フライキャスティング自己診断。毛ばり釣り入門

フライフィッシング入門

ステップアップ

STEP 10「フライキャスティングの自己診断」

フライキャスティングの症状と治療法

(症状1) ループに直進性がなく、幅が広い
ロッドティップが弧を描いてしまう

図のようにロッドティップが弧を描いてしまうとループ幅は極端に広くなってしまいます。ロッドティップによって直線的に引っ張られてきたラインは、ロッドが停止されることでループが発生し、直進していきますが、ロッドティップが弧を描いてしまうと、ラインにかかる力の方向が分散してしまい、直進するのに十分な力を伝えられないのです。ロッドティップが弧を描いてしまう原因はいくつかありますが、典型的な例は手首の使い過ぎです。バックキャストの際、ロッドを担ぐようにして手首が開いてしまう人は、ほとんど例外なくワイドループができてしまうはずです。

【治療法】
手首を使いすぎる癖を直すには、ロッドのバットエンド(リールシートの最後端)をシャツの袖の中に入れるか、女性用のヘアゴムで手首に固定する方法があります。どちらもナチュラルな位置より手首を開くことができませんから、矯正法としては有効です。また、手首を固定しているのにロッドティップが弧を描いてしまうこともあります。それは、肘の位置が固定されていて、キャスティングが肘を回転軸とした円弧状の運動になっている場合です。ロッドティップを直線的に動かすには、手首の軌跡は前後に直線に近く動き、肘もそれにつれて動きます。三角形のイメージで最も大切なのは、底辺をたどるロッドティップの直線運動ですが、肘を固定してしまうとティップは弧を描きやすくなります。
(症状2) ループがねじれている
ループのねじれ

ロッドが動く軌跡は、同一平面上になければなりません。上から見ても横から見ても、まっすぐに振らなければならないのです。しかし、実際にはバックキャストの際、ロッドティップが自分の後ろに回り込んでしまうケースが頻繁に見られます。ロッドティップが後ろに回り込んでしまうと、フォワードキャストの際ロッドティップは頭上で半円を描いてしまうことになります。その結果、ループがねじれてしまうのです。

【治療法】
鏡を使った練習方法 ロッドティップが後ろに回り込まないようにするには、鏡を見てのイメージトレーニングが有効です。鏡の正面に立ち、ロッドのバットだけを使ってフォルスキャストの動作をしてみましょう。先端が頭の後ろに回り込んでいませんか? 「ロッドを直線的に振る」という動作は、実際にはかなり不自然に、外側に振っているように感じられるはずです。鏡をよく見て、ロッドの先端が後ろに回り込まないように、体に「直線的に振る」感覚を覚えさせましょう。 もう一つ、頭上でロッドティップが半円を描いてしまわないようにする治療法としてカーテンレールや壁などを使う方法があります。それらをキャスティング面に見立て、カーテンレールならロッドで、壁なら指でなぞる練習をすれば、体に直線運動の感覚を覚えさせることができます。
(症状3) フォルスキャストでパチンと音がする
ラインがパチンと音が鳴る

特にバックキャストで多くみられる現象ですが、ラインがパチン!と大きな音をたててしまうことがあります。ラインが伸びきるまでの「待ち」が足りないことが原因です。初心者の場合、急いで前方に投げようとするあまり、バックキャストからせっかちにフォワードキャストに移ってしまうケースがよく見受けられます。

【治療法】
前後のキャスティング感覚 バックキャストは体の後ろにラインが伸びるので、タイミングを確認しづらいのですが、ラインが伸びきるまで十分に待つようにしましょう。ラインの長さが一定なら、バックキャストとフォワードキャストは同じリズム、パワーで行われなくてはならないのです。メトロノームのようにバックとフォワードのリズムが同じになるように意識しながらキャストしてみるのがよいでしょう。ラインを飛ばすには大きな力は必要ありません。リズムを取りながら、ラインの重さがロッドに乗る感覚を掴むように努力してください。
(症状4) テイリングループが発生する
テイリングループの発生

ラインがキャスティングの途中で交差してしまうことを「テイリングループ」と呼びます。リーダーが絡まる、プレゼンテーションがうまくいかない、などのトラブルの原因となりますから、絶対に避けたい現象です。テイリングループの基本的な原因はただ一つ、キャスティング中にロッドの先端がくぼんだ軌跡を描いてしまったことです。キャスティング中どこかでショックを加えると、ロッドの先端は直線をたどらず、くぼんだ軌跡を描いてしまいます。ラインを飛ばそうという意識が強すぎて、ロッドを強烈に振ったり、止めてしまったり、というケースにテイリングはよく起こります。

【治療法】

テイリングループが発生したら、はじめからゆっくりと動作を確認してみることです。力を入れ過ぎるのは逆効果であることを意識してください。また、ロッドを停止する瞬間に強く手首をかえしてしまっても、テイリングは起こりやすくなります。途中でロッドティップにショックを与えないように、なめらかに力を加えていくことを意識する必要があるのです。同時に、ロッドの先端の軌跡をイメージしてキャスティングするようにしましょう。凹まず、膨らんでもいない一直線の軌跡を意識します。フライキャスティングの上手い人を見ていると、ほとんど力など入れていないように見えるものですが、それは要所だけに必要最小限の力を入れるテクニックが身についているからなのです。

①ぎこちない加速をしているケース
ロッドハンドとラインハンドのどちらか、あるいは両方がぎこちない急加速をしているとテイリングを起こします。ゆっくり力を抜いて一つ一つの動きを確認し、それからスピードを加えていく練習をします。適切な加速感とは、バックキャストでは、ロッドを立てるにしたがってティップが曲がりはじめているのを目で確認してから力をいれるような感覚でちょうど良いでしょう。フォワードキャストでは、ちょうど顔の前あたりから力をグッと加える感じです。バックキャスト、フォワードキャストとも、ロッドを曲げ、ラインをはじき出す感触をつかむよう心掛けてください。そうすることで、ロッドのぎこちない急加速は避けられるはずです。
②ロッドのストローク自体に問題があるケース
ロッドのストローク フライラインは常にロッドティップによって直線的な軌跡で引かれなくてはなりません。しかしその意識が強すぎるあまり、手首を固定して肘と手首が平行に移動してしまう人も見受けられます。ところが、実際はラインの負荷を受けたロッドは曲がりますので、ティップはイラストのような軌跡を描いてしまい、テーリングは免れません。腕、肘、手首の動きをもう一度おさらいし、自分のイメージしているロッドティップの軌跡と、実際の軌跡とのズレを修正しておきましょう。自分が作っているループの形を入念にチェックすることで、実際の軌跡は判断できます。
(症状5) オープンループが発生する
オープンループ

これはテイリングと裏返しの現象で、ロッドティップが凸形状に動いているが原因ですが、典型的な原因は二つ考えられます。

【治療法】
①下方向にロッドを振りおろしすぎている
ロッドの振り幅 オープンループを生む、最も多い原因がこれです。ロッドは扇状に動かしてはいけません。矯正法はパワーゾーンを意識することです。ロッドの先端から30~50センチくらいの所に意識を集中し、その部分でラインを支え、直線的に押し出すイメージを持ってください。
②バックキャストで手首が開いてしまっている
バックキャストで手首を開きすぎるのは好ましくありません。決してロッドを肩にかついではいけません。バックキャストのティップが下がってしまうと、フォワードで上空高くを狙わない限り、ティップの直線的な軌跡を作り出すことは不可能です。バックキャストを終えた段階でストップし、自分の手首の開きを確認するのが良いでしょう。
(症状6) ラインが低い位置を飛ぶ
ラインが低い位置を飛ぶ

フライが後ろの地面に接触したり、自分の体に当たったりするこの現象、ワイドループと同一の原因、すなわち凸型のティップ軌跡に起因することも多いのですが、ラインが落下し始めてからストロークをはじめている可能性もあります。

【治療法】
フォワードキャスト、バックキャストいずれの場合も、ラインはターンオーバーした後は推進力を失いますから、急に落下しはじめます。当然、待ちのタイミングが長すぎると、ラインは理想よりも低い位置を飛ぶことになります。フライがターンオーバーする直前に、次のストロークをはじめるようにしましょう。