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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「サケ稚魚へボイルする海アメマスの釣り」

2023.03.16

カブちゃんの北の便り「サケ稚魚へボイルする海アメマスの釣り」

大変ご無沙汰しております、北海道のコカブです。ここにきて一気に春めいてきた北海道ですが、それはアノ熱いシーンが連日巻き起こる季節の到来ということでもあります!目の前で繰り広げられる迫力満点のスプラッシュボイルの数々。目の前まで泳ぎ迫る特大アメマスたち。そう…北海道の春の風物詩、サケ稚魚へボイルする海アメマスの釣りが始まる季節がやってきたのです。

 

ですが、このサケ稚魚の釣りは、一昔のようにアチラコチラの河口で成立する釣りではなくなってしまいました。今では限られた河口でのみ成立する釣りになっています。実際、ボク自身も長くこの釣りを楽しめていませんでしたが、昨年久しぶりに堪能することができました。

 

水温2℃の川底から産まれ落ちて直ぐ、石の隙間で静かにその時を待ちながら成長してきたサケの稚魚たち。重たかった赤いお腹の出っ張りもいつしか全て吸収し終え、やがて水面付近へと泳ぎ始める彼らですが、4月ともなれば、気温の上昇が山肌や谷間の雪を次々と融かしていき、徐々に水量を増やし始めた川から吐き出されるように海へと押し出されるのです。

 

早くに産まれ、より長い時間成長を遂げて遊泳力を身に付けた個体などは、ここぞとばかりに波間を自由に泳ぎ回る一方で、一人立ちするにはまだ少しばかり早かった個体などは、波打ち際を頼りなさげに群れ集まり、本能的に潮溜まりや遠浅で海藻が繁茂するその中などへ逃げ込むしかないのです。

 

そんな稚魚たちを見逃すハズもないアメマスですから、群れへ襲い掛かるタイミングを虎視眈々と狙いつつ、常に河口付近を行ったり来たり。そしてそれは、釣り人にとっても絶好のチャンスとなるのです。聞くところによると、このサケ稚魚ボイルの釣りシーズンは、北海道内でも時間を追うごとに南から北へと移行していくようで、春遅くから5月いっぱい楽しめるエリアもあるんだとか?

 

前回でもお伝えしましたが、この釣りでは、ある程度までは魚の大きさに的をしぼって狙えるものの、最終的にフライを咥えるのが大きいのか小さいのかは運次第な部分も多いのです。ですので、より多くのアメマスを釣り上げることで大物との確率を引き寄せなければならない側面も持っていると言えるかもしれません。それ故、全幅の信頼を置け、自分に自信を与えるに足るフライが要求されるのです。

 

さてさて、そんなサケ稚魚フライパターンですが、多くのエキスパートの方々は数え切れないほどの実積を持ち、ご自身でもレコードクラスを釣り上げてこられた必殺のパターンをお持ちのことが多く、そしてその多くは“理に適った”パターンですから、それぞれの方から直接教えて頂くのも一つの近道なのかもしれません。

 

ボクはと言えば、昨年の番長アメマスを釣った時の報告でもお見せしましたこのパターンは、まだまだ発展途上だと思っています。ですので、皆さんが持つ様々なアイデアとバリエーションをどんどん組み込んで頂くことで、もっともっと良いフライになれるのでは?と思っています。どうか、基本構造だけでも憶えて頂いて、より良いマテリアルやスタイルにどしどし変更して頂き、皆さんのオリジナルな必殺パターンへと昇華させて下さい。

 

このフライは本当にシンプルで、少ない手順で巻き上げられるのがキモとなっているんです。マテリアルも、スーパーヘアー・クリアーorホワイト(硬く張りのある方が良い)とエンジェルヘアーかEPスパークル(シルバー又はシルバーホログラム)、モノスレッドと3Dアイ(主に4㎜を使用)だけと、僅かな種類で巻き上げられます。フックに関しては、811Sの#4や8089の#12~#10などのフックがマッチするでしょう。

 

取り急ぎ、タイイングの手順だけを駆け足で説明させて頂きます。また、サイズ感が分からない方もいらっしゃるようでしたので、今回は敢えて細かい数値も入れて解説させて頂きます。

 

  1. モノスレッドのファインで、フックの前半1/3までファンデーションします。1
  2. 次に、スーパーヘアーを12~13本取り出し、四つ折り(長さ約6.5センチ)でカットします。2
  3. 四つ折りでカットしたスーパーヘアーを、後方へ向かって長めに6対4ぐらいで巻き留めます。3
  4. スーパーヘアーがシャンクの真上に乗っていることを確認できたら、しっかりと巻き留めてから折り返します。4
  5. 折り返したら、スーパーヘアーの下側へ2~3回ほどスレッドを巻き足して、スーパーヘアーの角度をやや上方向へ付けて、スレッドをアイの所まで戻します。5
  6. 次に、エンジェルヘアーかEPスパークルの下準備として、四つ折りまたは六つ折りなど、だいたい12センチぐらいの長さになるよう切り揃えます。6
  7. この時、切り口の前後が「パッツン」と直線的にならないようファイバーを少量つまみ引き上げます。7
  8. それを何度か繰り返して画像のようにボサボサにしておきます。9
  9. そのファイバーの束で、シャンク全体を包み込むように巻き留めて、ズレないように3ミリ幅ぐらいでしっかりとスレッドで巻き留めたら、スレッドをアイ側最前列に戻します。10
  10. そうしたら、ファイバー全体を真後ろへ折り返して再びスレッドできつく巻き留め、フィニッシュします。11
  11. 次に、画像のように耳掻き2~3杯分のシリコン系の速硬化性ボンド(柔軟性タイプ)を、人差し指へと塗布し親指と共に指全体へ広げ、ここが最も重要で難しいポイントですが、モッサモサ状態のフライを、ボンドまみれの指で、後方へとしごきます。12
  12. この時、「べちょ!」ではなくて「ススーゥ・・・」って感じの本当に僅かに触れるぐらいの感覚で、上下左右含め2~3回撫でる程度で十分です。※フライ完成後、スルメのようにボディーが左右に曲がってしまうのは、殆んどの場合ボンドの着け過ぎです!13
  13. その後、乾燥しないウチに、もう片方のボンドが付いていない指でしごくようにシルエットを形成していきます。(この⑨~⑩の過程は、数本も巻けば直ぐに慣れると思います)14
  14. そして、まだ乾燥しきっていないウチに、全長5~6センチぐらいの長さでファイバーをカットします。15
  15. 今度は、バイスから外して後ろ側から斜め下に向けて、余分なマテリアルを切り落としてシェイプを形成します。16
  16. エンジェルヘアーやEPスパークルなどは、他の繊維と違い、乾燥に多少の猶予が生まれますから、カットした後方を何度かしごいてバラけたファイバーをまとめます。もうここまでで、ほぼ90%は出来上がりです。
  17. この工程は殆んど好みの問題ですが、背中部分に何かしらお好みの色でカラーリングして、サケ稚魚らしくパーマークも書き込みます。17
  18. 次に、ストリーマーのキモとなる3Dアイを取り付けて、ヘッドを薄くエポキシ(硬化タイプ)で固めたら出来上がりです!18

 

本物はこちら。

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フックのサイズなど、多少の変更によってはもう一回り大きなサイズまで巻けますし、同様の手順でチューブに巻けば、更に大きなサイズまでカバーできると思います。

 

ボクは、フライとは精巧に限りなく寄せる完成度が全てではないと思っていて、例えばプロタイヤーの巻くフライはバカスカ釣れて、アマチュアやビギナーのフライは全く釣れないなんてことはありませんよね?もちろんテールとボディーとウイングなんかの絶対的な比率なんかもあるのでしょうけれど、より自由な発想で、固定観念に囚われないフライなどが巻けたなら、どんなに楽しいでしょう?きっと先人達がそんな発想の中で生んできたフライたちが、今も最前線で活躍しているんだと思います。

 

さてさて、今年の北海道では一部の日本海の海岸線にはおびただしい数のイワシが来遊していたようで、それらを飽食したアメマスらは近年にないほどのハイパーコンディションとのこと!「今季は、針に掛かるのが全て楽々60センチを越える特大ばかりなんてことも珍しくないよ!」と、ダブルハンドを携えた方は仰っていました!もう今では、エキスパートらの間では60センチ台なんてサイズは特大ではなくなってきているとのこと!(驚)

 

そんなアメマスたちが目と鼻の先にまで迫ってくるサケ稚魚のシーズンも、早いところではもう始まっているようです。どうか皆さんも、シングルハンドロッドでも十分釣りになるこの釣りを、是非ともチャレンジしてみて下さい。また、釣り場や駐車場、その他コンビニなどで出会うフライをされている方々(殆どがハイパーエキスパートな方々!)からお話を伺うと、皆さんとても親切にそして丁寧に色々とアドバイスもしてくれます。

 

もし、この釣りでまだ不安が残る方がいらっしゃるならば、思い切って釣り場でその方々の輪の中へ飛び込むのも一つの手かもしれません。何よりも、スマホの中だけでは学べない多くのことが現場には転がっていて、それらを一つ一つ拾いあげて沢山のチャンスをモノにしてきた方々が、今最前線で竿を振っていらっしゃるのです。どうか、これからチャレンジされる方々へ、多くのチャンスに恵まれることを切に願っています。

 

それではまた、何かありましたらお便りさせて頂きます。

 

―KABU―

 


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