釣り人なら一度は夢見る幻の魚･イトウに出会うのに最も近いフィールドといえるのが北海道にある日本最大の人造湖・朱鞠内湖だ。そこでガイド業を営んでいる杉坂隆久さんと会った時にたわいもない話をしているといつのまにか「朱鞠内湖のイトウ用のラインを作ろう！」という流れになった。
これまでに数多くのフライロッドやフライライン、リーダーのデザインの経験がある杉坂隆久さんの事、求めるラインのスペックはその時点でかなり具体的で全体像がはっきりしていたようだった。
そして最初の一歩はSAアトランティックサーモンショートDH8/9(以下アトランショート)の各種を杉坂さんに送るところから始まった。杉坂さんはアトランショートが到着するや否やそれらにズバッとハサミをいれてカットし、自作ループをつけてチェンジャブルにしてテストを開始。ここでこだわったのがそう、ティップがチェンジャブルになっているという事だ。一生に一度の出会いを求めてキャスティングを繰り返すイトウの釣りでは、一日投げ続けられるラインシステムへの信頼と、刻々と変わる状況への対応という、一見相反する要素を両立することが大切だ。
数多くのシューティングヘッドを持ち込み、ヘッドをとっかえひっかえ試すのではなく、信じたラインでじっくりとキャスティングを繰り返し、その上で急に沸き起こるボイルやポイントによる地形の変化にもすばやく対応できる「チェンジャブルティップ」システムこそが杉坂さんの要望だった。そして杉坂さんの求めるラインは2種類。初夏のワカサギに絡んだ釣り用のシャローバージョンと解禁直後や秋のシーズン用のディープバージョンだった。
杉坂さんの自作サンプルのテスト結果を元に図面の時点でそれぞれのボディの長さやウェイト、ティップとのバランスを詳細に練っていった。例えばディープキットは早く沈めたいケースが多くなるためヘッド全体に対するティップの比率をシャローキットより大きくする。例えばタイプ6ティップはタイプ3ティップに比べロールアップがし難くなるためウェイトは変えずに全長を1’短くする、等々。
そしてヘッド全長はベースとなったアトランショートDH8/9の35'より2.5’(76cm)短い32.5’(9.9m)。杉坂さんや自分がイトウで使用する13ftのロッドに最高のバランスとなる長さに落ち着いた。ヘッドがショートになる事でタイトなスペースでのキャストが格段に楽になるとともに、空気抵抗の大きいイトウ用フライをターンさせるラインパワーが増すのだ。
ヘッド全長、ティップとボディの長さ、重さのバランスに目処がついたところで図面に落とし、サイエンティフィックアングラーズ(SA)社に試作を依頼した。
「シャローキット」
ヘッド全長32.5’(9.9m)、520gr(34g)
ボディ：インターミディエイト(20.5’,400gr)
ティップ①：クリアーティップ(12’,120gr)
ティップ②：タイプ3ティップ(12’,120gr)
「ディープキット」
ヘッド全長32.5’(9.9m)、520gr(34g)
ボディ：タイプ2(18.5’,380gr)
ティップ①：タイプ3ティップ(14’,140gr)
ティップ②：タイプ6ティップ(13’,140gr)
*本ティップ接続時ヘッド全長は31.5’になります。
SA作のファーストサンプルが出来ると杉坂さんはそのサンプルを2018年のシーズンを通して使い続け、それはご自分やガイドゲストのイトウとの出会いを数多く演出した。テスト結果はもちろん一発ＯＫ。事前に練りこんだスペックの落とし込みが奏功し、ファーストサンプルは何も変える必要のない最高のバランスで仕上がっていたのだ。
そして時が過ぎ、朱鞠内湖が雪に閉ざされた2018年12月、アトランティックサーモン朱鞠内スペシャルは翌2019年5月の朱鞠内湖解禁に向け全国のイトウファンの皆様の手元に届きます。シャローキット、ディープキットともに限定生産のためお求めはお早めに！！
それでは、以上を踏まえた上でご本人による熱い解説をじっくりとご覧ください。
中峰
【アトランティックサーモン朱鞠内スペシャル推奨ロッド】
・杉坂隆久オリジナル BTS1308910 13’ #8/9/10
・ティムコ･ユーフレックス JTH1308-4 13’ #8 など
【アトランティックサーモン朱鞠内スペシャル推奨シューティングライン】
・SAシューティングラインフローティング.031もしくは.028ST+
