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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「北国の釣り・ニンフ編」

2022.03.15

カブちゃんの北の便り「北国の釣り・ニンフ編」

それでは、先日上げた「北の便り」の続編になります。前回も軽くご紹介しましたが、サイトの効かない広いポイントなどで、ボクが良く使う大型のニンフのタイイングについて少し説明したいと思います。

 

イミテートするべき対象のエサなどは、以前のお便りでもお伝えしましたし、また河川毎でも食性が変わってきたりもしますので、ここでは省かせて頂きたいと思います。さて、説明とは言いましたが、実は改めて言いますと特別変わったことをするものではないですし、それぞれのニンフパターンのタイイング手順もまったく通常と同じなのです。

 

では何が変わってくるのかと言うと、私が大きなニンフを巻く際の最も重要なマテリアルに一つの下地材があります。それが何かと言いますと、使い古されたものやデッドストックとなってしまった物、なんでも結構ですので、とにかく安価なシェニールをご用意して頂きたいのです。例えそれが10年以上も経ったヨレヨレの代物であっても十分です。色は下地材として使うので、ナイロン素材であれポリエステル素材であれ、なんだって結構です。

 

その安価なデッドストックスレスレのシェニールが、一番最初のボディシェイプを形成するための基礎を作り出し、大小・太い細いと様々なシルエットの形成をとても容易にしてくれるのです。これは、とても簡単なひと手間でありますが、実はとても重要な意味合いを持っていて、大型のニンフを巻き上げる際には、とても簡単にかつ自由自在なボディーシルエットの構築ができます。そして、それはフライ作成の時間短縮にも繋がるのです。このように、日の目を見ることもなくデッドストックでしかなかった引き出しに埋もれていたシェニールが、実は隠れたスーパースターだったのです!

 

※画像では、見やすいようにシャートリュースの硬めシェニールに赤のスレッドで巻いていますが、どちらかと言えば、強く指でしごけばポロポロと繊維が抜けてしまうくらい柔らかいタイプのシェニールが下地材に向いているような気がします。

 

chenille

 

それではここで、それぞれの画像へ簡単なキャプションを付けていきたいと思います。

 

ヘアラーバ

hairlaeva1

フック:TMC7999 #4~#2
アンダーボディ:シェニール
ボディ:ピーコック
オーバーボディ:ゾンカースキン(ブラック)
リブ:モノスレッド(ミディアム)

 

もはや、言わずと知れた「大物キラー・パターン」であり、全国各地で実績を伺うことができるスーパーニンフですよね。正直に言いますと、ボクも近年釣り上げたグッドサイズのニジマスの多くは、このニンフと次に紹介するタイプで釣っていますし、なによりもこのヘアラーバ・ニンフは、北海道のニジマスにはとても有効な“釣れる要素”が強く含まれているように思います。

 

そしてもう一つのバリエーションとは、ヘアラーバニンフにラバーレッグを付け足し、よりニジマスやブラウンに好まれるようにしたものです。下地のシェニールは、大まかにフライに応じたシルエットになるように巻き付けます。その後、スレッドでキッチリとファンデーションすることで、マテリアルのズレを防いだり、シルエットの崩れを防いでくれます。ヘアラーバはほぼ全体にたまご型になるよう1~2巻きぐらい。

 

ヘアラーバ・ラバーレッグタイプ

hairlarva

フック:TMC7999 #4~#2
アンダーボディ:シェニール
ボディ:ヘアーズマスクダブ(オリーブ)
オーバーボディ:ゾンカースキン(オリーブ)
ラバーレッグ:グリズリー・マイクロレッグ(オリーブ)
リブ:モノスレッド(ミディアム)

 

もしかしたら、使うことをちょっと躊躇われる方もいるかもしれませんが、なかなかの働きをしてくれます。特に、少し水に色が付いているような流れでは抜群の効果を発揮するような気がします。また、先に挙げた通常のヘアラーバへ白っぽいラバーラッグを付けても、よく釣れてくれます。

 

MSCニンフ

msc

フック:TMC7999 #4~#2
アンダーボディ:シェニール
テイル:ゾンカースキンのファー(オリーブ)
ボディ:ゾンカースキンのファー(オリーブ)
リブ:シルバーワイヤー(ミディアム)

 

こちらも、たくさんの方々が使われているニンフパターンの筆頭ではないでしょうか?管理釣り場から一般渓流まで、季節を問わずにオールマイティーに使用できる、釣り人にとって大変都合の良いフライパターンだと思います。ちなみに、一見してゾンカースキンをらせん状に巻き付けていった“バニーリーチ・パターン”に見えるかもしれませんが、それだとフライの重量が増してしまい、投げ難くなるので、ラビットスキンのファーだけで巻き上げています。それ故、バニーリーチよりもMSCに近いのでは?とボクが勝手に思っています(笑)

 

ボディーを巻く手順は、ゾンカースキンからファーだけを切り取り、ループ状にしたスレッドへマルチグルーを極少量塗布し、ファーを挟めたら指で後方へしごきながらツイストダビングし、ボディーを形成していきます。この時、ファーの長さがフライのボディーのボリュームを決めますので、ご注意下さい。また、ゾンカースキンを予め水で濡らしてから作業すると、ループダビング等がスムーズに行えます。下地のシェニールは、ヘアラーバと同じぐらい。

 

ラバーレッグニンフ

rubberlegnymph

フック:TMC7999 #4~#2
アンダーボディ:シェニール
テイル:ラバーレッグ(各色)
ボディ:シェニール(各色)
レッグ:ラバーレッグ(各色)

 

ド定番のニンフパターン故に、説明は省略させて頂きます。下地のシェニールは、全体に1巻きさせたらソラックス部分だけ短めにプラス1巻き。

 

ヘルグラマイト

hellgra

フック:TMC200R #4
アンダーボディ:使い古したフライライン(シンキングライン#8)
ボディ:シェニール(各色)
レッグ:マイクロシェニール(各色)

 

このニンフは、もう20年以上も前から使っている、ちょっとした“遊び心”を前面に出したニンフですが、ただのファンシーフライというワケではなくて、それなりの実績も持ち合わせている大型ニンフです。過去に公的機関が行ったブラウントラウトの食性調査を見学させて頂いた際に、大型のブラウントラウトが、たくさんのヘビトンボを捕食していた事実を目にしたことがあります。(単なる偶然かもしれませんが・・・)そんなこんなでよく使うフライではありますが魚に好かれるのも早いですが、嫌われるのも恐ろしく早いニンフです(笑)

 

今回は、アンダーボディーの成形応用編ということで、掲載してみました。フライを扁平形に仕上げたい場合などには、このようにフックシャンクと平行に、両サイドにフライラインを巻き留めると理想的な“平べったい”フライになります。また、フライライン(使用しなくなった物の再利用品)は、スレッドによる締め付けでスレッドが食い込むことからレッドコア(糸鉛)などと違い、しっかりと巻き留められます。ボクがクレイフィッシュ・フライなどを巻く場合は、シャンクと平行に長さの異なるフライラインを2本ずつ合計4本ほど巻き留めることもあります。※この時は、UVシーラーや接着剤などで固定させることもあります。

 

flyline

 

さてさて、ボクがシーズン中に多用する大型ニンフの一部を紹介させて頂きましたが、これらのニンフを巻く場合に殆どのフックを太軸にするワケは、ゴツゴツとした岩やテトラポット等が点在するポイントで魚を掛ける場合、多少強引なやり取りを前提としなければなりません。それ故1~2x等の太いリーダーシステムを組んでいるのですが、そこでのやり取りでは水流の抵抗と合わせジワジワと荷重が増してくる場合、最後の最後にはフックのベンドカーブ(魚をホールドしている部分)に最大値の負荷が掛かってきます。

 

また、万が一にも本流育ちの大きな魚が掛かった場合など、その殆どがゴリゴリのファイターでしょうから細軸のフックですと伸びてしまう恐れがあるのです。ですので、状況が許す限りは太いリーダー・ティペットを使い、最大限の太軸フックを使用するようにしているのです。

 

また、下巻きの下地の応用で、ゾンカーなどのマイラーチューブを巻き留める場合、実釣中にマイラーチューブが伸びたり寸詰まりになったりするのを防ぐのに、シャンクの下側に平行にシェニールを1本だけ巻き留めておくと、マイラーチューブの内部でストッパーの役割を果たしてくれるのでズレることがなくなるでしょう。

 

今回のお便り「ニンフ編」の最後になりますが、これまで紹介した大型ニンフはビッグドライ同様に、ハイプレッシャー下では見切られることも多く、また通常のサイズのニンフよりも投げづらく沈みづらいというデメリットもありますし、決して万能とは言えないフライですが、スタンダードなニンフには一切見向きもしなかったヤツラが突然フライを咥えたり、これまで攻めあぐねていたポイントから多くの反応を得られたり、そして何よりも大きなフライが持ち合わせる“魔力”とも言える理屈抜きの効果が得られるかもしれません。

 

どうか気になった方は、フライボックスの片隅にでも1つ2つご用意されてみてはいかがでしょうか?人にも魚にも少しインパクトの大きいフライですが、今まであったように、これからもたくさんの楽しいシーンを与えてくれると信じています。

 

それでは、ようやく雪解けが始まりつつある北海道ですが、これから始まるシーズンに期待を込めてたくさんのフライを巻き、何か面白い出来事がありましたら皆様へまたお便りしたいと思います。それまでは、どうかお元気でお過ごしください。では~。

 


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