フライリールの選び方。毛ばり釣り入門

フライフィッシング入門

ステップアップ

STEP 9「フライリールの選び方」

フライリールの構造を理解する

フライリールの構造

まずはフライリールの基本的な構造を見ていきましょう。

ハウジング
フライリールはこのハウジング本体と回転するスプール部分に分かれています。
スプール
ラインを巻いて収納し、回転する部分。ほとんどのリールは簡単に取り外すことができます。別売りのスプールを用意すれば、スプールを交換するだけでラインを変えることができます。
リールフット
ロッドに取り付ける部分。ロッドのリールシートに差し込んで固定します。
ハンドル
文字通りリールを巻くときに握るハンドルです。多くのフライリールはユーザー自身で右手巻き、左手巻きそれぞれに交換することが可能です。
ドラグ
スプールの回転を制御するブレーキ機構です。ブレーキは一方向(逆回転時)だけに掛かるようになっています。魚が掛かってラインに一定の力が掛かった時にスプールが回ってラインを切れないようにしたり、逆に一定以下の力ではラインがリールから出て行かないように止めることができます。
ドラグノブ
ドラグの強弱を調整するための回転ノブ。右に回すと強くなり、左に回すと弱くなります。
リム
リールの縁(ふち)部分を指します。フライリールの場合はリールのドラグだけではなく、時には「パーミング」という動作で手でリムを押さえてリールの回転を調整することがあります。
カウンターバランス
スプールにはハンドルが一か所だけに付いているため、回転中のバランスを取るため、反対側にも重りをつけてスムースに回転するようにしています。

フライリールの性能を理解する

素材・製法
フライリールの素材

現代のほとんどのフライリールはアルミニウムで作られています。アルミニウムにも様々なグレードがあり、比較的安価な型に流し込んで作られる鋳造品から、航空機にも使われる高強度のアルミニウム合金から一つ一つ削り出されるマシンカットのフライリールまで様々です。精度や耐久性、重量など、リールとしての性能に大きく影響します。

重量
フライロッドのアクション

素材や製法による重量への影響の他に、デザインや構造でも軽量化が図られています。フライリールには一般的に巻きこんだラインを乾かすためと軽量化のために多くの穴が開けられています。最近では軽量化を図るためにさらに大胆に肉抜きがなされたリールが出てきています。あくまでもロッドとのバランスですので、ロッドが重ければ、あえて少し重めのリールを好まれる方もいます。キャスティングしやすければ好みで構いません。

ドラグ性能
フライリールのドラグ

ドラグ性能の良し悪しは「滑り出し」が重要なポイントとなります。ドラグは一定の負荷が掛かった時に糸が切れる前に滑り出ていくように設定しますが、これがスムースに機能せず、少し踏ん張った後に急にラインが出始めるものがあります。ティペットなどのナイロンの糸は急な力にとても弱いので、プチッと簡単に切れてしまいます。

また大型魚などの場合はしっかりと止める性能も必要です。これが出来ないと不必要にラインが引き出されてしまい、無駄に魚とのファイティング時間を延ばしてしまいます。

クリック&ポウル
伝統的な方式で、歯車に爪が引っ掛かって逆回転する時にテンションを掛けていきます。ドラグと呼べるほどのブレーキ性能は無いですが、シンプルな構造はフライリールの様式美の一つです。
ディスクドラグ
ワンウェイクラッチとディスクプレートによって制動する方式で、最新のディスクドラグリールはほぼこの方式を採用しています。ディスクプレートの新素材や完全に密封されたメンテナンスフリーのシールドドラグも登場しており、日々進化しています。
内径サイズ
フライリールの内径

昔はラインを巻いていくスプールの内径は一様に細く、フライラインに巻き癖がクルクルと付いてしまいラインが絡むトラブルの元凶でした。そこで近年「ラージアーバー」と呼ばれるスプールの内径を大幅に太くしたタイプのリールが登場しました。

ラージアーバーのメリットは内径が太いので巻き癖が付きづらいことは言うまでもなく、リールに残ったラインの量に関わらず、安定したドラグ性能を引き出すことができる点にあります。また一回転あたりの巻き取り量が多いので、スピードの速い対象魚にも対応しやすくなります。 近年フライリールはこのラージアーバータイプが全盛となっています。

またラージアーバーより少し内径を落として容量とのバランスをとったミッドアーバーと呼ばれるようなフライリールもあります。

外径サイズ
フライリールの外径

ラージアーバー化に伴って、リールの外径もやや大型化する傾向にありますが、ロッドの番手や長さとのバランスは必要です。フライリールにおいては大は小を兼ねず、例えば3番のフライロッドに5~6番用のラージアーバーのフライリールを取り付けると、バランスを崩してしまいます。基本的にはロッドの番手とフライリールの指定番手が合うようにします。

ラインキャパシティ
フライリールのラインキャパシティ

フライリールには収納できるラインのキャパシティが記載してあります。たいていはフライラインの番手とバッキングラインの量が目安として指定されています。例えばリールが5~6番のように2番手の指定がされている場合に、「WF5F+100m」とあれば、WF6Fを巻く場合にはフライラインの容積が増えるのでバッキングを少し減らす必要があります。またDT(ダブルテーパー)ラインの場合はWF(ウェイトフォワード)ラインよりも大幅に容量が増えますので注意が必要です。

バッキングラインにも太さがありますので、細いものに変える場合は巻ける長さは増えることになります。またシンキングラインはフローティングラインより全体的に細くなるので、バッキングラインの量を増やすことになります。

ラインはスプールの縁のギリギリまで目いっぱい巻いてしまうとトラブルの原因になるので、少し余裕を残してほどほどの巻き量にします。セッティングする時にバッキングラインをどのくらい巻けばよいのかは、慣れれば感覚でつかめるようになってきます。

クリック音
フライリールの音色

クリック&ポウル式のフライリールはラインが引き出されて逆転する時に音が鳴ります。この音色がフライリールのかつての様式美の一つでした。ディスクドラグ全盛の今では無音のものが増えてきました。逆転音が鳴ると大きな魚が掛かったことを周りの釣り人にアピールすることができます(笑)が、音の有無は好みで良いでしょう。

フライリールの選び方

フライリールの構造

フライリールというものは、それ単独で選択するものではありません。使用するフライラインやフライロッドとのバランスで決まってきます。また釣る魚の引きが強い場合、ドラグ性能の差が明暗を分ける場合があります。

①使用するフライロッド、フライラインを決める
前項の「フライロッドの選び方」や「フライラインの選び方」のページを参考に順を追って決めていきます。
②使用するフライラインを収納できるフライリールを探す
前項で説明の通り、フライリールにはたいていサイズ表記がなされていますので、①で決めたフライラインが収納できるものを探します。「3/4」などのようにフライラインの番手(この場合は3番か4番用)が商品名になっているものもあれば、単なる番号や名前になっているものもあります。ラージアーバーデザインのリールの中には極端にラインキャパシティが少ないものもありますので、フライラインの番手だけではなく、トータルの容量を確認しましょう。特に低番手(1~4番ぐらいまで)のリールは容量がシビアで、例えばWF3FがDT3Fのフライラインになっただけでも収まりきらなくなる場合もありますので気を付けましょう。
③性能を比較する
フライリールはたいていシリーズによってその特徴が決まっています。とにかく軽量化を第一にしたもの、最新のディスクドラグを搭載したもの、古き良き伝統的なデザインを大事にしたもの、海などの大型の対象魚を主に想定したもの、渓流を主に想定したもの、などなど、様々に用意されています。対象魚、また自分の釣りのスタイルによって重視するポイントが決まってくるかと思います。

フライリールは様々なサイズのものを用意したり、また同じリールのスプールを用意して様々なフライラインを巻いておくなど、ご自身の釣りの幅が広がっていくにつれて必要なものが分かってくるものです。適切な道具を選ぶことも上達への道です。ぜひ楽しみながら選んでみてください。

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