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小甲 芳信

Fly Fishingプロスタッフ小甲 芳信 カブちゃんの北の便り「北国の釣り・防寒編」

2022.03.02

カブちゃんの北の便り「北国の釣り・防寒編」

すっかりとご無沙汰していたこの『カブちゃんの北の便り』ですが、昨年はなかなか自分の中で納得のいくような釣果には恵まれず、ダラダラと時間だけが過ぎ去ってしまった一年だったように思います。

 

そんなシーズンも過ぎ去り、心機一転、再びチャレンジに向かって走り出しました。ですが、ここは「北の海へ向かう道」と書いて北海道と読む、恐ろしく寒い土地。ボクの住む街がいくら温暖な南側の端っことはいえ、今の季節の気温は常にマイナスとプラスを行ったり来たり。良く晴れた日の早朝の気温が、マイナス10℃を下回る事さえザラにあるのです。そんな土地での釣りをするのですから、やはりウェアの類はしっかりした物をセレクトしなければなりません。中途半端な物を選べば釣りそのものが成立しなくなるほど、厳しい状況に陥ってしまいます。

 

雪面でも軽やかな足取り♪

 

例えば、お目当てのポイントへと向かうため深く雪の積もった雪原を数百メートルも歩けば、発汗した身体からその汗を吸い取り、濡れたアンダーウェアが今度は外気温に冷やされて瞬く間に体温を奪い去ります。また、魚が動き出す夜明け前、寒さに耐え身動きせず静かにその時を待っていると、首回りやウエスト、袖口などからどんどん体温が奪われ、また、ウェーディングしている場合は下半身からの冷えが更に体温を奪い、ヘタをすると低体温症の一歩手前ぐらいまで来てしまうこともあります。このように、蒸れによるその後の冷えや、冷気に対応しきれない装備で集中力を削がれるようでは釣りどころではありません。とかくこの季節は“静”と“動”の状況への対応に最も悩まされるのです。

 

夕暮れ日本海

 

そして、このような過酷ともいえる様々なシチュエーションでは、ウェアに【身体を保温する】といったことと同時に、身体から発する汗、蒸れといった水分をスムーズに放出するといった複数の役割が求められます。ですが、外遊びではどんなに温かくっても、そのウェアに機能性(動きやすさ)が伴っていなければ良い品物とはいえません。例えばアウターパンツなどで、太もも周りの生地にゆとりがあり過ぎるとダボついてしまい、ウェーダーの中で脚にまとわりつく状態が起こります。それとは逆に、ゆとりのないぴっちりスーツのようなパンツを穿いているとどうなるのか?これは、女性のストッキングのように収縮性能が高いということは、生地が伸びるので繊維同士の隙間がスカスカと広がり、自ずと保温性が悪くなります。そして何よりも脚が締め付けられる状態になってしまいます。

 

この締め付けは、スポーツウェアのアンダーパンツ(サポートタイツ)のように、瞬間的な筋力の助長にはとても良いのですが、逆にその締め付けがスムーズな血流の妨げになるようであれば、一日中釣りをするには不向きとなってきます。また、生地の締め付けが手足を動かす際に多くのエネルギーを必要としてしまい、より深い筋肉疲労を呼び起こすことなどは、寒冷地育ちならではの経験から「重ね着は着膨れを呼び、動くと倍は疲れる」ということを子供の頃から経験しているのです。それ故、ウェアの選択眼は自ずとシビアなってくるのです。

 

さて、そんな寒さの中でも釣欲だけは萎むことなく、吹雪の合間をみては虎視眈々と釣りへ向かうタイミングを計っていたボクなのですが、未だに満足のいく釣行には程遠い日々を過ごしています。そして、やはりこの季節は待ちに待った海アメマスの季節が到来を告げ、下流域では海から来たとんでもないサイズのニジマスなんかも釣れていますので、吹雪による悪天候などで釣りへ出掛けられないと酷く憂鬱な気持ちになってしまうのです。そこで、少しだけ時間を戻して、晩秋から初冬の小雪がチラつく頃に釣れた時のことを手短にお伝えしたいと思います。

 

そこは幾つかの流芯が集まり、流速の早い流れ込みがテットラポット沿いに下った後、滔々と広がるプールへと繋がっていました。このポイントでは、一昨年のこの時期に鼻先が尖ってシャクレている、それはそれは立派な体高でレッドバンドが異常に赤くて幅広だったオスのニジマス(推定65cm以上!!)を掛けたのですが、すんなりと足元まで寄ってきたと思った刹那、「バビュ~ン!!」と50メートルぐらい走られたところでフックが外れてしまい、涙を飲んだ因縁のポイントでした。

 

コンデション良好ニジマス2

 

ですが、この日のアタックではボクの期待とは裏腹に全く釣れてくれない!小さな魚からも何も反応を得られないまま途方に暮れ、しょうがなく近くのポイントをランガンしているうちに、いくつかの深瀬の中で大振りなニンフを流したところ、たまたまドスンと1匹だけ当たったのでした。(スンマセン、ソイツには撮影前に逃げられちゃったので、同じようなサイズの魚を掲載させて頂きました)

 

さて、このようにサイトフィッシングも効かない川幅いっぱいに流れる瀬の中や本流筋の大きなプールなどでは、圧倒的にウェットフライの出番が多くなってきます。ボクとしても、様々なシンクレートのラインをセレクトしながらスイングの釣りを組み立てていくのは、とても奥が深くて面白いのですが、何せ普段から使っているタックルはシングル5番の9フィート。正直、そのようなポイントでスイングの釣りをするにはやや不向き。かといって、わざわざ車まで道具を取りに向かうのも億劫です。

 

そこで、ボクがいつも行っているのが、大きなニンフを使ったルースニング。『カブちゃんの北の便り ―秋ニジ攻略特別編―』でお伝えしました、“落アユのルースニング”と同じ要領と思って頂けると分かりやすいと思います。言い換えると、決して特別変わったテクニックなどを用いるワケではなく、一般的に行われている通常のルースニングで、フライだけが極端に大きくなったぐらいのこと。渓流では普段TMC3761やTMC200Rなどのスタンダードなニンフフックで#12や#14といったサイズのニンフが使われる機会が多いと思いますが、そこをTMC7999やTMC5262といったサーモンフックやストリーマーフックの#6や#4へ巻くことで、存在感を爆アゲ・マシマシにして遠くの魚までアピールするという目論見なのです。

 

その他にも、昆虫類から小型魚類などへ食性を移しつつあるような大型番長などへのアピールというのも大前提なのであります。実は、前述した取り逃がしたロクゴー超えのシャクレ番長も、このような大振りなフックに巻いた、島崎憲司郎さん考案の大物キラーパターンであるヘアラーバニンフで掛けたのです。

 

さてさて、フライの説明はこの次にして、とかくランガンスタイルではどうしても歩行距離も長くなってきますよね?厚着で動きにくい季節であるうえに、車から水辺までの行き来なども含めると相当な距離になってきます。そしてその運動量は、ウェーダー内部での結露に直結し、ウェーディングしたとたん一気に冷えが襲ってくるようになります。例えどんなに優れたゴアテックス素材のウェーダーを使用していても、“蒸れ=結露”は避けては通れない宿命のようなものではないでしょうか?

 

しかし、これまでも多くのシーンで悩まされてきた冬場の結露でしたが、今期のボクは快適なアイテムを購入したおかげで、心置きなく釣りを楽しんでいました。それが今発売されている【パワーフィルハイブリットパンツ】です。「もうコレ、最高です♪(笑)」

 

とにかく快適なパワーフィル!

 

最初に感じたのは、一般的なダウン素材のアウターパンツであれば特有のモコモコ感があって動きづらさがありますが、このパンツはそれが無くて超楽チン。(※パワーフィルハイブリットパンツはダウン素材のパンツではありません)釣り場で屈みやすいのと歩きやすいというのが第一印象で、そこでさらに気が付いたのが“動きやすさとはイコール軽さを感じる”ということ。ここがスゴイ武器で、真ん中のストレッチジャージ素材が脚に負荷を掛けない運動性能を両立させているようで、釣りをする側としては大変ありがたい機能。

 

正直、冬場に散歩や仕事など街中で外側に着るには、ストレッチ部分から冷気が入ってくるので不向きなのかもしれませんが、ウェーダーの中で穿くにはもはや無敵なアイテム!もちろん前述していた蒸れによる結露も、疎水性素材を使用していることで気になることもなくなりました。これまでの海アメマスのシーンでは、早朝などはマイナス3℃や5℃となっていても、日中がプラス気温へと転じてしまうので、お昼を前にウェーダーの中が大変なことになっていましたが、今期こそは快適に過ごせそうです。※海アメマスでのウェーディングシューズに関しては、『カブちゃんの北の便りー鮭チーボイルを求めてー』でお伝えしておりますので、気になった方はご一読下さい。

 

海アメ釣り場の夕暮れ

 

今回は、釣りのご報告とは少し離れてしまいましたが、しかしウェア選びは我々釣り人にとってはとっても重要なこと。どうか、コレをご覧になっている皆様も、今一度ご自身のウェアのことをご再考してみてはいかがでしょうか?さて、この次はシャクレ番長を掛けた大型ニンフのタイイングを織り交ぜて、お話させて頂きたいと思います。ではでは~。

 

 


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