリトリーブですが、イレギュラーな動き方を意図的に演出することで、捕食者としての本能に訴えバイトを誘うのが狙いのリトリーブです。とは言え、実は慣れるとスゴく簡単なんです。ダブルハンドなどの長いロッドでは慣れるまでが難しいのですが、9ft~10ftちょっとの長さのシングルハンドおよびスイッチロッドならば、持ち重りしないので簡単に行える動作です。

 

とりあえず、説明上の呼称として“シェイキング・リトリーブまたはシェイキング”と呼びますが、実際は名前を付けるほどの動作ではありませんし、至極簡単に行える動作です。イメージを明確化するリハーサルとして、これを読んで頂いている今、簡単な基本動作を実際に行ってみて下さい。リラックスして立っている状態から、右手(ロッドを持つ利き手)を前方に突き出し、バイバイと手を振ります。反対側の左手は、バイバイしている右手首の所をタッチしてそのままおへそをタッチします。

 

これを一定の速度で行えるように繰り返して下さい。恐らくは10分と経たずに体得できる動作かと思います。それに慣れましたら、リールをセットしたロッドで、ラインを通さずにティップをシェイクするようにしてリトリーブを行ってみて下さい。ここまでくると、次第にシェイキングするティップの強弱を変えたり、大きな間隔でシェイクしたりする変化も容易に行えると思います。そして、現場でロッドを持って実際にリトリーブしながら練習する方が、割りと簡単に覚えられる動作だと思います。

 

更にはこのシェイキングに慣れてくると、リトリーブスピードを変えても容易く行えるようになります。例えば、スカッドなんかのフライを超スローで引きながら小刻みなシェイキングリトリーブで、甲殻類っぽさを演出することも可能になりますし、スードヘアーやクラフトファー、ゴートヘアー、マラブーなどの柔らかく長いマテリアルに対しても、やや早く長めにリトリーブしながら強くシェイキングすると、水中ではマテリアルの艶かしい揺らめきが期待できると思います。

 

このシェイキングリトリーブですと、必然的に揺れているフライとティップまでの間にスラックが生じていますから、フッキングも良くキマるような気がしています。

 

さてさて、今シーズンの終盤では、足元の磯際に並んだ4~5匹の板マス(超特大のサクラマスの俗称)らに翻弄されたり、サケ稚魚ボイルが始まるタイミングで毎週末の大シケなど、本当に散々なシーズンでした。これに懲りずに、また、シーズンが始まったら日本海へとひた走る日々がやってくるのでしょう。今後は一旦川へと向かって、その後、ブリやシイラなどの接岸が始まれば、そちらにも足を向けてみようと思っています。また、何かありましたらお便りさせて頂きますね!

 

浜辺の夕日

 

それではまた。

 


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